長野県の審議会事情(3) 〜公共事業評価監視委員会騒動〜 青山貞一 2007年8月13日, 14日拡充 |
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長野県土木部が所管する公共事業評価監視委員会が大揺れに揺れている。以下は2006年3月末における公共事業監視評価委員会の委員名簿である。
ことの起こりは、以下の新聞記事にあるように、就任以来一度も委員会に出席していなかった慶応大学の金子教授と、高額の旅費がかかるとして島根大学名誉教授の保母名誉教授に長野県土木部が辞任勧告を要求したことにある。 公共事業評価監視委員会は、北海道企画調整局がその昔、提起したいわゆる「時のアセス」、すなわち一定時間経って進捗しない公共事業を取りやめを含め検討、進言する組織をもとに、国土交通省主導で全国都道府県に設置されている委員会である。 通常なら、よほどのことがない限り、一端就任した委員を行政が勝手な都合で辞職勧告などできようもない。よほどのこととして想定されるのは、委員が刑事被告人となり公判で有罪判決となったとか、委員会で明白な公序良俗にもとる行為をしたなどである。
金子教授の場合、結果的に今まで委員会を欠席していたとしても、それを理由に、知事であれ土木部長名で辞職勧告をするのはもってのほかである。 そもそも2007年8月6日に開催された年度第1回目の委員会の開催以前は、現地視察を別とすると委員会は2回しか開催されていない。2回委員会を欠席したことで「依頼者」である行政当局から辞任勧告を受けることは考えられない。 他方、保母名誉授だが、辞任勧告の理由が遠距離で旅費がかさむ、だとすれば、これまたトンデモないことだ。 数1000億円規模の公共事業由来の債務がある長野県にあって、カネを湯水につかう不要・不急の公共事業を監視、評価するための委員の旅費を問題にすること自体、笑止ではないだろうか? 保母名誉教授といえば、諫早湾干拓とならぶ日本の巨大公共事業である中海宍道湖の淡水湖化・干拓事業を工事中止に追い込んだひとりである。 そもそも、年数回開催される委員会の旅費実費をとやかく問題にすること自体いやがらせとしかいいようもないことだ。 ..... 上の朝日新聞の記事のタイトルは、「脱ダム2委員に辞職勧告」とあるが、私自身を含め冒頭に掲げた委員のうち、自治体の首長で委員となっている2名の委員以外は、おそらく大部分は脱ダム系であるはずだ。 たとえば、内山卓郎委員は村井新知事に何度も浅川水系にいわゆるダムが不要なことを説いており、新知事を現地に案内までしている。実際、委員会の席上で私は内山委員からご自身の脱ダムの考えを詳細に書いた知事への嘆願書をいただいている。 また他のある委員は、公共事業評価監視委員会に後述するように、土木部が本委員会にかけることなく、国土交通省に設置許可の届出をしたことに抗議する文書を送っている。 田中康夫知事当時、評価監視委員会の委員は土木系公共事業に対し厳しい考えを持つ研究者やNPO代表としていたことからも、これは当然のこととして県民にも世間にも映っていたはずだ。、 その意味で、脱ダム派だから辞任勧告という朝日新聞の見出しは、不正確である。 私が委員会での議論で感じた限りではあるが、委員リストにある信州新町長と上田市長以外の委員は大部分は脱ダム派のはずなのである。 実は8月6日に今年度の第一回目の公共事業評価監視委員会があった。私は教え子があやうく冤罪となる刑事事件に巻き込まれ、その事件を献身的に弁護し、結果として完全勝訴を勝ち取ってくれた弁護士が大学に来られることが6日に決まっていて、学部長らとお礼を述べることとなっており、あらかじめ長野県土木部には欠席を連絡していた(これについては、巻末を参照のこと)。 委員会の翌日、以下の信濃毎日と朝日の記事が出た。朝日はえらい入れこみようである。全国紙にも掲載されたことから、一気に大きな問題となった。
私はといえば、長野県の公共事業評価監視委員会や委員となっている環境審議会で、ズバズバ発言してきた。私は前知事の田中康夫氏の政策アドバイザーをしてきた経緯からして、いわば脱ダム派である。 また田中康夫氏知事選挙で落選する前後に任期が切れる審議会、委員会で田中前知事によって委員に任命されたのは、金子教授と福田さんそして青山であって、なぜ、金子教授に辞任勧告を出したのか理解できない。 友人、知人の弁護士と金子委員、保母委員への行政からの辞任勧告問題について議論してみた。その結果、両委員に対する辞職勧告は、どうみても行政の裁量権の乱用であり、場合によっては不法行為が成立するのではないか、ということになった。場合によっては、両委員に対する名誉毀損となる可能性もある。 金子教授が昨年末からの委員会に欠席していたとしても、それを理由に辞任勧告をするというのは、間違いなく裁量権の乱用であろう。 たとえば、宇沢名誉教授なども参加していた長野県総合計画審議会では、ここ1年、いや2年近く一度も審議会に出席していなかった東大の藤森照信教授(東京大学生産技術研究所)はずっと委員となっていた。この春任期切れで委員からはずれている。 地方自治法に根拠を置く審議会と公共事業評価監視委員会とは違うといえるが、こと公共事業評価監視委員会は進行中の公共事業の是非を議論する委員会であるという点からして、当人の承諾を得て一端就任した委員に、新知事の意向の有無にかかわらず辞職勧告をするなど聞いたこともない。 もし、田中康夫前知事が任期切れ前に行ったことが違法であるというのなら、長野県はまずそれを問えばよい。それをせず、委員となった者に、あれこれ難癖をつけ、いきなり辞任勧告を出すのは間違いである。もちろん、違法であるわけはないし、新知事も任期切れ前に田中前知事が任命した委員の存在を認めている。 ..... さらに、私が他の委員と電話で話ところでは、環境審議会などと同様、公共事業評価監視委員会でも今年度第1回目の委員会から、新たに7名の委員を加えたという。 これは今の長野県行政がとくいのまさに水増し戦術ではないか。委員会は議決する場、すなわち議決機関ではないとしても、土木部は委員を増やす、それも公共事業推進などの委員を増やすことにより、議論内容の「中和」を狙っているのではないか。 ところで、上記の行政機関の裁量権の乱用による不法行為は大問題であるが、とりわけ問題なのは、以下のことである。 すなわち、長野県発の脱ダムのきっかけとなった浅川に長野県土木部長が、いわゆる穴あきダムを公共事業監視評価委員会に一切かけることなく、国土交通省に許可申請を出したことである。 具体的には長野県が「穴あきダム」建設を盛り込んだ河川整備計画原案を発表し、かつ国土交通省関東地方整備局(さいたま市)に計画を認可申請した。これこそ、しっかり取材し記事にすべきである。 <参考>2007年度第1回委員会出欠確認のメール
<参考> 以下は、出欠に関する青山から事務局への返事
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