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フョードル・ルキヤノフ:
ヴァンス副大統領はアメリカ人が
本当に考えていることを言っただけ

EUは冷戦の継続を望んでいるが、ヴァンス副大統領
のミュンヘン演説は大西洋間の離婚を意味する
Fyodor Lukyanov: Vance only said what Americans really think. The EU needs the Cold War to continue, but the US VP’s Munich speech signals a transatlantic divorce
RT
War on Ukraine#7073 14 Fubruary 2025

Z英語翻訳・池田こみち(環境総合研究所顧問)
独立系メデア E-wave Tokyo 2025年2月16日(JST)

2025年2月14日、ドイツ・ミュンヘンで開催された第61回ミュンヘン安全保障会
議で演説する米国の副大統領J.D.ヴァンス。 © Getty Images / Getty Images

15 Feb, 2025 21:20

筆者:フョードル・ルキヤノフ(Fyodor Lukyanov) ロシア・イン・
グローバル・アフェアーズ編集長、外交・国防政策評議会幹事会
会長、バルダイ国際討論クラブ研究部長であるフョードル・ルキ
ヤノフ氏による寄稿。




本文


 金曜日に行われたミュンヘン安全保障会議におけるJ.D.ヴァンス米副大統領の画期的なスピーチは、さまざまな要因に起因するものと考えられている。復讐の行為だったという意見もある。西ヨーロッパの指導者たちは長年、ドナルド・トランプとその支持者たちを非難してきたが、いつか自分たちの発言に責任を取らなければならない日が来るかもしれないとは考えもしなかった。そして今、その報いがやってきた。EUは困惑し、こう問いかけている。「なぜ我々なのか?」と。

 しかし、個人の不満の向こうには、より深いイデオロギーの相違が存在している。多くの点で、ヴァンスのヨーロッパ人批判は、何世紀も前に新世界に移住した人々が旧大陸に対して行ったのと同じ非難を繰り返している。すなわち、専制、偽善、寄生である。ヨーロッパの政治的伝統を拒絶したことが、300年前にアメリカ合衆国の思想的な基盤を築いた。真の民主主義とは何かという論争が、今やアメリカ国内の議論から大西洋を挟んだ論争へと発展し、その結果が未来を形作ることになる。

 しかし、ヴァンスの演説の最も重要な要素は、個人の性格やイデオロギーの対立を越えたものだ。それは、世界政治における根本的な変化を反映している。今日、重要な問題は、冷戦が20世紀の枠組みの中で最終的に終結すべきか、それとも無期限に継続すべきか、という点である。西ヨーロッパは後者、つまり、かつての敵対国を平和的に統合できなかったという理由から、後者であることを主張している。一方、米国は前進する準備ができているように見える。

 この変化はトランプ大統領の功績でもなく、ヴァンス長官の功績でもなく、むしろ米国の優先事項の変化によるものである。欧州からの軸足の転換はジョージ・W・ブッシュ政権下で始まり、それ以降のすべての大統領の下で継続されてきた。トランプ大統領は前任者が口に出さなかったことを口にしただけである。

 西欧諸国にとって、冷戦時代のイデオロギー的・地政学的な枠組みにしがみつくことは、生き残りをかけた戦いである。旧来の秩序を維持することは、EUが世界情勢における中心的な存在であり続けることを可能にし、さらに重要なことには、すでに緊張状態にあるEUの内部結束を維持することにもなる。

 しかし米国にとっては、冷戦時代の構造を手放すことは、現在および将来の課題、すなわち中国、太平洋、北米、そして北極圏に焦点を当てるチャンスとなる。西ヨーロッパは、これらのどの分野においても自らの不可欠性を証明することはできないが、高い代償を伴う妨害行為を行うことはできる。

 これは、不快な結論につながる。EUは、消極的な米国政権でさえ傍観できないレベルまで緊張を高めることに既得権益を持っている。今、本当の問題は、旧世界が事態をその方向に押し進める能力があるかどうかだ。




本稿終了