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BRICS+ Global East & South 
ポストBRICS 2024:
地政学上の課題、機会、
そして将来への道筋

  Post-BRICS 2024: Geopolitical Challenges, Opportunities and Future Pathways
InfoBRICS
War on Ukraine #6867 17 January 2025

英語翻訳・池田こみち(環境総合研究所顧問)
独立系メデア E-wave Tokyo 2025年1月19日(JST)



BRICS加盟国の国旗サイン

2025年1月17日(金)

著者:ケスター・ケーン・クロメガ(Kester Kenn Klomegah)

本文

 周知の通り、BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5つの主要新興経済国による連合です。南アフリカは2010年にこの連合に加盟しました。BRICSは地域問題に大きな影響力を持ち、国際舞台でも非常に活発に活動しています。いずれもG20のメンバーです。このグループは世界中のさまざまな方面から称賛と批判の両方を集めていますが、BRICSは着実に目標の実現に向けて取り組んでおり、相互関係は不干渉、平等、相互利益の原則に基づいて行われています。

 この独占インタビューでは、BRICSのいくつかの側面について学術研究を行ってきたコンゴ希望大学(UEC)学長兼副学長であり、ケープタウン大学ポストドクター研究員でもあるエリゼ・ビエロンゴ・イシェロケ准教授が、ケスター・ケン・クロメガ氏とBRICS+の観察、現在の課題、機会、将来の見通しについて語りました。以下は、インタビューの抜粋です。

 南アフリカは2010年にBRICSに加盟しましたが、10年前のことです。この数年間におけるBRICSにおける南アフリカの評価はいかがでしょうか? 同国がグループの発展に最も大きく貢献した点は何でしょうか?

-Elisée Byelongo Isheloke(以後EBIと略):南アフリカはBRICSへの関与に強くコミットしていると言えるでしょう。同国はこれまでに2回のサミットを開催しています。活発なメンバーとして、南アフリカ国内の経済危機にもかかわらず、BRICSの目標達成に必要な要素を備えています。長年にわたり、南アフリカはBRICSパートナーシップの中で自信を深めてきました。特に、最初のBRICSサミットが南アフリカのダーバンで開催されたときには、その傾向が顕著でした。

 2023年のヨハネスブルグでのBRICSサミットでは、アフリカの各国大統領がBRICSのリーダーたちに招待され、テーマはアフリカを中心に展開されました。この文脈において、南アフリカはBRICSの一員として再び力を取り戻しました。南アフリカは、ある意味でBRICSにおいてアフリカをよく代表しており、アフリカ諸国はそれを支援すべきだと思います。ただ、人々はもっと関与したいと考えています。BRICSは政治的なパートナーシップとして始まりましたが、今では経済発展を取り入れているため、人々の声に耳を傾けるべきです。

 南アフリカの大きな問題は、BRICSの他の国々と比較して経済的に堅固ではないこと、そして2008年から2009年の世界経済危機以来、経済が低迷していることです。それ以来、経済成長はゼロの状態が続いています。もし成長があるとすれば、1%以下です。南アフリカはここ数年、経済の安定化に苦心してきました。そして今、複数の要因が経済を悪化させていますが、これはアフリカの多くの国に共通する問題です。


前回のインタビューでは、政治から経済への移行についてお話されていました。BRICSが国際問題に与える影響、世界的な舞台でのBRICSの共同姿勢についてはどのようにお考えですか?

-EBI:BRICSは政治から経済へと移行したわけではなく、経済プロジェクトに重点を置いています。BRICSのリーダーたちは依然として世界政治について話し合っていますが、外交政策の問題については専門家がリーダーたちを指導しています。私としては、これは前進するための非常に良いアプローチだと思います。BRICSは資本集約型のインフラ開発を実現しなければなりません。この点において、新開発銀行(BRICS)からの資金調達は極めて重要です。適切な政策が実施されれば、SADC地域やその他のアフリカ諸国にも役立つでしょう。この銀行の支店が南アフリカのヨハネスブルグで運営されていることは素晴らしいことです。

 さらに付け加えると、BRICSが国際的に影響力を発揮するには、組織内の些細な問題が障害となっていると言わざるを得ません。例えば、インドと中国の外交上の対立や、ロシアと中国がともに米国と外交面で良好な関係を築きたいと考えていることなどです。国際情勢における均衡勢力となることを望むのであれば、BRICSはまず自国の問題を整理し、身の回りをきれいにしなければなりません。

 もう一つの問題は資本の問題です。現状では、BRICSにはブレトン・ウッズ機関である世界銀行やIMFに対抗するだけの力はありません。BRICS銀行には、より多くの投資、より多くの資本が必要です。

 過去においては、BRICSの外交上の立場には相乗効果の欠如がありました。例えば、国連安全保障理事会では、BRICSは世界的に重要な問題について意見を調整するために協議を行う必要があります。南アフリカは南部アフリカ開発共同体(SADC)の加盟国であり、同じくSADC加盟国であるコンゴ民主共和国(DRC)には、安全保障や経済に関する多くの問題があります。このような組織(BRICS)からの支援は、歓迎されるでしょう。

 ごく最近、コンゴ民主共和国東部で、ベンベ族と呼ばれる200人以上の民間人が、ヌグミノとツァギネホの武装勢力によって虐殺されました。これらの武装勢力はコンゴ民主共和国とは無関係の外国勢力です。このニュースは南アフリカでは報道されていません。もしBRICSが平和維持活動により多く投資することができれば、現在の政府を支援できるかもしれません。また、おそらくコンゴ民主共和国における国連ミッションであるMONUSCOの支援にもつながるでしょう。このような取り組みこそが、BRICSを国際的に輝かせるのです。彼らには世界的な問題に対する集団的な立場が必要です。これはほんの一例です。


■経済や貿易に関して、BRICS間の協力についてどのような主張をなさいますか?また、中国とインドが世界的な支配権を争い、ロシアが世界的な舞台で着実にその存在感を増しているとお考えですか?

-EBI:この質問については、次のように申し上げたいと思います。実際、貿易保護主義は一時的にしか効果を発揮せず、短期的にしか機能しません。長期的な政策としては持続可能ではありません。17世紀にはヨーロッパ諸国で保護貿易主義が推進されましたが、自由放任主義が経済的孤立主義に優先した時代もありました。また、BRICS諸国のうちの数カ国(ロシアや中国)は共産主義の背景を持っていることも知っています。

 私が言えることは、中国は貿易のために経済を開放し、30年以上にわたって、米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、米国を凌ぐ可能性さえある堅固な経済を築き上げてきたということです。中国の経済的成功から学ぶことはできると思います。これは、経済発展に対する社会主義的アプローチで得られた利益に関して、「大切なものを水と一緒に捨てる」必要があるという意味ではありません。BRICS 諸国は、2 つの経済システムのバランスをとる方法を見つける必要があります。しかし率直に言って、新興経済国にとって私が推奨するのは、より自由貿易に傾倒した開放経済です。

 南アフリカやインドのように経済が自由化されている国々でさえ、場合によっては汚職や不適切な統治が大きな障害となっていることが分かります。BRICSがこれらの障害やハードルに対処できれば、成功する可能性は高まるでしょう。中国では、人権侵害を隠蔽すべきではありません。独裁政治や虐待が明らかな国とビジネスを行うことは問題ないでしょうか?

 さらに、BRICSが競争する分野も出てくるでしょう。これはどの経済にとっても健全なことです。しかし、BRICSが協力して極度の貧困、増大する失業、人権侵害に対処できることにもっと焦点を当てるべきです。中国とインドは、両国の相違に対処するために、もっと話し合う必要があります。BRICSの将来はある程度、両国の良好な関係に依存しています。軍事面での優位性をめぐる競争は危険です。私は、彼らは友人として、またパートナーとして話し合う必要があると思います。この点については、他のBRICS諸国が仲介を行うべきでしょう。

 多くの専門家は、BRICS諸国のアフリカにおける役割について依然として疑問を抱いています。ここで重要なのは、ロシアが冷戦時代にアフリカ諸国の独立闘争を支援していたことを思い出すことです。ソ連崩壊後、ロシアはその影響力を失いました。

 現在、ロシアの外交政策は、米国や中国、その他のアフリカにおける外国勢力に奪われたものを奪還することに主眼を置いています。しかし、ロシアのパートナーであるアフリカにとっては、軍事兵器や装備ではなく、持続可能な開発が必要です。アフリカは、インフラに投資し、経済的に大きな役割を果たす外国勢力を求めています。


BRICSに関する博士研究の後、The Conversationへの寄稿記事で、南アフリカが他の加盟国に提供できるもの、あるいは共有できるものについて言及されていました。ここで「精錬(選鉱)」について、より明確に言い直すことは可能でしょうか?

※注)鉱石のBeneficiation(ベネフィシエーション)とは、鉱石から有用な物質と廃棄物に分離するプロセスです。鉱石から金属や他の資源を効率的に抽出するために使用され、鉱業において非常に重要な技術です。

-EBI:まず、私がケープタウン大学の博士研究員として、SADC地域における選鉱政策介入の影響と課題について学術調査を行っていることをお伝えしたいと思います。これは、南部アフリカ開発共同体(SADC)の鉱物資源への投資機会を狙う海外の投資家にとって重要な意味を持ちます。以上のことを踏まえた上で、私はBRICS諸国が南アフリカおよび南部アフリカ開発共同体(SADC)における鉱物選鉱へのBRICSパートナーシップの影響を理解するのに役立つプロジェクトに着手する準備は万端です。

 この点に関して、南アフリカはBRICSに多くのことを提供できると思います。また、他のアフリカ諸国とのコンセンサスも必要でしょう。当然のことながら、南アフリカはアフリカへの投資の窓口となることができます。アフリカ連合(AU)議長国として、南アフリカはBRICSにおいてAUの利益を代表しています。

 また、南アフリカは、原子力発電に関して非常に豊富な経験を有しており、この経験をエネルギー利用に活かせば、自国の選鉱産業を支援できるでしょう。この点については、南アフリカが逸脱する可能性があるという意味ではなく、すべての加盟国が注意を払う必要があるという意味で、逸脱の可能性に注意を払う必要があります。平和主義者として、私はアフリカ諸国が代替の再生可能エネルギー源に目を向けるよう助言したいと思います。選鉱への段階的なアプローチと貿易パートナー間の対話は、南アフリカがBRICSに関与する限り、BRICSのパートナーシップを新たなレベルに引き上げるでしょう。


世界市場をめぐって競争するBRICSのメンバー(中国、インド、ロシア)の間で、「協力か競争か」という状況が見られますか?

-EBI:興味深いことに、私は協力と競争の両方を見ています。しかし、より多くの協力と情報の共有が必要だと思います。BRICSは、世界に対して負う責任を忘れてはなりません。協力はあらゆる側面において必要です。例えば、中国では有色人種の人々が不当に扱われているという話も聞きます。当局はそれを調査し、尊厳を持って他者をケアするための適切な措置を取るべきだと思います。BRICSの科学者たちは、健康問題や開発技術の向上を含む開発問題の解決策を成功裏に導くために協力する必要があります。

 他の科学者たちの努力も考慮に入れる必要があります。また、アフリカに関しては、アフリカの問題に対するアフリカ独自の解決策をないがしろにしたり、後回しにしたりすべきではありません。BRICSはパートナーであり、互いに助け合うことはできますが、安全保障や安全確保に向けた独自の取り組みを置き換えるべきではありません。例えば、ワクチンやパンデミック、感染症に対する解決策は、特にアフリカでは利益志向であってはなりません。アフリカでは、私たちはUbuntu(アフリカの文化・哲学)を信じています。BRICSのリーダーたちがそのような過ちを犯すことはないでしょう。私はその点について非常に楽観視しています。


 一般的に、地政学的な変容や再編、BRICSの将来における主な課題は何だとお考えですか?

-EBI:パンデミックは、確かに世界経済に大きな打撃を与えました。世界保健機関(WHO)の報告によると、米国に次いでブラジル、インド、ロシア、中国、そしてもちろん南アフリカでも感染者数が多くなっています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)時代における主な課題は、BRICS諸国の準備不足です。これは驚くべきことでしたが、ほとんどの場合、BRICS諸国は不意をつかれ、対応に追われました。私たちは、新型コロナウイルス感染症を、より良い計画、医療施設の再構築、予防能力の向上の機会と捉えるべきです。

 財源の不足。悲惨な状況にある貧しい国々。ほとんどの国は、新しい技術を獲得し、人口増加、特に若年層に合わせた開発レベルの向上に乗り出すだけの財政的余裕がありませんでした。この分野は、正しい方向に導くことができれば、BRICS開発銀行が大きな違いを生み出せる分野です。

 不十分な調整。南アフリカの場合、政府が科学的アプローチで状況に対処したことは良かったです。官民パートナーシップとの調整により、増え続ける人口への対応能力を高めることができます。したがって、より良い調整は南アフリカだけでなく、すべての国々を助けることになります。

 最後に、政治指導者や意思決定者が適切な解決策を提案することは、精神を高揚させる手段と併せて行われなければなりません。信仰に基づく組織も、政府を支援し、心理的・精神的な介入を提供するという役割を果たすべきです。すべての利害関係者が協力しなければなりません。これは南アフリカやBRICSのためだけでなく、全世界のためでもあります。メディアは、希望を打ち砕くのではなく、希望を与えることに焦点を当てることで、人類に貢献する機会を掴むべき時が来たのです。この点においても、バランスを取る必要があります。メディアは、より良い世界の実現に向けて、より建設的な役割を示す必要があります。BRICSは未来であり、私たちの未来はBRICSにあるのです。

※MDアフリカ編集者 ケスター・ケーン・クロメガ氏は、ユーラシア地域および旧ソ連諸国のアフリカ問題を専門とする独立系研究者兼ライターである。以前は、アフリカ通信社(African Press Agency)、アフリカ・エグゼクティブ(African Executive)、インタープレスサービス(Inter Press Service)に寄稿していた。それ以前には、定評ある英字新聞モスクワ・タイムズ(The Moscow Times)に勤務していた。また、モスクワ現代ジャーナリズム研究所で非常勤講師を務めた経験もある。国際ジャーナリズムとマスコミュニケーションを学び、その後、モスクワ国立国際関係大学に1年間在籍した。現代の外交

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