大手製紙会社の古紙再生偽装A 業界ぐるみ!? 青山貞一・ 池田こみち 掲載日:2008年1月29日 無断転載禁 |
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1月23日に第一報を書いた標記の古紙再生偽装問題だが、グリーン購入法を所管する環境省の当事者責任、監督責任を問う声が広がっている。 それをうけ、今日1月29日、環境省とグリーン購入ネットワーク(会長:中原秀樹氏)との会合が環境省でもたれ、この間の経緯、今後の対応などが協議される。中原氏は1月23日の私たちのブログをコピーし、関係各方面に配付し、環境省にも連絡を入れていた。時既に遅し、である。 しかし、筆者がすでに指摘しているように、日本では、エコマークなど環境に優しい製品の圧倒的大部分が、環境省の外郭団体である財団法人日本環境協会に設置した有識者委員会にメーカーなどから提出されるカタログだけで審査されており、しかも高額の審査登録料を当初だけでなく、数年に一度徴収している実態がある。 しかも、日本環境協会同様、環境省、グリーン購入ネットワークも、自ら何一つ実証的な検証をせず、メーカーに各種のエコラベルの認証や登録を与えていた。 さらに、国や全国自治体に優先的にそれらの製品の購入を呼びかける、だけでなく、実質的に購入を義務づけていたことが問題である。 環境省はグリーン購入法の所管官庁でありながら、メーカーに立ち入り検査などを実施せず、メーカー「性善説」にたち、いわばメーカーの自主性にオンブにダッコとなっていたのである。 第一報でも述べたように、今回のメーカーの古紙再生偽装は、過失というより、故意に近い行為である。しかも、以下の記事にあるように、業界ぐるみの様相が強い。 環境省は大手4社を詐欺罪で刑事告訴しなければならないだろう。 同時に、あらゆる登録、認証製品の一斉検査を実施し、その結果を国民の前に明らかにすべきだ。東京地検も公正取引委員会などに任せるのではなく、自ら立ち入り検査を行い、業界ぐるみの経済犯罪として立件すべきである。 グリーン購入ネットワークや環境協会関係者による内輪の会議でお茶を濁すようであれば、この種の環境配慮製品全体への国民の信頼性は瓦解し、環境省自体の存在意義が問われることになる。 逆に愚直に対応してきた中小零細業者などが、「正直者が馬鹿を見る」ことになりかねない。おそらく今回の一件は氷山の一角であろう! また問題は、古紙再生分野だけにとどまらないのではないか、という疑念である。 筆者の所には、多くの通報が寄せられているが、それら通報の中には次のようなものもある。 「環境省傘下の「グリーン購入ネットワーク」なる団体をご存知でしょうか。諸悪の根源は、このネットワークの存在です。企業の片棒を担いでいる団体です。 ところで、今回は、紙の品質が偽造と騒がれていますが、同じ傾向としては、プラスチックの品質も同じです。 廃プラを化学的な組成まで戻して、紙と同様な混入を売りにした製品も出回っていますが、それを製造しているメーカーは、何時、それがばれるか戦々恐々の日々の状態です。 とある企業は、今からそのための釈明の準備を行っているということです。」 ....... さらに以下の意見もある。 「再生紙偽装の論考を拝読しました。ここにも、耐震偽装同様の我が国官僚と天下り外郭団体の構図が露呈していますね。 この問題、官僚が得意の法律作りで「お墨付き」を与え、なにもし ないで、ピンはねだけして、第三者機関によるReview, Audit が意図的に避けられている「官僚の不作為」と「責任回避」のパターンが示されています。」 通報は、aoyama@eritokyo.jp までお願いします。ただし、必ず連絡先を示してください。個人情報は必ず守ります。 メーカーや流通、小売りは、あらゆる製品を「環境にやさしい」とするだけで、若干価格が高くても売れることをいいことに、日本環境協会のエコマークやグリーン購入の対象製品の登録や認証を受けていた可能性は大である。 またスポンサーに極度に弱い日本のマスメディアがどこまでこの問題に食い込むか、食い込めるかが注目される。監視しつつ調査報道を期待したい。
以下は1月23日に書いた第一報。 大手製紙会社による古紙再生偽装の常態化が発覚したが、さらに昨年7月、環境省に提出したグリーン購入法で定めたコピー用紙の古紙配合率引き下げ要望を取りまとめた日本製紙連合会の作業部会メンバーが、配合率偽装を認めた製紙9社の社員で構成されていたことが22日、明らかになった。 建築確認や食品の賞味期限の偽装に揺れた日本だが、実は大手製紙業界にも再生紙偽装問題があったということは、「環境」をウリとしてきたメーカーの信頼を失墜させた。 日本の製紙業界には、過去、ダイオキシンの垂れ流し、窒素酸化物大気汚染測定データの偽装(捏造)問題があり、また私たちが15年前、上場企業を対象に行った企業環境認識・配慮度調査でも初年度は一社以外どの会社も回答してこなかったように、環境問題に非常に後ろ向きの姿勢があることは否めない。 ●環境総合研究所の企業環境認識・配慮度調査(通称エコダス)報告書 の発表年度は以下の通り。第1回が1991年度。第2回は1993年度。 A4判でそれぞれ約160頁(ご関心おありの方は池田こみち副所長に 御連絡下さい。 初年度のアンケート対象製紙会社 中越パルプ、山陽国策パルプ、王子製紙、十條製紙、セッツ、 本州製紙、三菱製紙、大昭和製紙、大王製紙、神崎製紙、 レンゴー、北越製紙、東海パルプ、ウェアハウザー、スコット 初年度の回答企業は中越パルプのみ さらに今回の偽装は、単なるモラルの問題ではなく、また過失というよりは意図的に行った行為である。すでに公正取引委員会も本件に関心を持ち取り組み始めているという情報がグリーン購入関連組織の関係者から来ている。 しかし、膨大な量の偽装再生紙を国民はじめ企業、公的機関に騙して売ってきたわけだから、単なる経済犯罪だけでなく、詐欺などで刑事告訴、告発レベルの事件であると認識すべきである。 問題はそれにとどまらず、グリーン購入法制定、施行により環境保全型製品の調達を各省庁や自治体に義務づけてきた環境省の監督責任、さらに今や全国規模で導入されているISO14001環境マネジメントシステムの認証機関の外部監査能力にも及ぶ可能性がある。 たとえば、私がいる武蔵工業大学環境情報学部は、日本で最初に大学としてISO14001EMSを取得し、10年近く運用してきた。目的、目標のなかに明確にグリーン購入を位置づけ四半期毎に内部監査において、その達成率を監査し、さらにISO認証機関の外部監査がその結果を一年に一度評価してきた。その目玉のひとつにエコ製品としての再生紙の利用がある。 今回の製紙業界による偽装は、10年以上に及ぶ古紙再生=環境配慮という全国的な認識を裏切るものであるととともに、エコ製品の実証的な第三者チェックをせず、企業、事業者の自主性にまかせ、カタログに書かれた効能だけでエコマークなどをカネをとり認証してきた環境省の外郭団体のあり方も批判されてしかるべきものと思われる。 これは単に製紙企業が所定のフォーマットに必要事項を記入し提出すれば、実質的にグリーン購入対象製品としてきた背景もある。グリーン購入ネットワークなどグリーン購入関連機関についは、それを前提にグリーン購入活動を普及させてきた。 さらに、全国的に拡大した上記のISO14001の信頼性にも大きな影響を与える。というのもISO14001の内部監査、外部監査でもグリーン度はあくまでもメーカーのカタログや製品に示されたマーク、ラベルをペーパー上信頼し、年間膨大な量の再生紙を購入してきた(させられてきた)からである。私も大学で環境管理責任者を3年間勤めたが、従来から危惧していたことが本当になってしまった。 結局、環境省はじめ省庁が、何の実証的チェックもないままメーカーの自主性にまかせ、カタログ値をもとにグリーン度やエコ製品に、外郭団体が登録料までとり、認定、認証、登録してきたこと自体が由々しき重大事なのである。 この問題は、環境省やその外郭団体、財団法人日本環境協会などのあり方として、過去何度も有識者や環境行政改革フォーラムなどのNPOから指摘されてきた問題である。単なるメーカーが提出する書類審査だけで審査、しかも高額の登録料を取って認定、登録し、あたかも環境省がエコ製品としてのお墨付きを国民に与えることについてである。 財団法人日本環境協会など関連する環境省の外郭団体は、従来、いわばお手盛りのエコ製品認証、登録への批判にまともに対応せず、他方、環境ブームに乗って膨大なエコ製品の認証、登録により巨額の手数料をメーカーなどからとってきた背景があることは否めない。 今回、大手製紙会社による古紙再生偽装の常態化が発覚し、さらに昨年7月、環境省に提出したグリーン購入法で定めたコピー用紙の古紙配合率引き下げ要望を取りまとめた日本製紙連合会の作業部会メンバーが、配合率偽装を認めた製紙9社の社員で構成されていたことが22日、明らかになったことで、ますます環境省の監督責任、認証、登録のあり方に批判が集まるものと思われる。 また他のエコ製品にも同様な偽装、それもメーカーぐるみでの偽装談合の有無が問われる。
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