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与野党逆転ではじまる
日本の民主政治の夜明けF
〜情報格差の解消を〜


青山貞一
 
掲載日:2007.8.19


 同じ国会議員でありながら、霞ヶ関の官僚組織はその議員が所属する党(会派)によって明確な区別、いや差別をしている。

 たとえば通常国会や臨時国会に際して省庁が内閣法案として提出する法案の事前説明を例にとると、無所属議員や小さな政党には、課長補佐や場合によっては係長クラスが説明にくる。民主党でやっと課長級が説明に来ることがほとんどである。

 また配られる説明資料も、無所属議員、小規模政党、大規模野党それぞれで分量、頁数、厚さが異なっていることが多い。

 大規模野党の民主党でさえ、政権与党の自民党や公明党の議員に配付される資料と比べると、分量がかなり少ないこともある。一般的に与党以外の議員には、いわゆる概要版のみとなることが多い。

 同じ国会議員であり、同じ政党なのに、その規模によって、また与党/野党によってこれだけ違うのが永田町と霞ヶ関の実態である。

 以下の時事通信の記事は、先の参院選挙で大勝利し、参院で第一党となった民主党が霞ヶ関の各省庁に対して、党の会議に際し、自民党や公明党など政権与党と同等クラスの説明員を出席するように要請した、というものだ。

説明役、与党と「同等以上」に=民主が各省庁に要請
時事通信  2007年8月17日(金)

 参院で第一党となった民主党が各省庁に、党の会議に「与党と同等以上」の幹部を出席させるよう文書で要請していたことが17日、分かった。文書はその理由を「参院の国会運営を担う政党として政策課題に迅速かつ責任を持って対応するため」と説明しているが、野党への情報開示を渋ってきた各省庁に対する意趣返しの側面もありそうだ。

 関係者によると、政策分野ごとに設けられた自民党の部会には通常、各省庁の局長級が法案説明などに出向く。一方、民主党の部門会議はこれまで課長級の出席が通例で、同党議員が突っ込んだ質問をしても「持ち帰って後日回答する」と保留されるケースも少なくなかったという。 

 上記に関連し実際にあった例を紹介しよう。

 私たちのシンクタンク(株式会社環境総合研究所)は、国、自治体の政策立案支援などを永年してきたが、たまにはNPOなどからの業務委託、それも省庁の内部資料がないとできない調査業務を受託することがある。

 その昔、国の情報公開法が制定、施行される前、私たちは日本を代表するNPO(グリーンピース・ジャパン、GPJ)からの委託調査として、国が地方が焼却炉や溶融炉などゴミの中間処理施設を建設する際に補助している実態を調べる業務を受託したことがある。

 私たちのシンクタンクは今も昔も、国、自治体、民間企業、NPO/NGO、個人はいずれも顧客として平等にあつかってきたこともあり、額は別としてNPO/NGOからも多くの業務を受けてきた。

 上記の業務の内容は、環境庁(厚生省)、自治省、通産省(いずれも当時)が、市区町村が焼却炉や溶融炉などを建設するに際し、補助している金額を詳細に調べるのが主な業務内容であった。

 情報公開法がない時代である、どうやって省庁の情報を入手するかが問題となった。直接省庁の担当者に連絡しても、詳細資料を提供してくれそうもないからだ。

 そこで、知人の国会議員を通じて、省庁に資料請求をしてもらうことを考えた。そもそも資料そのものはきわめて公共性が高い情報であり、依頼者も非営利法人であるから、国会議員を通じ請求してもまったく問題はないと考えた。

 そこで、当時、みどりの会議代表の中村敦夫参議院議員、与党の一員となっていた公明党のK参議院議員、さらに自民党のK衆議院議員の3議員に趣旨を説明し上記の資料要求を依頼することにした。

 議員への具体的な依頼内容は以下のようなものであった。

 過去10年以上にさかのぼり、環境庁(厚生省)、自治省、通産省がもっている年度別、施設種別、市区町村別の国庫補助額、関連する地方交付税額に関するデータである。

 環境庁(厚生省)は、焼却炉・溶融炉本体や根幹的な技術への国庫補助額、自治省は一部事務組合や広域連合など市区町村事務の広域化にともない出している特別地方交付税額、通産省は焼却炉・溶融炉の建設にともないゴミ発電装置をつける場合の国庫補助となる。

 具体的な請求方法だが、各議員の政策秘書に省庁の担当部署に対して上記の資料請求をお願いした。ただ、手順として、まず村敦夫議員を先行することとした。中村議員はさきがけ以降、ひとりでみどりの会議を設立していた。中村議員の政策秘書、田中信一郎さんに依頼した。

 中村議員には約2ヶ月たっても、ほんのわずかの概要しか届かなかった。しかも、請求していた資料のうち、古い年次分については、保管期限を過ぎ処分したなど、と省庁は言い訳していたという。

 私たちは第二弾として、与党である公明党のK参院議員と自民党のK衆院議員の政策秘書に中村議員に行ったのと同じ方法で資料請求をお願いした。

 各省庁は与党議員には、何と2週間も立たないうちに膨大な資料を議員会館に持参してきた。K議員の政策秘書によれば、省庁の担当者は、「もっと必要であれば資料を提供します」といったという。

 もっぱら、与党の2人に同時に請求をお願いしたことで、K議員の秘書におしかりを受けたが、中村敦夫議員には提供しない膨大な資料が与党の2議員にはほぼ同時期に持参された。さらに必要なものがあれば提供しますといったのである。

 中村議員や田中政策秘書はこれを聞いて激怒したが、霞ヶ関と永田町の間での議員に対する「情報格差」はこんなものである。

 同じ国会議員でありながら、与党であるか野党であるかでこれだけ差別されるの実態が浮き彫りとなった。

 もっぱら、2001年に施行された国の情報公開法により、国民から霞ヶ関の省庁がもっている情報、資料、データの多くは時間と費用がかかるものの、開示されるようになった。

註:
日本では行政機関について、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号、平成11年(1999年)5月7日成立、同年5月14日公布、平成13年(2001年)4月1日施行。)が定められている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


 しかし、明らかに存在するはずの情報、資料、データであっても、情報公開法にも基づき正規に開示請求をした場合と、与党議員を通じて資料請求する場合とでは、与党議員経由の方が数倍、開示が早くなることもある。

 省庁によっては、国民が情報を開示請求しても、請求から2週間たっても提供せず、期限となっている2ヶ月後にやっと提供したり、一部黒塗りとして提供するなど、情報格差や差別が存在している実態がある。

 ところで、上記の市区町村の焼却炉・溶融炉建設への国の省庁からの補助に関する資料、データだが、依頼者からWebを通じて調査報告書は全面公開された。

 私たちはそれらのデータを用い以下の論文を執筆し公表た。

◆青山貞一・鷹取敦:日本の「廃棄物焼却主義」実態の統計的把握について(長野県公式ホームページ)
◆青山貞一:廃棄物焼却主義の実証的研究(武蔵工大環境情報学部紀要第5号)

 ぜひとも、与党が一丸となり省庁に上述のような情報差別、情報格差を無くすよう要請し、差別を解消して欲しい。

つづく