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「テヘランではパニックは
起きていない」:ロシアの専門家
がイスラエル空爆の夜を語る

ミサイルが落下する中、BRICSの協議は続く ―
ロシアのアナリストがイランの首都で見聞きしたことを語る

‘No panic in Tehran’: Russian expert recounts night of Israeli airstrikes. BRICS talks go on as missiles fall ? a Russian analyst shares what he saw and heard in the Iranian capital
kommersant / PRAVDA en

PRAVDA en War in UKRAINE #7712 16 June 2025

英語翻訳・青山貞一(東京都市大学名誉教授)
独立系メデア E-wave Tokyo 2025年6月17日(JST)

kommersamt


2025年6月16日 15時54分(GMT)

本文


 「慌てる必要はない。皆、自分の仕事に取り組んでいるだけだ。
。」

 現在テヘランに滞在しているロシアの外交政策専門家、アドラン・マルゴエフ氏は、イスラエルによる軍事施設および核施設への劇的な空爆後のイラン首都の雰囲気をこのように描写した。

 テヘラン北西部のホテルで、ロシアの学者らと共にBRICS関連の会議に出席しているマルゴエフ氏は、モスクワ紙コメルサントのエレナ・チェルネンコ記者の取材に対し、現地で起きている出来事、イランの想定される対応、そして米国との核交渉が決裂する可能性について、冷静かつ明確な見解を示した。

エレ・チェルネンコ(EC):私の理解では、あなたは現在ロシアの専門家グループと共にテヘランにいるとのことだが、そこで何をされているのか?

アドラン・マルゴエフ:我々は、BRICSとロシア・イラン戦略的パートナーシップに関するイラン側との合同会議に出席している。我々の通常の業務は、イラン側に二国間および多国間協力の機会を伝え、二国間および多国間関係における問題点を議論し、様々なメカニズムを通じてこうした協力を強化する方法に焦点を当てることだ。

EC:イスラエルがイランへの攻撃を準備していることは事前に分かっていた。何か危険を感じたか?何か警告を受けた人はいたか?

AM:いいえ、全ては正常に進み、今も続いている。イラン人は、攻撃や破壊工作のリスクが常に存在するという事実に慣れている。イラン側から私たちの会議に出席した一般参加者の一人(責任者ではないことを強調しておくが)は、「私たちは長年帝国主義と戦ってきたので、あらゆることに慣れている」と述べた。一般的に、イラン人は友好的で冷静な態度を保っている。私たちはこれまでと同じ姿勢で活動を続けていく。

EC:あなたの所在地はどこですか?

AM:私たちはテヘラン北西部のホテルに滞在している。会議もここで開催されており、本日も続く。

EC:変更はないか?

AM:;ただし、今夜市内で予定されていた文化イベントは中止になった。

EC:昨夜何が起こったのか教えて欲しい。

AM:全てが始まった時、私たちは眠っていた。代表団のリーダーの一人が最初に目を覚ました。午前3時頃、彼女は攻撃による爆発音と作動した防空システムの音を聞いた。二度目の攻撃は午前6時に発生した。言うまでもなく、私たちはその時すでに起きていた。何が起こっているのかを知るためにニュース報道を追っていた。その中で、空域が閉鎖されたことを知rr。帰りの便は日曜日に予定されている


EC:陸路で緊急に国外へ出ようと考えているのか?

AM::いいえ、現段階ではそれは過剰反応であろう。

EC:では、あなたや現場の他の人たちはパニックになっていないのか?

AM:私たちが見ることができる範囲内ではパニックは起きていない。


ロシア外務省MGIMO国際問題研究所研究員、アドラン・マルゴエフ氏。

EC:しかし、状況は昨年イスラエルとイランの間で起きた砲撃よりもはるかに深刻に見えるが?

AM:はるかに深刻だ。今回のエスカレーションは極めて重要な時期に発生した。イランとアメリカの核協議は4月から続いており、次回協議は日曜日にオマーンで予定されていたからだ。協議が行われている最中にイスラエルが攻撃を仕掛けるとは予想していなかった。しかしながら、今となっては協議が継続されるかどうか疑問だ。

EC:アメリカ当局者の発言から判断すると、アメリカはイスラエルの計画を知っていたようだが。

AM:いいえ、しかし彼らはそのような事態が発生する可能性に備えていた。彼らは地域に駐在する外交官に警告を発し、その他にもいくつかの措置を講じた。

EC:イランからはどのような反応を期待したか?

AM:最近、イランの対応は、2024年4月のイスラエルの攻撃に対する「真の約束」作戦や、2024年の前回のイスラエルの攻撃に対する対応とは異なると聞いた。

EC:はい、かなり抑制されていた。

AM:はい、事態のさらなるエスカレーションを避けるための措置であった。イラン指導部が今どう反応するかは分からにが、近いうちに分かるであろう。

EC:ドナルド・トランプ米大統領は、米国がイランの核開発計画をめぐって合意に達することができるかどうか疑問視している。この協議が失敗に終わったことについて、もう話し合ってもいいのではないか?

AM:振り返ってみると、特にウラン濃縮に関して、イランと米国の体制的な立場は非常にかけ離れていたため、交渉の結果は予測可能だったと言うのは簡単だ。

 だが、我々はトランプ政権内の動向を注視し、どのチーム、あるいはどの学派が勝利するかを見守ってきた。イランにおける限定的なウラン濃縮は、他の加盟国と同様に核拡散防止条約(NPT)加盟国であるイランの当然の権利となるのか。それとも、NPTにもかかわらず、イランが独自にウラン濃縮活動を行うことは認められないのか。トランプ大統領、J・D・ヴァンス副大統領、そして米国交渉団長のスティーブ・ウィトコフは、イランが平和目的でウラン濃縮を行う権利を行使し続けることができると想定し、概ね穏健な姿勢をとってきた。しかし、マルコ・ルビオ国務長官率いる反対派は、イランにおけるウラン濃縮はあり得ないと表明し、複数回の交渉の結果を事実上覆した。残念ながら、この強硬路線が勝利した。

 そして、数ヶ月にわたる水面下での協議の中で、イラン側は、交渉の新たな段階を迎えるたびに、アメリカ代表団はまるで以前の段階がなかったかのような立場で臨むことを確認した。スティーブ・ウィトコフ氏は、マスカットやローマ(交渉もそこで行われていた - コメルサント紙)を去る際には、イラン側の立場に対する合理的なアプローチを提示していた。しかし、ワシントンでの協議は毎回、その流れを覆した。次の交渉段階では、彼はイランにおけるウラン濃縮はあり得ないと改めて強調した。これは当然のことながら、イラン側を苛立たせた。それでも、彼らは交渉プロセスに尽力した。アメリカでは、危機の平和的解決に向けた合理的かつ現実的なアプローチが優勢になるだろうという期待があった。しかし、ご覧の通り、それは実現しなかった。

EC:イランは、イスラエルが攻撃した場合、地域内の米軍施設を標的にして報復する可能性があると警告している。テヘランがそのような行動を取ると予想するか?

AM:良い質問だ。テヘランがどのような決断を下すかについては推測を避けたいと思う。しかしながら、アメリカを挑発してエスカレーションに引き込むことは、イランにとって利益にならないように思われる。したがって、イスラエルの標的には強硬な対応、アメリカの標的にはより穏健な対応が予想される。おそらく、イランのカセム・ソレイマニ将軍暗殺後のイラクの米軍施設へのイランによる攻撃のような展開になるであろう。この攻撃では約100人のアメリカ人が脳震盪を起こしたが、死者は出なかった。

 地域戦争を回避するという観点からすれば、イスラエルに強硬な対応を示すことは賢明だろうが、米国がそのような作戦を容認するという暗黙の合意とは切り離して考えるべきだ。大きな問題は、これが核兵器や軍事インフラへの攻撃の応酬に留まるのか、それとも民間人を標的とした攻撃に発展し、大規模な地域戦争につながる可能性があるのか??ということだ。

EC:ロシアとイランは最近、戦略協力条約に署名した。攻撃の際にどちらか一方が介入する義務を負う条項はないが、両国は依然として互いを同盟国とみなしている。イランはロシアからどのような反応を期待しているのか?

AM:公の場で、あるいは非公の場で発言されていることから判断すると、イランはイスラエルの行動に対して可能な限り厳しい非難を受けると予想しているであろう。また、ロシアと中国が国連安全保障理事会や国際原子力機関(IAEA)といった様々な国際フォーラムでこの問題を提起することも予想している。さらに、イランはロシアとの軍事技術協力、特に追加防衛装備の供給にこれまで以上に関心を寄せると予想されるが、これは公の場で議論されるべきことではない。

この記事は最初にコメルサント紙に掲載され、RTチームによって翻訳・編集されました。

モスクワの日刊紙コメルサント特派員エレナ・チェルネンコhttp://eritokyo.jp/independent/aoyama-column1.htm

本稿終了