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米英の元となっているWASP」とはなにか? 

青山貞一 Teiichi Aoyama(東京都市大学名誉教授)
池田こみち Komichi Ikeda(環境総合研究所顧問)
独立系メディア E-wave Tokyo 2021年5月19
日 公開 


 近年、成長(量的概念)、発展(質的概念)が著しい中国への誹謗中傷まがいの攻撃と軍事的包囲が顕著となっているファイブアイズ(Five Eyes)やクアッド(Quad)など、米英諸国のうち、オーストラリアと中国の政治・経済・外交をとりあげるが、その米英のエリート、エスタブリッシュ適社会階層の中心にいるいわゆるWASPについて予備的に解説したい。

 上述のファイブアイズ(Five Eyes)は、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、英国起源の国家であり、クアッドは、米、日、豪、印による同盟とまでは行かない中国への軍事包囲であり、今年は九州地方で共同軍事演習を行っている。日米豪印戦略対話ともいう。

 ところで、フェイブアイズ、クワッドの中心は米国であるが、その米国は周知のように英国から北アメリカに渡った人々がつくった国家である。その英国、米国は一部を除けば、WASP(ワスプ)と呼ばれる人々が社会的階層をなしており、同時に政治家はエリートそしてエスタブリッシュが多い。

 WASPをフルスペルで言うと、White(白人)、Angosaxon(アングロサクソン)、Protesant(プロテスタント)である。以下に「世界の窓」を出典としたWASPの起源と概要について紹介する。

 WASPはイギリス系白人でプロテスタントと言う、アメリカ社会の中枢を為す社会層。WASP(ワスプ)とは、White, Angro-Saxon, Protestant の頭文字をとった略称で、白人でアングロ=サクソン系でプロテスタント信者であることアメリカ合衆国建国の主体となったイギリスからやってきた人びとの子孫であり、中・上層階級を形成している人びとを言う。イギリス系および北欧系はWASPとしてアメリカ社会で多数を占めていたが、南北戦争後は南部のアフリカ系アメリカ人も次第に増加し、さらに20世紀初頭からは非WASP、つまりイタリアや東欧からの移民が増加した。これらの新移民はカトリックであることから異なった文化を持ち、独自の社会を形作ていった。第一次世界大戦前後にアメリカ合衆国の経済が繁栄する中で、次第にWASPと非WASPの間の対立が表面化し、1924年の移民法制定へとなっていく。 出典:Wikipedia

 青山は50年ほど前、市民活動分野の恩師である故野村かつ子さんの教えを受けたが、その野村さんは米国の弁護士で市民運動家の消費者運動・反原発運動の創始者ラルフネーダー氏(米国人)の強い影響を受けていた。そのネーダー氏とは東京で数度会い、同時にネーダーグループと呼ばれ全米各地に広がるる多くの市民運動、学生運動(彼の母校のプリンストン大学、ハーバード大学やスタンフォード大学など20以上の大学につくられたリサーチグループ)、法律相談センター、各種のアドボカシー活動のいつくか現場に行き議論した。ネーダー氏は現在も健在、野村氏は他界している。

 私がとくに注目したのは、アドボカシーである。これは専門家が行政や大企業のためではなく、市民運動や孤立して困っている貧しい人々のためにその智恵、技術を活かすことを意味する。アドボカシー(Advocacy)だが、日本語の適訳がみつからないが、市民/活動擁護あるいは支援)に近い。

 そのネーダー氏や野村氏がいつも口にしていたのがWASPである。とりわけ近年の米国の対外政策は帝国主義的で、大企業への利益誘導ばかりを行っており、立憲民主主義の根本と人道に反していると厳しく批判し、多国籍企業が持つ力にも批判的である。

 さらに45年前東京であたときは、情報化社会のなかでのメディアがWASPや富豪・大資本家に支配され、それに対応するための情報戦略についても持論を展開していた。その一つが今にいうインターネットなど、大新聞、テレビに対抗する市民メディアである。当時、青山はこれについてネーダー氏と赤羽の会議室で議論した。

 ネットメディアを使った独立系メディア、オルターナティブメディア論については、マサチューセッツ工業大学(MIT)のノームチョムスキー教授(現在は名誉教授)もほぼ同じ閑雅である。結局、新聞、テレビは巨大企業、巨大資本が支配していることに限界があると。

 ネーダー氏はその後、1996年、2000年、2004年、2008年と米国の大統領選挙に立候補している。1996年と2000年には緑の党から立候補したが、2004年の選挙では緑の党から公認を得られず、無所属候補として出馬し、幾つかの州で改革党などから公認を得て選挙戦を戦った。

 ところで、WASPに戻るが、英国、米国は、前号のスコットランドとイングランドに書いたように、極めて暴力的であり、覇権的な正確をもち同時に、経済的には植民地主義、帝国主義さらに近年の金融資本主義さらに言えば拝金主義に類するものがある。もとより、米国はもとよりカナダ、オースストラリア、ニュージーランドは英国の植民地からはじまっている。当然、米国、カナダでは原住民のインディアンら、オーストラリアではアボリジニ等の原住民をまさにジェノサイドしている。そのような米英が中国の新疆ウイグルをしてジェトサイドなどと罵倒するのは笑止千万である。

 先のスコットランドvsイングランドで書いたように、宗教的にも米英はプロテスタントが圧倒適に立つ悦しており、その過程ではスコットランドなどカソリックの教会、修道院などが跡かたもないほど破壊されつくされている。これは現場で防災な写真を撮影し、その一部を先の「スコットランド2200km」に紹介している。

 いうまでもなく、プロテスタンティズムと資本主義は事初めから親和性が高いことは、例えば、世界的に有名な「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」マックス ヴェーバー著を読めば明らかである。プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神は、事の初めから親和性が高いのである。

 最後に、WASPのうちのアングロサクソンだが、アングロ・サクソン人(Anglo-Saxons)は、5世紀頃、現在のドイツ北岸からグレートブリテン島南部に侵入してきたアングル人、ジュート人、サクソン人のゲルマン系の3つの部族の総称である。この中で現在のオランダ、ユトレヒト半島から渡ったアングル人が、イングランド人としてイングランドの基礎を築いたため、現在も英米などの英語圏白人をアングロ・サクソン人とんでいる。

 このようにドイツ起源の民族であるが、現在のドイツ圏の国民をアングロ・サクソン人と呼ぶことは原則ないが、その起源となったドイツのザクセン王国は20世紀初頭までドイツ帝国内に存続しており、現在も州名などに残っている。そのためドイツの地域住民としてのザクセン人(サクソン人)という名は今も用いられる。

 青山・池田は2004年、国際ダイオキシン学会がベルリン工科大学で開催された際、1日とってサクソンのもととなっているザクセン王国の首都、ドレスデン、また学会終了後、アングロのもととなっているオランダのユトレヒト半島の付け根をほうもんしている。アングロサクソンについては、別途特集論考を執筆中である。