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日本の総裁選がカウントダウンに入ると、
親中派と反中派の勢力が入れ替わる
北京新報 2021年9月16日
日本首相竞选倒计时,友华与反华力量将重新洗牌
北京新報 2021年9月16日

翻訳:青山貞一(東京都市大学名誉教授)
 独立系メディア E-wave Tokyo 2021年9月17日
 
東京の夜景。 写真/unsplash 略

 9月17日、自民党総裁選挙管理委員会が選挙日程と候補者リストを発表し、総裁選挙が正式にスタートしたことになる。

実は、選挙の情勢はすでに形成されている

 9月15日付の「日本経済新聞」によると、自民党の石破茂元会長は同日、自民党総裁選への不出馬を正式に表明した。

 元自民党総裁の岸田文雄氏、元総務大臣の高市早苗氏、現行政刷新大臣の河野太郎氏が自民党総裁選に出馬することを正式に表明し、これまで人気を博していた石破茂氏が不出馬を表明したことで、自民党の総裁選が正式に成立したことになり、最終的にはこの3人の間で新総裁が誕生すると予想されている。

自民党は親中派と反中派で勢力を再編すると予想される

 自民党総裁選は、しばしば総理大臣の選挙と同一視される。

 日本の議院内閣制では、国会議員は直接選挙で選ばれるが、国の最高行政機関である内閣総理大臣は間接選挙で選ばれる。

 現在、自民党が衆議院と参議院で過半数の議席を占めているため、日本の政治ルールに則り、自民党の新総裁が日本の新首相となる。

 昨年9月以降、日中関係は、台湾や国境問題など中国の内政に関わる菅政権の一連の否定的で誤った慣行により、一定の後退を見せている。

 現在、自民党総裁選が開票され、日本に新しい首相が誕生したことで、日本の新政権が対中政策を調整し、日中関係の好転が期待されるとの見方がある。

 しかし、現在のゲームのような米中関係が続き、日本が米国の戦略的展開に密接に従っていることを背景に、日本政府の対中政策はあまり調整されず、日本の政権交代にもかかわらず、米国に密接に従い続けるものと思われる。

 実際、菅首相が退任間際に日米印豪4カ国安全保障対話(QUAD)に出席するためにアメリカに行ったのもそのためである。

 しかし、自民党総裁選の後は、自民党の親中派と反中派の勢力の入れ替えが行われる。

 自民党総裁選後、日本の政界で最も著名な中国寄りの政治家である二階俊博幹事長が完全に退任する。

 これは、日中関係の健全な発展にとって大きな損失であることは間違いなく、日中の重要なコミュニケーションとエンゲージメントのチャネルを奪うことになる。

 第二に、二階俊博幹事長が退任することで、自民党内の反中勢力の横暴さが増すことになる。

 この1年間、自民党内では中国に対する様々な否定的な提案が頻繁に出てきたが、これらの提案の多くが日本政府の中国に対する正式な決定事項にならないのは、最高責任者としての二階俊博氏の妨害工作があったからである。 二階俊博氏の退任後、自民党内の反中の傲慢さがさらに増すことが予想される。

「弱い総理」が日本の政治の舞台に立つ

 河野太郎氏、岸田文雄氏、高市早苗氏のいずれが首相に選ばれても、自民党内に強力で強固な派閥の支持がないため、自民党の野党に抑えられる可能性の高い「弱い首相」となってしまいる。

 その意味では、河野政権、岸田政権、さらには高市政権が将来的に中国との関係を改善しようと思っても、自民党内の反中勢力に阻まれる可能性が高い。

2019年9月11日、閣僚として当時の安倍晋三首相(前列中央)と記念撮影をする高市早苗司氏(右端)。 写真/新華社  略

 日本では、9月末の自民党総裁選の後、10月には「政権交代選挙」と呼ばれる衆議院選挙が行われる。

 日本の世論や自民党、特に草の根の議員の意思を踏まえれば、最終的には河野太郎氏が新総裁に選出される可能性が高く、河野氏の中国関連の発言を踏まえれば、河野政権は今後も現在の対中政策を継続し、さらに強化する可能性もあると予想される。

 元内閣官房長官であり、「河野談話」の著者である河野洋平氏の息子として、1963年に生まれた河野太郎氏は 外務大臣、防衛大臣などの主要閣僚を歴任し、自民党総裁選にも何度か立候補した自民党の重鎮である。

 太郎氏は防衛大臣在任中、日本近辺にいる中国の戦闘機を阻止するために、しばしば日本の軍用機の緊急出撃を命じた。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同氏を、中国を「脅威」と言及した最初の日本政府高官の一人として紹介している。 また、河野太郎氏は外務大臣在任中、「中国脅威論」を常日頃から口にしていた。

 河野太郎氏は、今年9月に個人的な政治的見解を宣言して出版した著書「Moving Japan Forward」の中で、"日米同盟をベースに、中国の軍事活動に対抗する組織の構築を検討すべき "と提言している。

 河野太郎は、9月10日の自民党総裁選出馬表明の記者会見で、東シナ海や南シナ海での中国の行動を「覇権主義」とまで言い切り、当選後は日米同盟を強化し、欧米と協力して中国に対処すると述べた。

 太郎氏の中国関連の政策発言はあまり多くはないが、日米同盟を深化させ、米国のアジア太平洋地域への戦略的展開に引き続き積極的に協力し、「自由で開かれたインド太平洋」の概念を積極的に推進するという河野政権の中国政策の今後の方向性を基本的には示すことができる。

 河野太郎氏は「中国の軍事活動に対抗する組織」の設立を提案しているが、日本は世界の主要な政治勢力ではないため、河野政権は今後も日米印豪の4者間安全保障対話(QUAD)への積極的な参加に力を注ぐことが予想されている。

 このような観点から、河野太郎氏が政権を握っている場合、日中関係は低迷を続ける可能性が高き、ポジティブな改善の可能性はより限定的であると考えられる。

日本政府はおそらく現在の対中政策を維持するだろう

 しかし、河野太郎氏が歴史問題であまりネガティブな動きをしないと予想されることは注目に値します。

 ひとつには、河野氏の父親である河野洋平氏が有名な「河野談話」を発表し、慰安婦問題の存在を認め、日本政府の名のもとに心からの謝罪を表明したことがある。 河野太郎は洋平の息子として、歴史問題に対する父の立場や態度を無視することはなかったであろう。

 一方で、太郎氏はこれまで靖国神社に対しては無関心だった。 2009年9月に行われた自民党総裁選の討論会で、太郎は靖国神社に代わる国立の追悼施設の設立に賛成し、候補者となった。

 また、河野太郎氏は首相の靖国神社参拝に常に反対しており、大臣在任中は靖国神社を参拝していない。

 そのため、首相になっても靖国神社に参拝することを明らかにしている高市氏のように否定的な発言はせず、少なくとも慰安婦などの歴史問題に関しては客観的な歴史を否定するような不条理な発言はしないと予想される。

 また、河野太郎氏に加え、自民党の幹部や閣僚としての経験を持つ岸田文雄氏も一定の確率で当選の可能性がある。

 1957年広島生まれの岸田文雄は、外務大臣や自民党政務官を歴任し、池田勇人という日本の総理大臣を輩出した自民党内の著名な岸田派のリーダーでもある。

 岸田文雄は、安倍内閣で外務大臣を務めた際、日中関係の改善を積極的に推進し、中国に対する政策の考え方も自民党の「タカ派」とは異なるものが多かった。

安倍晋三と高市早苗。 写真/新華社通信  略

 しかし、今回の自民党総裁選では、岸田文雄氏がいつもとは逆に中国に対して厳しい考えを打ち出している。 例えば、岸田文雄は9月13日の記者会見で、中国をターゲットにした外交・安全保障政策を発表した。

 岸田文雄氏の対中政策も河野太郎氏と同様に非常に厳しいものであるが、河野氏とは異なり、岸田氏は「人権」をテーマにした特別顧問を総理大臣に設置することを提案したが、これは日本の政治では全く前例のないことである。

 したがって、岸田氏が政権を取れば、国境やチベットなど中国の内部問題では米国に協力し、中国の人権問題では発言することになるだろう。

 岸田氏は今後、首相として靖国神社に参拝するかどうかを明らかにしていないが、自民党の岸田派であり、閣僚として靖国神社に参拝した経験がないことから、意図的に自民党内の保守勢力のご機嫌をとって政権を強化しようとするのでなければ、今後、靖国神社に参拝する可能性は低いだろう。 --例えば、2012年末に安倍晋三氏が首相に就任すると、2013年には主に党の支持基盤を強化するために靖国神社を参拝した。

 河野太郎氏や岸田文雄氏が自民党総裁になっても、あるいは首相になっても、日本政府はおそらく米中ゲームの中で現在の対中政策を続けていくことになるだろう。

 もちろん、日本における新型コロナ・ワクチンの接種率の向上とともに、日本政府もアメリカに完全に盲従して中国を封じ込めるのではなく、経済の再起動に政権の焦点を移すだろう。

 したがって、このような観点から、経済・貿易協力は、今後の日中関係改善の重要なグリップとなる可能性が高いと考えられる。

記事|陳楊(遼寧大学日本研究センター客員研究員
編集部|チャン・シャオユアン
プルーフリーディング|Li Lijun