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環境省が自治体に
「違法行為」を指示!
ここまで堕落した環境行政
青山貞一
東京都市大学大学院

掲載月日:2011年12月15日
 独立系メディア E−wave 無断転載禁


 以下における環境省の対応(言い分)には、今更ながら唖然とする。

 この間、国が設定してきた暫定指針などの基準そのものも付け焼き刃であり、場当たり泥縄的で、東京都など強権的首長がいる自治体を除き、市町村や住民に相手にされて来なかった。

 しかしながら以下の新聞記事(芝生シート高線量の小学校、セシウム9万ベクレル 杉並)では、身の回りで暫定指針(基準)を大幅に超えたものが発見された場合には、他のゴミとまぜ混ぜあわせ、希釈し基準値以内とすれば、ゴミとして燃やしてよいと環境省が自治体からの問いに答えている。永年、環境政策を研究してきた者として、この環境省の言い分には唖然とする!

 環境省自身がこのような対応を自治体に指示していることは、国が廃棄物処理法などの法律を自ら破る違法行為を自治体に進言しているようなものである。原因、理由がどうであれ、有害物質が高濃度で検出された現実に対し、薄めれば燃やして良いなとど考えること自体、住民の安全、安心をあずかる行政にあってはならないことである。
 
 もしこんなことが可能であるなら、どんな有害物質、たとえばダイオキシン類であれ、PCBであれ、有害な物質が身の回りで見つかっても、水や土やゴミで薄め、平均値で指針値(基準値)以内にすれば、どこに捨てても、流してもよいことになる。もし、環境省の役人がそういうふうに法解釈をしているとしたら、環境行政そのものの自殺行為だ。

 原因を究明し、高濃度汚染物質を人々が生活する空間から一旦、遮断型処分場的な場所に移し、そのうえで対応するのが本来の環境行政がすべき対応のあり方であるはずだ。仮に、ある場所で高濃度のダイオキシン類が発見された場合、近くにある未汚染の土壌を大量に混ぜ、1000pg-TEQ/g以下となったから生活空間にその土地をばらまいてよいわけがない。

 当然のことだが、もとより、薄めても有害物質の量そのものは変わらない。おそらく東京電力福島第一原発事故の現場で排水などに高濃度の放射性物質が検出されていることが発見されても、海水などで薄めて海に流せば問題ないという発想が国の行政にまかり通っているのではないかと思える。事実、それを裏付けるようなことが3月以来起きている。

 またコメが放射性物質に汚染されても、汚染されていないコメと混ぜて市場に出せば問題ないとか、汚染されたミルクが見つかっても、他の汚染されていないミルクと混ぜ、希釈すれば問題ないというのと同じである。

 日本の廃棄物行政は、何でもかんでも「都会で燃やし地方に埋めるしか」能がないのだが、その日本のゴミ行政、環境行政がここまで劣化したかと思わせる事件である。三流ならぬ四流省庁といわれて久しい環境省だが、違法行為を自治体に指示するとは。

 国家公務員から地方公務員まで公務員の質が極度に劣化し、思考停止、機能不全となっているのが今の日本だが、こんなことを白昼堂々と国が自治体に指示しているとは驚いた。このような解釈が可能なら、排出基準、環境基準などの存在意義はまったくなくなり、法律、政省令、規則、基準そのものの存在意義がなくなる。

 単なる公務員のモラル低下ではすまない問題だ!

 原子力行政の要である原子力安全保安院などを環境省の一組織に移管する話が現在国会で進められているが、こんな思考停止で倫理観のかけらもない環境省に移管すすれば、新たな問題を引き起こすことが危惧される。

芝生シート高線量の小学校、セシウム9万ベクレル 杉並
 朝日新聞

 1キロ当たり約9万ベクレルと、高濃度の放射性セシウムが検出された東京都杉並区立堀之内小のシート。現在は区の施設の屋内に移して保管している。

 東京都杉並区の区立堀之内小学校(同区堀ノ内3丁目)で、4月上旬まで敷いていた芝生の養生シートを同区が調べたところ、1キログラム当たり9万600ベクレルの放射性セシウムが検出されたことがわかった。

 国が廃棄物処理できる目安とする「1キロ当たり8千ベクレル以下」を10倍以上上回っており、福島県郡山市の下水処理施設の汚泥(2万6400ベクレル)以上の数値だ。区は「シートは表面積が大きく、原発事故直後に広く放射性物質が付着したのだろう。放射性セシウムの濃度測定はキログラムで換算するため、シートが軽い分、高い数値が出たのではないか」とみる。

 環境省は12日夜になって「シート1キロに対し他の廃棄物1トンを混ぜて焼却すれば放射性物質は十分希釈される」と回答し、焼却処分を事実上認めた。これを受け、区は焼却する方向で検討している。