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与野党逆転ではじまる
民主政治の夜明け@

〜参院発法案〜


青山貞一
 
掲載日:2007.8.1

 
 自民党は参議院議員選挙の最中、「民主党が参議院で過半の議席を取れば、日本の政治は大混乱する」といっていた。 私は、確かに混乱がないとはいえないが、参議院での与野党逆転は、日本社会に民主主義がはじまる好機であると思っている。

 そもそも、「政」「官」「業」「学」「報」の利権・癒着のペンタゴンがここまできわまったのは、いうまでもない、自民党の実質一党独裁が60年近く継続したためである。自民党は国会が混乱するというが、では安倍政権が通常国会で17に及ぶ法案を強行採決したことは混乱ではないのか? 強行採決が常態化するような政治が安定した政治といえるのであろうか?



 民主主義政治はいうまでもなく、与野党が伯仲し、ケンケンがくがく議論し、加筆修正しながら法案をつくってゆくことを意味するだろう。いわゆるチェック・アンド・バランスが機能する政治こそ、民主主義の基本である。それは議院内閣制にあってもかわらない。

 私たちは、参議院がなぜ存在するかを考える必要がある。戦後、米国のGHQは、当初、日本の国会は一議院制にしようとしたが、日本側が衆議院の暴走を食い止め、民主主義の本質であるチェック・アンド・バランス機能を働かすために二院制を提案し、受け入れられた経緯があるからだ。

 参議院での与野党逆転は、結果として相手を意識するようになり、まともな議論をせざるをえなくなる。対案も生かされやすくなる。これこそ形骸化して久しい日本の国会政治に民主主義の息吹を吹き込む端緒となるだろう。

 それがきっかけとなって、本格的に政権交代、すなわち自民党政権が衆議院を解散せざるをえなくなり、衆議院でも現在の野党系が多数を占めることもありうる。

.......

 より具体的に参議院における与野党逆転の効果を論じてみよう。

 周知のように日本では議院内閣制であることにも一因があるが、圧倒的多くの法案は政府提案、いわゆる内閣法案(閣法)である。とくに行政法は100%近く内閣法であるといってよい。

 日本では霞ヶ関の省庁など官僚が社会を支配していると言われるが、その根源は、霞ヶ関の官僚があらゆる法案の原案をつくっているからである。自分たちに不利になる法律などつくるわけがないからだ。

 実際、国相手の行政訴訟の勝訴率はきわめて低い。ほとんどゼロに近い。行政訴訟で最も勝訴率の高いとされる地方自治法の一部にある住民訴訟の第四号訴訟ですら、和解を含め6%〜7%である。

 ただ、この住民訴訟は自治体レベルでの公金の不正、不当使用を止めさせるための法律であり、霞ヶ関やその出先の官僚システムには適用されない。

 次に、多くに日本人は法案は最初に衆議院で発議されると思っている。これはトンデモナイ誤解である。立法は、参議院発でも一向に構わないのである。要約的に言えば、参院は首班指名、予算、条約以外は衆院と同党なのである。

 事実、私と池田こみちさんがかかわったダイオキシン対策特別措置法(1999年制定)は、参議院発の議員立法であった。

 しかも、この立法は野党系政党が提案したものであった。

 この法律は、@参議院発、A議員立法、B野党系が発議した、C行政法である、という4つの観点で日本の国会史上まれにみる法律であるとさえいえる。

 この議員立法のために私と池田こみちさんは、数10回も議員会館や国会に足を運んだ。


参議院予算委員会でダイオキシン対策特別措置法
について政策提言する青山貞一(1999年3月9日、参議院)


 そこで、野党が参議院で過半を占めた今、@参議院発、A議員立法、B野党系が発議した、C行政法といった、日本で最も困難とされた立法も決して夢ではなくなる。

 今まで、立法で実質泣き寝入りしてきた野党は、ここぞと参議院発の議員立法を連射すればよいのであろる。これこそ日本の政治における民主主義のはじまりである。まさに何でも反対ではない、しかも立法の可能性がぐーんと増す野党の誕生といえる。

 そうなれば、官僚がつくった法律ではない、国民の側に立った立法が大いに可能となる。行政法を議員立法でつくれば、行政訴訟も国民側の勝訴率が高まるだろうし、より国民にとってわかりやすい法律となるだろう。世界で日本の行政法ほどわかりにくい法律はないからだ。

 とはいえ、おそらく政治の混乱はある。だがその混乱は民主主義の対価である。その意味で、今回の参議院選挙における与野党逆転が、日本社会に民主主義を根付かせる端緒を切り開くことを期待したい。

つづく