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真夏の上州で環境調査
(3)白砂・吾妻川水系における
環境問題の所在@

青山貞一
東京都市大学環境情報学部
26  July 2010
初出:独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁

 
 今回、群馬県北軽井沢に来た主な目的は、この5月のゴールデンウィークに実施した浅間山系の吾妻川と白根山系の白砂川で水質調査(の追跡調査を行うことである。

 まず、この調査を行うことの背景にある問題の所在について報告したい。なお、以下では2010年5月5日に現地調査したときの写真を使用している。

 すなわち、白根山系には万座や草津など温泉がある。なかでも草津温泉は日本を代表する温泉であるが、そこから流れ出るお湯はpH(ペーハー)で2.0前後の強酸性であり、同時にヒ素をはじめ多くの重金属類が含まれている。


★☆は発電所の位置

 それらの温泉水は、草津温泉で「湯川」という名の川に流れ込み、その「湯川」は品木ダムができる前までは、群馬県西北部を南北に縦断する「白砂川」に流れ込んでいた。草津以外のpH2−3の強酸性をもつ温泉水も「大沢川」や「谷沢川」を通じて最終的に「白砂川」に流れ込んでいたのである。

 pH2近くの水(湯)は、下の写真にあるように約10日間で五寸釘を溶かし、細い針金としてしまう。 


撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5
出典:国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所

 またpH2の強酸性の水(湯)は、下の写真にあるように約一ヶ月でコンクリートをボロボロにしてしまう。
 

撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5
出典:国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所

 上記は、
いずれも草津温泉にある国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所に展示されているものである。

 当然のことであるがpH2前後の強酸性の溶液(水や湯)は、何も釘やコンクリートを溶かすだけでなく、さまざまな金属、重金属類も溶かすことが知られている。

 事実、土壌や底質、水に含まれる鉄、亜鉛、銅、金、銀、鉛、クロム、ニッケル、マンガン、カドミウム、ヒ素などの重金属類を分析する時には、強酸性の溶液中で溶出することからはじめるのである。

 したがって、同じ重金属類が存在する地域であっても、そこに流れる表流水、地下水、またそこに降る雨の酸性度が低ければあまり溶出せず、重金属類の濃度は低い。他方、白根山系のように強酸性の表流水、地下水が流れる地域では、重金属類の濃度が高くなる。

 上記について、
草津温泉の特徴紹介というホームページには以下のような記述がある。

■草津温泉の特徴紹介

 行ったことがない人でも、名前くらいは誰でも知っている草津温泉について紹介したいと思います。
 草津温泉には、無料の共同浴場が18ヵ所存在します。
 地元の住民や観光客が一緒になって入ることが出来ます。ですが、最近では観光客のマナーの悪さが目立ってきているようです。
 そのせいで観光協会も頭を悩ませているらしく、非常に残念です。みなさんも観光マナーには気をつけるようにしましょうね。
 さてさて、「草津温泉」の名前の由来は、硫黄成分の強い臭いが「臭い水」の意味「くさうず」が変化し、「草津」となった説があります。
 それほど強い酸性水ですから、源泉に1円玉を1週間つけておくと、溶けてなくなってしまいます。
 1週間滞在する方、試してみましょう!
 しかしこの強い酸性の殺菌力が、草津温泉の魅力でもあります。
 とは言うものの、傷口がある人はやはり気をつけて下さい。ヒリヒリと痛みますよ。
 傷口のない人でも、温泉をはしごしていると強い酸性水でお肌がボロボロになるなんてこともあるので、特に女性は控えめにしておいたほうが良いでしょう。

 草津温泉の特徴について次のような記述もある。

 ここで、草津温泉の特徴、効果を記述します。
 草津温泉
 場所 : 群馬県
 湯量 : 36000リットル/分 (日本一)
 温度 : 98℃
 泉質 : 酸性(PH 約2.0)
 草津温泉に浸かっていると、3分間で細菌がほとんど死滅します。
 雑菌が死ぬので、ものすごくお肌が綺麗になります。別名、皮膚の湯です。
 ただ、3分以上浸かると他の良い菌も死ぬので長湯は厳禁です。

 このように、湯量、湯質で日本一の人気がある群馬県の草津温泉も、その湯の特性から見るといろいろ問題が見えてくることになります。
 .......
  ところで、pHが2.0前後の「湯川」が流れ込む「白砂川」は、「
八ッ場ダム」問題で有名となった群馬県西部を横断する「吾妻川」に流れ込むのである(下図参照)。


★☆は発電所の位置

 となると、仮に鉄とコンクリートで八ッ場ダムの本体を建造していも、数か月のうちにコンクリートはぼろぼろとなり鉄筋は針金となって、ダム本体は崩壊してしまうことになる。

 実際、草津温泉にある国土交通省の品木ダム水質管理事務所の展示を見ると、pHが2.0前後の水(湯)はすさまじいものであることを知る!

 下の写真はその実験結果を示している。

 事実、pH2.0前後の水に約一ヶ月浸したコンクリート塊は、体積でも重量でも半減しているのである。以下の写真はそれを示している。


撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5
出典:国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所

 そこで、建設省(後の国土交通省)は、「湯川」が「白砂川」に流れ込む前に、石灰を使って強酸性の水(湯)をpHで5−6に中和することにした。この中和工場は草津温泉の東はずれにあり、誰でも工場の内部を見学することができる(下の写真参照)。


湯川の始点に近い草津温泉にある石灰工場
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5

 下の写真は湯川の始点に近い草津温泉の大滝の湯近くにある湯川の強酸性の水(湯)を石灰によって中和している現場である。写真手前が中和以前、写真奥が中和後である。石灰により中和するため水(湯)が白濁していることが分かる。


湯川の始点に近い草津温泉にある石灰による中和現場
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5

 下は草津温泉から「品木ダム」に至る「湯川」。膨大な量の石灰で河川水は白濁していることが分かる。


草津温泉から品木ダムに至る湯川
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5


草津温泉から品木ダムに至る湯川
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5

 ところで、中和するために使う石灰の粉は一日で何と50トンにも及ぶ。

 となると、そのまま「湯川」に石灰まみれの水(湯)を流すと湯川だけでなく、白砂川にも大量の石灰が流れ込むことになる。

 しかも、流れ込む水(湯)には高濃度の重金属、とくにヒ素が含まれていることも分かった。

つづく