エントランスへはここをクリック   

米国はイラクで勝利せず
 ゲーツ新米国防長官が
上院で証言


アルジャジーラ

掲載:2006年12月6日


【アルジャジーラ特約5日】

米国の新国防長官に指名されたロバート・ゲーツ氏(63)は5日、米上院軍事委員会で満場一致で承認されたが、米国はイラク戦争で勝利していないと認める発言を行った。

 上院軍事委員会での証言で、同氏は、もしイラクが向こう1、2年のうちに安定しなければ、「(中東)地域の大火災」状況に陥る可能性があると述べた。ゲーツ氏がラムズフェルド前長官の後を襲うことになる、この公聴会の最初から、同氏は自分が新しい構想を「討議の場に」供することにやぶさかではないと語った。

 ゲーツ新国防長官の指名は次いで、上院本会議での投票に掛けられることになるが、ここでも広範な支持が予想される。

 ゲーツ氏は、もし(上院本会議で)承認されれば、イラクが自分の最優先事項になるとして、イラク問題を引き続き処理してゆくと述べた。

 ゲーツ氏は、ブッシュ大統領がイラクが自力で国を治め、防衛してゆくようになれることを望みつつ、新しいアプローチを模索していると思っていると語った。

 また、イラクにおける軍事行動は、「もし死活的な利益が脅かされなければ」、文字通り最後の手段であるとした。

 同氏は「現在、米国が行っていることは満足のいくものではありません。私の意見では、イラクにおける問題をどのように解決するかで、あらゆる選択肢が討議のテーブルに上がっております」と証言した。

 カール・レヴィン議員(民主党)がぶっつけに米国はイラクで勝利しているかと質問すると、同氏は「違います」と答えた。

 同時に、シリアに対するいかなる攻撃も問題外と排した。同氏の証言は「シリアに対する攻撃は中東域内に反米主義を勢いづかせ、米国の近隣諸国との関係にとって利益をもたらしません」というものだった。

 イランについては、同国は核兵器を取得しようとしており、イランの指導者が核計画が厳密に平和的であると言明しているのは虚偽であると述べた。上院軍事委員会で、イランが核兵器の能力を得ようとしているかどうかと質問されると、ゲーツ氏は「はい。そう考えます」と答えた。

 しかし、イラクほかの問題で公聴会での質問が第2段階に入ると、ゲーツ氏は同委員会に対して、イラクで勝利していないという自分の発言について説明を加えたいとし、発言を撤回するものではないが、「はっきりさせておきたいのは、それがイラク情勢全般にかかわる発言だということです」と述べた。

 米軍将兵から、新国防長官が自分たちの与えられた任務で成功していないと信じているなどと思われたくないとして、同氏は「わが軍は戦場では勝っております。私たちが挑戦を受けているのは、正直申し上げて、安定化や政治的な進展その他の問題なのです」と述べた。

 ゲーツ氏の考えでは、2003年のイラク戦争開始当初、米国の兵力は不足していたといい、「後知恵ではありますが、政府の当時の人々が、もしフセイン政権の崩壊後にイランの支配権を確立するためのイラン駐留兵力を含むと考えていたならば、同じような決定を下さなかったのではないかと思うのであります」と述べた。

 「向こう1年ないし2年、どんな道筋を歩むか、それが米、イラク両国民と米国の次期大統領が、イラクならびに中東地域でゆっくりではあるが、着実に改善される状況になるのを見るか、それとも、非常な危機に直面し、(中東)地域の大火災という可能性が現実になってしまうかを決めることになるでしょう」とも述べた。

 ゲーツ氏はまた上院議員に対して、イラクにおける政治的解決が暴力を終わらせるために求められていると述べた。

 ホワイトハウスでは、スノー報道官が記者団から、米国はイラクで勝利していないというゲーツ答弁は大統領自身の立場と相反するのではないかと質問された。

 同報道官は、ゲーツ証言全体を見れば、米国はイラク政府を助け、自国を防衛しなければならないというブッシュ大統領と見解を共にしていると答え、「あなた方はゲーツと大統領の間にいさかいを持ち込もうとしているようですが、そんなものはありません」と述べた。

 同報道官はさらに、「ボブ・ゲーツが大統領とその政策に関する諸問題でとっている立場、イラクで勝つとは何か、どうすれば勝つのかについての考え方をニュアンスを含めて完全に理解しようとすれば、彼が(大統領と)意見を同じくしていることを知ると思いますよ」と述べた。

 国防長官指名承認の上院公聴会は、11月7日の中間選挙で民主党が上下両院の支配力を得たことを反映し、ブッシュ大統領にイラク問題で新しいアプローチをとるよう迫る圧力が強まる中で行われた。

 民主党と一部の共和党員は、ブッシュ大統領に対して、兵力14万のイラク駐留米軍の一部を撤退開始させるよう圧力を掛けている。

米軍の死者は2900人に達しようとし、苛烈な戦闘と宗派間の暴力ざたの拡大は、イラクの戦争が内戦に発展するのではないか、マリキ・イラク政権が効果的に動けないのではないかという疑問を増大させている。(翻訳・ベリタ通信=日比野 孟)