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ところで、鳩山前総理は「抑止力」について勉強したら海兵隊は沖縄にいないと日本にとっての抑止力にならないと悟ったと述べている。 これは外務省OBの岡本行夫氏らが積極的に官邸などに出向き鳩山総理に「抑止力」をレクチャーし、鳩山氏を説得というより洗脳した結果を意味している。 鳩山前総理は、5月28日の辞任会見でも、東アジアの安定にとって沖縄の海兵隊の重要性について言及し、菅新総理も会見や就任直後の会見で、鳩山前総理に類する沖縄海兵隊の「抑止力」に言及している。 その上で、たとえば、菅直人首相は15日、就任後初めて沖縄県の仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)知事と首相官邸で会談したが、席上、菅総理は米軍普天間飛行場(同県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題について「日米両政府の共同声明を踏襲する」と述べ、同県名護市辺野古崎地区への移設を柱とした日米合意を履行する考えを表明している。 一方、菅首相は6月15日の参院本会議で「東アジアの安全保障環境には、最近の朝鮮半島情勢に見られる通り、不安定性・不確実性が強く残っている。海兵隊を含む在日米軍の抑止力は安全保障上極めて重要だ」と答弁している。 これに関連し、民主党代表当時の平成15年11月に「米海兵隊の基地と兵員は必ずしも沖縄にいなくても極東の安全は維持できる」と発言したことについては「過去の発言を否定するつもりはないが、首相の職に就いた中での認識を申し上げた」と釈明している。 一体、どっちが菅総理のミッションであり戦略、政策であるのか、まったく不明である。 だが、鳩山氏や菅氏が現在考えている「抑止論」は、そもそも旧態依然の「抑止力」論であり、間違っていないか。すでに別の論考で書いたものだが、「抑止力」などについて言及しておく。 たとえば、元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、軍事評論家や防衛省の役人らがよく使う、俗耳に入りやすい<抑止力>に関する論法、すなわち「朝鮮半島や台湾海峡で危機が起こったときに すばやく対応するために、一番機動力のある海兵隊は沖縄にいる必要がある」という考え方に異議を申し立てている。 すなわち「朝鮮半島や台湾海峡で危機が起こったときに すばやく対応するために、一番機動力のある海兵隊は沖縄にいる必要があるというのは、有事の際にすばやく対応するという次元の議論であって、抑止力の話ではない。海兵隊は有事の際に真っ先に戦闘地域に派遣される急襲部隊であり、海兵隊が抑止力とは何ら関係がないというのは 軍事の常識である」と述べている。 ◆出典:元外務省国際情報局長孫崎享氏インタビュー VideoNews また、朝鮮半島情勢への対応についても、「もともとその役割は在韓米軍が担うべきもので、沖縄に海兵隊を配置する理由になどならない」 とも述べている。まさにその通りであろう。 次に、田端光永氏は「抑止力」について次のように述べている。 少々長いが引用する。 抑止力というのは、「ある国が他国に対して軍事行動を起こした場合、必ず相手から、もしくは相手の同盟国から、自国より強い力で反撃される、そして結果は自国が負ける、あるいは自国も手ひどくやられることが確実に予見される、という状態を作っておくことを意味する。 その予見される反撃が早いか遅いかは抑止力と関係ない。早かろうが遅かろうが、いずれは自国が負ける、やられるということがはっきりしていれば、その国は軍事行動を起こすことはないというのが抑止力だ。 海兵隊が沖縄にいなければならない、という議論は地理的条件、有事の現場への距離を問題にしているだけだ。 つまるところ対応が早いか遅いかであって、それは抑止力とは関係ない。 それに在日米軍は海兵隊だけでなく、沖縄・嘉手納には戦略空軍の基地があり、横須賀、佐世保には第七艦隊がいる。 これらすべてが抑止力を構成しているのであって、そのうちの海兵隊がグアムに移ったからといって、日本が攻撃されても米は反撃できなくなるなどということはありえない。 軍の抑止力は、<核兵器に対する抑止力>と<通常兵器に対する抑止力>に分かれる。だが、中国の軍事的な台頭によって、もはや米国が中国と一戦を構える意思を失っている。在日米軍は核に対する抑止力も通常兵器に対する抑止力も、いずれも提供できていない。 仮に尖閣諸島などをめぐり日中間で紛争が生じてもアメリカ軍は動かないだろう。ましてや、米本土を核攻撃する能力を持つ相手に対して、他国をまもる目的でアメリカが核を使用することなどあり得ない。だから在日米軍の抑止効果は、もはや存在しないも同然である。 では、なぜアメリカは、抑止効果の無い海兵隊員を沖縄に配置し続け、新たな基地の建設を強硬に求めるのか。 アメリカの海兵隊が沖縄にいることの最大の理由は、年間6000億円にものぼると言われる日本の米軍駐留費支援にある。 いわゆる思いやり予算。日本は海外に駐留するアメリカ海兵隊の99%を国内に抱え、しかも、在日米軍の駐留経費の75%を思いやり予算として負担している。 日本は海外に駐留するアメリカ海兵隊の99%を国内に抱え、しかも、在日米軍の駐留経費の75%を思いやり予算として負担している。 ドイツの30%と比べてもこの数字は圧倒的に高い。つまり、アメリカは世界のどこの国よりも日本に海兵隊を置いた方が経済的に好都合であるという理由から、地域の抑止力などとは無関係に、単に世界中に海兵隊を派遣するためのホームベースとして、海兵隊の基地を日本に持ち続けたいというのが、アメリカの本音である。 地元の反対が非常に強い場合、アメリカは辺野古への基地建設をごり押しはしない。 理由は、アメリカは、反基地感情を刺激し過ぎることで、それが嘉手納など、アメリカ軍の海外戦略の生命線にまで飛び火することを最も恐れているからだ。 嘉手納などに比べればアメリカにとって普天間問題は小さな問題であり、それが少しこじれたくらいで日米関係が損なわれることもないし、問題が他の基地へと波及することは、アメリカは決して望んでいないからだ。 上記のように「抑止力」が何たるかを正しく理解すれば、普天間飛行場代替施設の立地問題もまったく異なった様相を呈してくる。しかし、上述したように、鳩山氏はもとより、平野、岡田、北沢の3大臣も同様に旧態依然の「抑止力」論に洗脳され、蹂躙されていた。そして菅氏は、それを引き継いでしまったのである。 昨年の冬、小沢一郎氏の公設秘書が東京地検特捜部にいきなり逮捕される1週間前、小沢氏は「アメリカのプレゼンス(存在感)は、私は必要だと思っております。それはおおむね、第7艦隊の存在で十分じゃないかなと」(2月25日大阪市内にて)と述べた。 また小沢氏は、大久保公設秘書が逮捕される直前の2月27日、米軍再編に関し、「極東におけるプレゼンス(存在)は第7艦隊で十分」と断言した。 これら小沢代表(当時)の発言は、自民党の防衛族らを「日米安保を損なう」などとして怒り狂わせたが、よく考えてみれば分かるように、すなわち先に紹介した論理から見れば、小沢氏が云う「第七艦隊の存在で十分」発言は当を得ているのである。 ◆小沢一郎氏の第七艦隊で十分発言関連記事一覧
もし、東京地検特捜部、大メディア、自民党の連携による一連の執拗な小沢代表(当時)への総攻撃がなかったとしたら、沖縄の海兵隊は米国の計画通り、司令部だけでなくヘリの飛行部隊を含めて米国に移転することになったのではないかと思える。そこでは米国追随と防衛・土建利権に満ち満ちた辺野古回帰案などなかったはずだ。 これに関連した面白い動画(YouTube)があったので以下に紹介する。 出典: http://blog.goo.ne.jp/sithux7/e/3bc1d... 抑止力問題に関連しては、天木直人氏は自身のブログで以下のように述べている。 月刊ベルダという情報誌に沖縄海兵隊の「抑止力」は本当なのかという興味深い記事があった。 その記事は様々な識者の意見を紹介し、海兵隊の抑止力は実態のないものであると、断じている。その上で次のように締めくくっている。 すなわち、海兵隊は抑止力だという杜撰な論理が日本でまかり通るのは、戦後ずっと続いてきた対米従属の考え方が、いまだに官僚からマスメディアに至るまで広く浸透し、そうした思考停止が「普天間問題での日米合意をそのまま実行しなければ、日米同盟は亀裂する」という短絡的な主張を生んでいる。 ラムズフェルド米国防長官が03年11月に沖縄に立ち寄り稲嶺知事(当時)と会談したことがあった。基地問題の抜本的な改革を抗議にも似た口調で迫られた時、これをじっと聞いていたラムズフェルド長官の表情は次第に険しくなったという。 米国は住民の反対、抗議に弱い。鳩山首相が沖縄の声を米国に強くぶつけていたならば米国は撤退したに違いない。 米国は今でも沖縄の反対の声を恐れている。だからこそ日米共同声明の合意は政権が変わっても引き継がれるべきだと繰り返し念を押してきているのだ。 たとえ菅政権がそれを抑え込もうとしても、米国が撤退するに違いない。これこそが、これのみが、日本の平和外交が実現できる道である。 ★天木直人:沖縄の声が米国を動かす平和外交は可能だ そうだ。 もし、鳩山氏であれ菅氏が、時代錯誤の防衛論や抑止力論の亡霊から抜け出し、本気で沖縄の負担を軽減する気があるなら、沖縄県民の切なる声、怒り、パッションをオバマ大統領、米国に正直に伝えることだ。 そこには小難しい、インチキな....論は不要であろう。 |