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  師走に恒例の第九を聴く
日本フィルハーモニー交響楽団、特別演奏会2007
青山貞一
掲載日:2007年12月29日

 この秋(2007年9月9日)、大学の職場の友人がバッハのミサやモテットの合唱をしており、チケットを頂き本格的な教会音楽を聞いた。まるでrライプチヒやザルツブルグの教会にいるようだった。東京オラトリエンコールの第14回演奏会であった。

 ◆
青山貞一:<今日の一枚>初秋にバッハのミサを聴く 

 その友人は日本フィルハーモニー交響楽団のベートーベンの第九合唱付きにも合唱団の一員で参加している。師走の2007年12月29日の昼、東京池袋の東京芸術劇場大ホールで開催された
特別演奏会2007に同僚の池田こみちさんと参加した。

 今日はそれほど寒くない。今日は目黒→J池袋で池袋に出る。東京芸術劇場は駅のすぐ近くだ。東京芸術劇場の大ホールでは、東京メトロ有楽町線の音が聞こえることを恐れてホールそのものを地上5階から7階に作ったとされている。
 
 その結果、2000人収容する大ホールへはおそらく”日本一、いや世界一長いエスカレーター”を上らなければならない。実際、始点から終点までかなりの時間がかかるエスカレーターであった。


世界最長のエスカレーター??


東京芸術劇場の正面玄関。
建築物の入り口部分は総ガラス張りで吹き抜けの構造となっている。


東京芸術劇場の全体の構造はこんな感じ。

 今日、すなわち2007年12月29日(土)、日本フィル師走の特別演奏会最後の日のプログラムは以下の通りである。

◎日本フィルハーモニー交響楽団
  2007年12月29日(土)の特別公演プログラム


 主よ、人の望みの喜びよ  J.S.バッハ
   <パイプオルガン>井上圭子

 トッカータとフーガ二短調 BWV.505
   <パイプオルガン>井上圭子

 ベートーベン:交響曲 第9番 ニ短調<合唱付き>
   <指揮>小林研一郎
   <演奏>日本フィルハーモニー交響楽団
   <独唱>菅英三子、菅有実子、錦織健、青戸知
   <合唱>日本フィルハーモニー協会合唱団(29日)



歓喜の「第9」特別演奏会2007のチケット

 東京芸術劇場大ホールははじめてだが、交響楽団と合唱団で300名近くが壇上に上がる我が国最大の演奏会にもってこいのすばらしい音響で、べートーベン第九の演奏、それも小林研一郎氏の大迫力指揮にもってこいのホールであった。

 なんと言っても日本人は師走の第九が好き当日、2000人収容の東京芸術劇場大ホールは開場前から入り口付近は大混雑。午後2時15分に入り口で待ち合わせしたが、その時間には大部分がホールには入っていた。

 時間通り、午後2時30分から井上圭子さんのパイプオルガンによるバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」「トッカータとフーガ二短調」が演奏される。


東京芸術劇場大ホールのパイプオルガン

 演奏者の井上圭子さんは、東京芸大オルガン科卒業後、同大学院終了。その後、ドイツのフライブルグ音楽大学で学び、ドイツ、フランス、デンマーク、アメリカ、チェコ、ポーランドなどで演奏するなどソリストとして活躍している。


演奏前、パイプオルガン前に座るの井上圭子さん 

 パイプオルガンならではの重低音など、すばらしいパイプオルガンの演奏だった。
 
 井上圭子さんのパイプオルガンによるバッハの2曲の演奏終了後、15分の休憩に入った。

 .....

 休憩の後、いよいよ今日のメインエベントのベートーベンのベートーベン:交響曲 第9番 ニ短調<合唱付き>九の演奏だ。指揮は、小林研一郎氏、通称、コバケンさんである。

 オーケストラは、もちろん日本フィルハーモニー交響楽団、プレストにおける独唱は、ソプラノ菅英三子、アルト菅有実子、テノール錦織健、バス青戸知の4氏、重要な合唱は、日本フィルハーモニー協会合唱団、私の友人はこの合唱団のメンバーである。



こんな感じだが、これは日本フィルハーモニー協会合唱団公式Web
からのもので、東京芸術劇場大ホールでの特別演奏会のものでは
ありません!

 コバケンさんの指揮はすばらしい、というかすさまじいの一言。オーケストラと合唱団合わせて300名近くを一糸乱れぬハーモニーで統率し、ど迫力の演奏をひきだした。ソプラノ菅英三子、アルト菅有実子、テノール錦織健、バス青戸知の4氏独奏また日本フィルハーモニー協会合唱団の合唱も。ベートーベンが生きていたならぜひ、聞いてもらいたい。とはいっても、晩年のベートーベンは耳が聞こえなかったから無理か。

 これは有名な話しだが、パンフにも解説にあった。ベートーベンは、第九の初演の時、すでに聴覚を失っており、第九を完全に指揮することはどうみても不可能であった。だがベートーベンはあくまでも自分でタクトを振ると言ってきかず、補助指揮者として当時ウィーンの宮廷楽長だったウラムラウフをたてて演奏にのぞんだ。

 結果としてステージには二人の指揮者が存在するというクラシック音楽の演奏史上前代未聞となった。終演後、開場の聴衆から今回同様、盛大な拍手がわき起こったが、ベートーベンには聞こえず聴衆に背を向けたままだった。アルトの独奏者がベートーベンの袖をひいてあげたことで、やっとベートーベンは終演に気づき、聴衆に向かって挨拶をするに至った、と。

 今日のコバケンさんの演奏にも、2000人近くの聴衆の拍手は鳴りやまなかった。何度も何度もコバケンさんやオーケストラ団員、ソリスト、合唱団はおじぎを繰り返し、それに聴衆が拍手で応えた。

 私自身、ベートーベンの第九はいろいろな指揮者で5枚ほどのCDをもっているが、今日の第九は実際にコンサートホールで聴いていたことを差し引いてもベストに近いと感じた。池田さんは感動のあまり涙がでそうになったと言っていた。 

 .........

 考えてみたら昨年のこの時期もベートーベンの第九のブログを書いていた。

 ◆青山貞一:映画になったベートーベン第九(MP3付き)

 上のブログには、著作権フリーの第九の第四楽章(プレスト)がMP3であるので、気分を盛り上げる意味でもクリックして欲しい(笑い)。

 そういえばなぜ、日本では師走にベートーベンの第九がよく演奏されるのかが不思議だったが、徳間書店のCD付きの書籍を買って読んでいたら、日本のオーケストラはどこもなかなか経営的に厳しいとのことで、年末にボーナス代わりというか餅代に第九のコンサートを開き、その収入で楽団員にミニボーナスをだしているという趣旨のことが書かれていた。

 私はよく欧州に行く。行く先々でオーケストラや弦楽四重奏などを聴くようにしている。ウィーン、ザルツブルグでもブラスチラバでも。欧州ではウィーンならずとも、どこの都市でもクラシック音楽を生で聴くのが日常的な文化となっていて、生活にクラシック音楽がとけ込んでいる。

 したがって、欧州ではどの都市でも日本の師走の第九のようなクラシック音楽とのつきあい方はない。早く日本もそうなりたいものだ。

 最後に、昨年のブログ同様、以下で締めくくりたい。

 戦争や軍国主義、国家主義にあけくれる21世紀初頭だが、来年こそ、第九の合唱、「万人よ、抱き合え! この口づけを全世界に捧げよう」 を全世界に発信できる年にしたいものだ。

 
Seid umschlungen, Millionen! Diesen Kus der ganzen Wel

 .......

追記

 自宅に帰ってから、このパイプオルガンについて少し調べてみたら、いろいろ?があることが分かった。 たとえば、東京芸術劇場大ホールのパイプオルガンは、フランスのガルニエ社の製作による126ストップのパイプオルガンで2台のオルガンを180度回転させる方式が採用されている。

 それによりルネサンス・バロック・モダンの各様式の音楽に対応することが可能だ。聞くところによればこの回転方式の採用は世界に例のないだそうだ。

 ここまではよいとして、このパイプオルガンの制御システムは当初故障が多発したという。楽器の性能においても賛否両論で、東京芸術劇場の依頼鑑定では整音など楽器の構造についても疑問が付されている。また、大型で特殊な形状をしたオルガンの採用は音響を含めたホールの設計に大きな制約を与えたと考えられているいう。