エントランスへはここをクリック   

説明責任を果たさぬ
「新党日本」
(1
)

青山貞一
 
掲載日:2007.6.4


◆青山貞一説明責任を果たさぬ「新党日本」(3)
◆青山貞一:説明責任を果たさぬ「新党日本」(2)
◆青山貞一:説明責任を果たさぬ「新党日本」(1)

 以下は、田中康夫前長野県知事が参議院議員選挙に新党日本の比例代表からで出馬するという時事通信の記事である。新党日本は6月4日に平河町にある都市センターで記者会見を開くという。

田中前長野知事が参院選出馬へ
=新党日本から比例代表に


 田中康夫前長野県知事(51)は31日、夏の参院選比例代表に、自身が代表を務める新党日本の候補として出馬する意向を固めた。同党関係者が明らかにした。同党のほかの参院選候補の発表と併せ、6月4日に正式表明する考えだ。

 田中氏は3選を目指した昨年8月の長野県知事選で落選したが、その後も同党代表として政治活動を続け、参院選出馬の可能性などを検討していた。同党の国会議員は現在、衆参に1人ずつ。

時事通信 2007/05/31-13:16

 だが、新党日本の代表である田中康夫氏は、公党に寄せられた以下の重大な疑問に、依然として何も答えていない。

(1)首班指名で安倍総理に投票した問題:

 2006年秋の首班指名で数少ない新党日本所属議員である荒井広幸参議院議員が、こともあろうか安倍晋三総理に投票したこと。

(2)福島県知事選挙で新党日本が自民・公明推薦候補に相乗りした問題:

 佐藤栄佐久前福島県知事が官製談合問題で東京地検に起訴された後の県知事選挙で、こともあろうか、自民・公明が推薦する候補者を推薦したこと。


 いやしくも政党助成金を受け取っている公党の代表であるなら、上記について、国民、納税者、有権者に対してまともに答える責任がある。しかし、田中康夫氏は、何ら説明責任を果たしていない。

 田中代表は、本来、荒井広幸参議院議員を除名措置とすべきであり、最低でも幹事長職を辞任させる辺デキである。しかし、田中代表は除名どころか、民間企業や自治体の場合の懲戒、けん責など何一つおとがめすらしない。

 これについては、昨年9月28日、国民新党が以下の記事にあるように、新党日本との統一会派を解消する措置をとっている。当然であろう。

<国民新党>「新党日本」との統一会派を解消
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060928-00000129-mai-pol

 国民新党の亀井久興幹事長は28日、国会内で記者団に、衆参両院での新党日本との統一会派を解消する考えを明らかにした。新党日本の荒井広幸幹事長が26日の首相指名選挙で自民党の安倍晋三総裁に投票したため、「(野党としての)国民新党の立場を根底から崩すことにつながる」と判断した。週明けにも両院に届け出る。


 福島県知事選挙問題で私は次の論考を公表した。

◆青山貞一:節操なく支離滅裂な「新党日本」福島県知事選

 私は長野県知事としての田中氏を政策面で支援してきたが、こと新党日本の設立、運営に関しては、荒井議員問題が起こる前から一貫して反対、批判してきた。

※青山は田中康夫氏が長野県知事時代、特別職、非常勤で環境保全研究所長、その後、政策アドバイザーなどを歴任、現在でも環境審議会、公共事業監視評価委員会委員を歴任している。

 荒井広幸参議院議員問題について、私は田中代表に直接電話し事情を聞いた。だが、田中氏からは残念ながら何一つまともな説明はなかった。

 あったのは田中氏自身が参議院選挙で出馬するに際し、新党日本が必要であること、なぜ荒井議員問題がありながらも新党日本のだ票となっているかについての言い訳であった。

 結局、田中氏ご自身は、国会議員になるためなら、利用できるものは何でも利用する。国会議員になるためには、当時(そして現在でも)政党としての要件を満たしている新党日本を徹底的に利用するということらしい。事実、新党日本にはいわゆる政党交付金がでている。

 これには、はっきり言って私はがっかりした。

 最近になって民主党の鳩山由紀夫幹事長から田中康夫氏に参議院選挙で比例代表から立候補しないかという打診があった。田中氏は態度を明確にしなかったという。それもそのはずである。

<参院選>
田中康夫氏に比例出馬を打診…鳩山民主党幹事長


 民主党の鳩山由紀夫幹事長は22日夜、新党日本の田中康夫代表と会談し、夏の参院選比例代表への民主党からの立候補を打診した。インターネットテレビの番組で明らかにした。田中氏は態度を明確にしなかったという。田中氏は06年8月、3選を目指した長野県知事選で落選。国政への転身が取りざたされている。
毎日新聞 2007年5月23日

 私は新党日本から参議院議員選挙に出馬することに異議を申し立てるつもりはないが、少なくとも冒頭の(1)、(2)の疑義に党首として正面から答えるべきである。もし説明できないなら公党の代表としての資格はないだろう。

 もし、説明できない理由が、自分の知名度を生かすための比例代表(全国)からの出馬で、その前提として、新党日本が政党要件を満たしており、22億を超す政党交付金(=税金)があるからだとすれば、なにおかいわんやである。政党交付金の支給額については以下を参照のこと。

2005年の政党交付金支給額

自民党 157億7951万4000円
民主党 117億6529万8000円
公明党 29億4374万1000円
社民党 10億2242万2000円
自由連合 1億1950万5000円
国民新党 6094万7000円
新党日本 4003万円

2006年の政党交付金支給額(06年1月18日確定)

自民党 168億4,600万円(+14億2,700万円)
民主党 104億7,800万円(−17億1,400万円)
公明党 28億5,800万円(−1億1,300万円)
社民党 10億600万円(−2,200万円)
国民新党 2億6,600万円
新党日本 1億6,000万円

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


政党交付金(せいとうこうふきん)

が税金から政党へ資金を出す制度。または日本だけの制度で「政党助成金(せいとうじょせいきん)」とも呼ばれるが、日本の法律上は「政党交付金」という呼称が正しい。なお、政党が政党要件を満たさなくてなっても政治団体として存続する場合には、政党であった期間に応じて特定交付金が交付される。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 もし、田中康夫氏が自分が国会議員になりたい一心で、新党日本なる公党をその踏み台として利用するために、こともあろうか自民党総裁に荒井広幸参議院議員が首班指名した問題を不問に付すとしたなら、国民新党からの絶縁状以前に、市民派をきどる政治家として何おかいわんやとなるだろう。

 最低限、荒井広幸議員問題について説明責任を果たし、最低でも幹事長職を自認させるなどの処分を行うことが不可欠である。またこのことを知らない有権者が新党日本に投票しても、今後、参議院で重要事項の採決が行われるとき、荒井議員が安部政権下の内閣法や議員提案法案に賛成する可能性すらある。

 次号では、なぜ、比例代表から出馬するか、その理由、背景について報告したい。

つづく