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フョードル・ルキヤノフ:
トランプ大統領とプーチン大統領の電話会談
は世界のパワーシフトの始まりを意味する
米露関係は「工場出荷時の設定」に戻るが、
ここで重要なのは、欧米の行き過ぎた行動の終焉である

Fyodor Lukyanov: Trump’s call with Putin marks a shift in global power. US-Russian relations will now return to their
‘factory settings’, but the key here is the end of Western over reach

RT War on Ukraine#7050 13 Fubruary 2024
ZGLY英語翻訳・池田こみち(環境総合研究所顧問)i
独立系メデア E-wave Tokyo 2025年2月14日(JST)

ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチン露大統領。
© Sputnik/Alexey Nikolskiy

13 Feb, 2025 11:56

著者:フョードル・ルキャノフ氏(ロシア・グローバル・アフェアーズ編集長、
外交防衛政策評議会幹部会議長、ヴァルダイ国際討論クラブ研究ディレクター)

フョードル・ルキャノフ氏 RT

本文


 待ちに待ったウラジーミル・プーチンとドナルド・トランプの電話会談がついに実現し、地政学上の情勢に衝撃が走った。しかし、誰もが勝利や絶望に浮かれる前に、実際に何が起こったのかを認識することが重要である。ロシアと米国の関係は、単に自然な状態に戻っただけである。すなわち、戦略的競争、利害の対立、世界観の根本的な相違という状態に戻っただけである。

 米国は数十年にわたり、幻想を追い求めていた。それは、まずインセンティブ、そして後に強制によって、ロシアを自国のイメージ通りに作り変えるというものだった。ワシントンは、モスクワを「リベラルな国際秩序」に順応するパートナーに作り変えることができると信じていたが、それは幻想に過ぎず、現実が突きつけられるまで、その幻想は崩れることはなかった。ロシアは決して作り変えられることはないのだ。一方、モスクワは長年にわたり、共通の基盤を見つけ、自国の政策を調整し、実効性のある共存関係を築こうとしていた。その試みも10年前に終わった。

 1980年代後半の冷戦体制の崩壊は歴史的な例外であり、多くの人が恒久的な変革と誤解した偶然の産物であった。西側の「勝利」という物語は時期尚早であった。歴史は終わるものではなく、進化するものである。時が経つにつれ、一極支配の世界という幻想は維持が難しくなり、世界の勢力バランスは変化し始めた。旧体制から利益を得ていた人々はそれに固執し、不利益を被ったと感じていた人々は強く抵抗した。ウクライナは、この闘争における不幸な断層線となり、相容れないビジョンがぶつかり合う戦場となった。

 今起こっていることは、新しい時代の始まりではなく、古い時代の必然的な修正である。米国は、トランプ大統領の下でも、大国間の競争が再び国際政治の決定的な特徴であることを認識している。しかし、イデオロギーの対立が地政学上の利害を覆い隠していた過去数十年とは異なり、新たな競争はより現実的であり、普遍的価値の仮面を被ってはいない。リベラルな世界秩序はもはや行動指針ではなく、過去の遺物である。

 この変化は平和を保証するものではなく、対立のリスクを排除するものでもない。しかし、この変化は、ある種の合理性を再びもたらす。これまでしばしば無謀で逆効果な行動を招いてきた欧米のイデオロギー的な熱狂は、より冷静な力と利害の評価へと移行しつつある。焦点は、一方を屈服させることではなく、具体的な利益を交渉することへと移行しつつある。

 一方、ロシアは、この新しい世界秩序を形成する上で重要な役割を担う国として位置づけられている。1990年代の戦略的幻想は、西洋の力の限界を認める現実主義に取って代わられた。いわば「工場出荷時の設定」への巻き戻しは、安定を意味するものではない。それは、強さ、影響力、そして計算された外交が歴史の流れを決定するという、グローバルな政治の根本原則への回帰を意味する。

本稿終了