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スウェーデン、ドイツの
新原子力政策の実態

海渡雄一(日弁連環境委員会)

10 Dec. 2009
独立系メディア「今日のコラム」


 コペンハーゲンの動向が気になるところですが、私たち日弁連の環境委員会エネルギー原子力部会のメンバーは原子力政策の転換とされる事態の真相を究明すべく、スウェーデンとドイツを回っております。本日までの調査のごく簡単な中間報告です。

 どちらも社民党政権から保守中道政権に変わった国ですが、大筋のところでは変わっていないという感じです。

 スウェーデンは来年の総選挙で保守中道と赤緑連合の勢力が伯仲し、また極右政党が初めて議席を得るかもしれないという非常に危ない政治情勢です。

 赤緑連合が勝つ可能性も高そうです。

 原子力については電力に対して既設の原子炉の更新を認めるという決定がなされただけで、国からの援助はなく、国としては再生可能エネルギーを支援していくというのが公式の説明です。事故の時の電力会社の損害賠償責任も無制限とされています。もし赤緑連合が勝てば、今の与党の政策の見直しは必至で脱原発路線に復帰するでしょうとのことです。といっても、電力網が原子力を推進したい国営の電力会社などが支配していて、陰に陽に再生可能エネルギーはいじめられているようです。

 また、Citiグループがイギリスの原子力発電所増設計画について、経済的な観点から強く警告する分析レポートを公表したそうです。

https://www.citigroupgeo.com/pdf/SEU27102.pdf

 経済界にこのような意見があるということは非常に面白いですね。環境党の方が教えてくれました。

 ドイツの政権交替で脱原発政策が見直されるというような報道がありましたが、確かに原子炉の寿命を32年と決めたことを少し延ばして、そこで得られた利益を地球温暖化対策に回してはどうかという議論があるという程度で、それにも国内に反対の意見が大きくて、新政権の環境大臣は今のところ公式には脱原発の計画は計画通り進めると言っているようです。新規立地を認めないことは連立合意に明記されており、延長は認められる可能性が高いですが、新規立地は絶対ないという感触です。

首藤先生が2009年10月24日の連立合意を翻訳して下さったので以下に貼り付けます。

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CDU,CSU,FDPの連立合意(草案)
                       首藤重幸 早稲田大学教授訳
<原子力合意>
・ 原子力エネルギーは再生可能エネルギーに信頼できる形で置き換えられるまでの「つなぎの技術」(Bru(ウムラウト)kentechnologie)である。このように考えないと気候目標、耐えうるエネルギー価格、外国への依存をなくすを達成できない。

・ われわれは厳しい国内的、国際的安全基準のもとで、ドイツの原発寿命を延長することを求める準備をする。

・新原発の建設禁止は原子力法で修正せず、存続する。

・ できる限り早期に経営者側と結ぶべき協定の中で、寿命延長の条件が詳細に規定される。(原発の稼働期間、とりわけ再生可能エネルギーの研究のための手法、なかでも蓄積技術等々)

・ 協定はすべての当事者のための計画の確実性を保証しなければならない

<核の最終処分>
・ 核エネルギーの十分責任ある利用とは、放射性廃棄物の確実な(安全な)最終処分を前提とする。

・ 我々は結論を決めないで調査活動を前進させるために、ゴアレーベンの探査のモラトリアムを即座に取りやめる。

・ 我々は国際的な同僚による(Peer)再審査グループに加わってもらって、ゴアレーベンが再審の国際基準を満たすのか否かを審査する。

・ すべての過程は公開で透明性をもって進められる。

・ アッセ2とモルスレーベンの最終処分場は迅速で透明性をもった手続で閉鎖される。その場合、人と環境の安全性が最優先される。発電業者はアッセ2の閉鎖費用を負担する。

・ 最終処分場の立地場所について、我々は国のために重要な廃棄物処理施設を引き受ける地域(Regionen)のために適切な補償に尽力する。