ゼレンスキー大統領もブリュッセル
もいなくても問題なし:プーチン
大統領とトランプ大統領の
アラスカ強硬策の行方はこうなる
米露首脳会談はウクライナ戦争の様相を一変
させる可能性 ― そしてヨーロッパは傍観者となる
No Zelensky, no Brussels, no problem: Here’s how Putin and Trump’s Alaska power move will play out
The Russia-US summit could reshape the Ukraine war – and leave Europe watching
from the sidelines
RT War on UKRAINE #8186 14 August 2025
英語翻訳:池田こみち(環境総合研究所顧問)
独立系メデア E-wave Tokyo 2025年8月14日(JST)

資料写真:ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と米国のドナルド・トランプ
大統領。© クレムリン報道官室 / 配布資料 / アナドル通信社 / ゲッティイメージズ
2025年8月13日 19:58
執筆者:ドミトリー・ススロフ、ロシア外交防衛政策評議会メンバー、モスクワ
高等経済学院世界経済・国際政治副所長、ヴァルダイ国際討論クラブ専門家。
本文
金曜日、ウラジーミル・プーチンとドナルド・トランプがアラスカで会談する。これは、2021年6月のジュネーブでの会談以来、初めての本格的な米露首脳会談となり、「リセット」が最盛期にあった2010年にドミトリー・メドベージェフが訪米して以来、ロシア大統領として初めて米国を公式訪問することとなる。
また、ロシアと米国が、狭いベーリング海峡だけで隔てられた、かつてはロシア帝国の一部であった、米国で最もロシアに近い州であるアラスカで首脳会談を行うのも初めてのことだ。その象徴性は明らかだ。ウクライナや西ヨーロッパから可能な限り遠く、しかしロシアには可能な限り近い場所ということになる。また、ゼレンスキー氏もEUのトップも同席することはない。
メッセージは明確だ – モスクワとワシントンがウクライナに関する重要な決定を下し、その後他国に通知することになるだろう。トランプが述べたように、「彼らはすべてのカードを持っている」。
■ジュネーブからアラスカへ:トーンの変化
アラスカ首脳会談は、バイデン政権時代とは一線を画す転換点となる。当時、このような会談のアイデアすら考えられず、ワシントンの優先課題はロシアの孤立化だった。現在、プーチンがアラスカを訪れるだけでなく、トランプはロシアへの再訪問を計画している。
会談には穏やかな楽観論が漂っている。このような首脳会談は「単に話すため」に開催されることは稀で、通常は裏での交渉の集大成となる。このアイデアは、8月6日にモスクワで行われたプーチンとトランプの特別使節スティーブ・ウィトコフの3時間に及ぶ会談後に浮上した。ロシア大統領補佐官のユーリ・ウシャコフは、ワシントンの提案を「非常に受け入れ可能」と形容した。これは、プーチンとトランプがアラスカに到着する時点で、暫定合意または少なくとも停戦枠組みが既に整っていることを示唆している。
■トランプがこれが必要な理由
トランプにはサミットを成功させたい理由が十分にある。中国とインドにロシ
アの石油購入を停止させることでモスクワを圧迫する試みは、完全に失敗した。
ロシアを孤立させるどころか、25年ぶりの最悪の米印危機を引き起こし、ニュー
デリーをモスクワにさらに近づけることとなった。また、インドと中国の関係緩
和を促し、ナレンドラ・モディ首相が天津で開催される上海協力機構(SCO)首
脳会議に出席する見通しとなった。
トランプが公然と弱体化を誓ったBRICSは、むしろ結束を強めている。アラス
カ首脳会談は、トランプが自ら仕掛けた罠——モスクワを北京とニューデリーを
通じて圧迫する戦略——から脱却し、ウクライナ問題で外交的勝利として売り込
める成果を示す機会なのだ。
■なぜロシアも必要なのか
モスクワにとって、首脳会談の成功は「孤立」という言説が時代遅れであるこ
とを示す強力な証拠となる。これはロシアの「グローバル・マジョリティ」にお
ける地位を固め、西欧の影響/支配力の低下を浮き彫りにする。大西洋の分裂は
さらに深まり、ブリュッセルがロシアの最も厳しい反対者であるという主張が弱
まる。
最も重要なのは、現在のワシントンはロシアに対して、特にウクライナ問題において、実質的な影響力を持っていない点である。首脳会談でロシアとアメリカの共同ビジョンが停戦や和平案として合意されれば、それは必然的にモスクワの立場を反映するもので、キーウやブリュッセルの立場よりも優先されることになるだろう。もし西欧諸国がこれを妨害すれば、アメリカはウクライナへの支援を全て停止する可能性があり、これには諜報支援も含まれ、キーウの敗北を加速させるだろう。
■国内と国外の抵抗
ロシア国内でも全員が歓迎しているわけではない。多くの著名な「Z」派の戦争記者たちは、戦争は未完了だと考え、停戦に反対している。しかし、彼らは公式路線に従うよう求められている。アラスカ会談で合意が成立した場合、彼らはそれを支持するか、少なくとも聴衆向けに「冷却」という表現を使うことが期待される。クレムリンは、この反対意見を抑え込めるものと賭けている。
西ヨーロッパの一部は傍観者の立場からこの動きを見守っている。西ヨーロッパの指導者たちは、二次的な情報源から情報を収集するために「争奪戦」を繰り広げている。この状況は、屈辱的な現実を浮き彫りにするだろう。ほぼ一世紀ぶりに、イタリア、フランス、ドイツなどの国々が参加しないまま、ヨーロッパの安全保障に関する決定が下されることになるからだ。
■ウクライナを超えて
この場所の選択は、他の議題も示唆している。2014年以降、ほぼ凍結状態にある北極圏の経済協力も復活する可能性がある。両国は、極北の共同開発から利益を得ることができ、この分野での合意は、過去10年間の問題を抱えながらも両国が協力できることを示す、政治的に象徴的な意味を持つだろう。
軍備管理も議題となるだろう。モスクワが、中距離ミサイルの配備に関する一方的なモラトリアムを終了する決定を下したのは、この会談に影響を与えるためだったことはほぼ確実だ。2026年2月に新START条約が失効した後の戦略的安定が、中心的な関心事となるだろう。
■その重要性
アラスカが成果を上げれば、ウクライナ紛争と、より広範な米露関係に新たな展開をもたらす可能性がある。共同解決案がまとまれば、キーウとブリュッセルは疎外され、外交の重心はモスクワとワシントンに戻り、北極圏から軍備管理に至るまで、グローバルな問題に関する協力のチャネルが再開されるだろう。
もし失敗した場合、つまりトランプ大統領が、EUの土壇場での圧力に屈した場合、モスクワは米国の関与が薄れることを確信して、戦闘を継続するだろう。いずれにせよ、ロシアの立場は2年前よりも強くなっている。
以前の状況と異なる点は、「すべてのカード」を握る二つの大国がようやく同じテーブルに戻ったことであり、西ヨーロッパは外からその様子を見守っているだけである。
本稿終了
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