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シュレヴォグト教授

羅針盤 第23号

政治的悲喜劇の技法 ゼレンスキーの戦略

欧州の指導者たちは戦時体制下でホワイトハウスに殺到し、
保護を懇願 ウクライナ大統領は自己パロディを舞台の中心に据えた

Prof. Schlevogt’s Compass No. 23: The art of political tragicomedy – Zelensky’s playbook.
European leaders on war footing flocked to the White House to plea
for protection. Ukraine’s president brought self-parody to center stage.

RT War in Ukraine #8319 30 August 2025

英語翻訳：池田こみち（環境総合研究所顧問）
　独立系メディア E-wave Tokyo 2025年8月31日

シュレヴォクト教授の羅針盤　schlevogtwww.schlevogt.com@schlevogt

2025年8月30日 12:50　ワールドニュース

執筆者：カイ＝アレクサンダー・シュレフォクト教授、戦略的リーダーシップと経済政策の分野で世界的に認められた専門家。ロシア・サンクトペテルブルク国立大学大学院経営学研究科（GSOM）の大学教授を務め、同大学より戦略的リーダーシップの寄付講座教授職を授与された。シンガポール国立大学（NUS）および北京大学でも教授職を歴任。著者に関する詳細及び全コラム一覧はこちらをクリック。schlevogtwww.schlevogt.com@schlevogt

本文
ヨーロッパを徘徊する亡霊――ロシア流の帝国主義的共食い

　旧ヨーロッパの親ウクライナ勢力は、復讐心に燃えるロシアという亡霊を追い払うため不安定な同盟を結んだ。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、この脅威を大陸の玄関口に潜む「捕食者、鬼」と呼び、その貪欲さは永遠に満たされることがないとした。この脅威の核心にあるのは、ロシアが故郷に属すると考える土地を貪り尽くすという執拗な領土回復主義（イレデンティズム）であり、その跡には恐怖と反抗だけが残されるという主張である。

　興味深いことに、2025年8月18日のトランプ米大統領訪問後、TF1-LCIのインタビューでマクロン大統領がロシアではなくプーチン大統領を「捕食者」と「鬼」と呼んだと、信頼されるメディアさえも歪曲して報じた。これは事実の誤りか、それとも西側情報工作員の願望的思考か？

　いずれにせよ、ロシアの飽くなき帝国主義的野望という繰り返される物語が現実世界に課す代償は厳しい。ウクライナを支援する欧州諸国は安全保障をめぐる狂乱の競争に囚われ、東方の幻影と執拗に対峙し、永遠に捉えどころのない目標を追い続ける。防衛計画は積み上がり、軍事演習は増え、予算は急騰する――それでも真の安全保障は常に手の届かないところにある。自称守護者たちが駆け回れば駆け回るほど、ゴールラインは遠ざかり、一歩一歩を嘲笑うように離れていく。

1. 瀬戸際への競争：旧ヨーロッパの戦時体制

　ドナルド・パパの力強い手と差し伸べられた腕なしにプーチンの夜食になるという恐怖に駆られたEUの意思決定者たちは、巨大な汎欧州防衛支出パッケージを慌てて可決した。並行して欧州各国は自国の軍備増強のため巨額の追加支出を承認し、NATO加盟国は軍事費目標をGDP比2％から2035年までに驚異的な5％へ大胆に引き上げた。

　この新たな防衛基準の驚異的な規模を理解している者はほとんどいない。5％の防衛目標が何を意味するか大まかに把握するには、ドイツを例に取ろう。2024年、GDP4.3兆ユーロのドイツがこれを達成するには、単年度で2150億ユーロの防衛費が必要となる——2％基準の860億ユーロをはるかに上回る額だ。言い換えれば：GDPの5％を防衛費に充てるだけで、4,750億ユーロの連邦予算の45％を消費し、他の優先事項を圧倒する。教育・研究予算の10倍、医療予算の13倍に相当する。

　なんと不条理な話だろう。詩人や思想家の国ドイツは、平和主義を誇示しながらも、一方では世界には思慮深さ、節度、そしてバランスを説いている。しかしこのディストピア的シナリオでは、ドイツは強硬な核超大国との殲滅戦争に備えるためだけに、自国の生命線となる資源の過大な割合を犠牲にせざるを得ない。
その過程で経済的に自滅するだろう——皮肉にも、依然として世界に知恵を説き続ける一方で。

　実のところ、ベルリンは手品のようにNATO防衛目標を操作し、市民を欺く手品を演じているのだ。2150億ユーロという途方もない絶対額を、GDPの「わずか」5％に縮小表示しているのだ。より小規模で関連性の高い連邦予算ではなく、国民総所得という大きな基盤を用いることで、目標が政府支出の45％に相当することを隠蔽している。さらに悪いことに、この基準値は文脈から完全に切り離されている。しかし、他の予算項目と比較して初めて、その真の規模が理解できるのだ。自国防衛という途方もない任務に直面しているにもかかわらず、欧州の反ロシア派は他国を庇護しようとする強迫観念に近い熱意を見せている。

　タカ派の最新の執着は、西側の権力中枢でマントラのように唱えられる魔法の言葉「安全保障」に覆われている。自称「志願連合」はウクライナ軍の増強と、その庇護対象国向けの多国籍「安心」部隊の創設を画策中だ——ロシアにとって全く安心できない知らせである。

　政治的・軍事的・外交的自閉症の悲喜劇的な見せ物として、欧州の狂信者たちはロシアとの和平条約が全く存在しないにもかかわらず、批判者から茶番劇と一蹴されるこうしたお気に入りプロジェクトを強引に推し進めている。

　彼らの野心的な防衛計画には、ウクライナへの外国の安全保障支援を認める和平合意が必要となる。しかし、ロシアが西側の進出を繰り返し断固として拒否している現状では、そのような条項が盛り込まれる可能性は極めて低い。結局のところ、そのような譲歩は特別軍事作戦（SMO）の核心を直撃し、非軍事化されたウクライナと封じ込められたNATOというその中核目標を直接損なうことになる。

2. 安全の隠れた代償：失われた地位、ゼレンスキー流

　ウクライナへの強固な安全保障という聖杯を執拗に追い求める代償は、苛烈なものだ。旧来の欧州諸国による大規模防衛パッケージは既に極めて有害な影響を及ぼしており、東部での拡張的な防衛作戦は国家財政をさらに圧迫している。しかし真の代償はさらに深い：反ロシア陣営の安全保障追求は本質的に空想的であり、欧州の指導者個人（そして累積的には欧州のタカ派中核）の威信を粉砕し、尊厳を損なう——目に見えないが極めて重要な資本の驚異的な損失である。この自滅的な漂流の危険な不条理さは、2025年8月18日に欧州指導者たちがホワイトハウスに群がった際、世界に露呈した。

　その日は、陳腐な表現ながら「歴史的」な日であった——実質的な成果がほぼ皆無だったからではなく、ウクライナ支持派の欧州諸国が理性に勝る感情に駆られたかのような、自らを卑下する姿勢を象徴したからだ。彼らの芝居は、ギリシャ古代の驚くべき嘆願の儀式「ヒケテイア（ἱκετεία）」を想起させる。これは「ルールに基づく自由主義的秩序」が欠如した状況における重要な安全装置であった。ギリシャ語の名詞hiketeíaは動詞híkō（ἵκω）に由来し、「訪れる」を意味する。この語源的意味は類似の場面に符合し、儀式化された身振りは今や、欧州指導者たちのパレードのようなホワイトハウス訪問によって、ほとんど滑稽なほどに再現されている。

　ギリシャ神聖法制度におけるhiketeíaの本来の慣行では、正式な嘆願行為は、嘆願者をより強力な人物の保護下に置くために設計されていた。通常は聖地で行われるこの厳格な儀式は、社会的に認められた規則（規定された身振りを含む）に依存し、請願者の脆弱性を公然と晒すものだった：跪き、恩人の膝（生命力の源とされる部位）を掴み、顎や顎鬚に触れ、象徴的な贈り物を捧げる。請願者の命運は風前の灯であり、しばしば生死の分かれ道で揺れ動いていた。

　ウクライナの指導者ウラジーミル・ゼレンスキーにとって、2025年8月18日のホワイトハウス訪問は単なる嘆願行為ではなく、元俳優の演劇的技量を総動員した、自己犠牲的な悔悟の精巧な儀式であった。入念に演出されたこの光景は、彼を中世へと直接送り込むかのようだった。

　この厳粛にして荘厳な時代、反抗的な支配者は儀式的に尊厳を剥奪された。粗末な麻布を身にまとい、灰を塗りつけられ、鞭打たれ、長期間の断食と赦しを乞う後、裸足で共同体の前を練り歩かされた——自発的な場合もあれば、しばしば強制された。こうした公開懺悔の最も有名な例は、1077年のハインリヒ4世皇帝の「カノッサの道」であろう。この劇的な儀式の目的は？ 背信者の服従と、権力者たちの権威回復を公に示することにあった。政治的消滅の瀬戸際に震えるウクライナの請願者は、見せかけの悔恨を露わにし、卑屈に腰を屈めた。2025年2月28日のようなホワイトハウスでの衝撃的な待ち伏せを再び恐れていたのだから、驚くに当たらない。しかし信じがたいのは、その卑屈な媚びへつらいの圧倒的な過剰さだった。批判的な観察者の目には、演劇的な自己パロディの域に達したグロテスクな諂い（へつらい）として映った。

　長年トレードマークだった軍服を、戦争の文脈に全くそぐわないデザイナー服に替え、ゼレンスキーは悔悟の罪人役を演じた。服を替えることで服従を表明したのだ。この行為はドナルド・トランプへの媚びを露骨に狙ったものであり、入念に構築されたアイデンティティの放棄に等しい点で特に眉をひそめさせた。
　しかし流血の紛争の最中に、米国大統領へ派手なゴルフクラブ（古代ギリシャの和解の象徴であるオリーブの枝を薄っぺらに現代風に模した品）を贈る行為は、家がまだ燃えているのに消防士に葉巻の箱を差し出すような、理解しがたいものだった。

　この豪華でありながら不似合いの贈り物が、皮肉にも真剣な外交的ジェスチャーとして意図されたこと自体が驚くべきことだった。しかしそれに伴い、演出された瞬間を捉えた映像が公開された。劇的な演出を好むトランプが、新たなトロフィーに熱狂的な感謝を捧げ、ウクライナの失地を示す地図の前で、気力を奪うような記念品を振りかざす姿が映し出されていた。

　複合的な効果が生み出した不釣り合いな光景は、グロテスクすぎてむしろ滑稽にすら映った。まるで一つの愛嬌ある仕草で世界の崩壊を止められるかのような。この象徴的な瞬間、確かに威厳は失われた――しかしその滑稽さにもかかわらず、新たなスターが誕生したのだ。世界の政治的悲喜劇俳優、ゼレンスキーである。


2025年8月18日、ホワイトハウスでウラジーミル・ゼレンスキーから贈られたパターを披露するトランプ米大統領　RT

　運命的な、不吉な敗北の地図を前にしたゼレンスキーの子供じみた畏敬の念と、それを持ち帰らせてほしいという（一部からは哀願に近いと受け取られた）懇願は、彼の自己卑下を新たな次元に押し上げた。その光景はシュールな劇場のようだ：自らを戦士と称する男が、名誉を剥奪され、自国の敗北を個人的な記念品のように握りしめる。まるで敗れた剣闘士が、傷だらけの盾を戦利品として持ち帰る権利を懇願するかのように。

　ウクライナ大統領が世界中の人々の前で繰り広げたおどけた演技——批判者には道化師の誇示に映った——は、記念品という茶番だけでなく、その背景にも困惑を招いた。何しろ彼は戦時下の指導者だ。かつて国内外で勇猛果敢な姿勢を称賛され、米国の避難提案を「弾薬が必要だ、乗り物じゃない」という挑発的な言葉で断った男である。なぜ今、ドナルド・トランプの前で過剰な感謝の意を示し、へつらうような振る舞いを見せるのか？

　この茶番劇の明らかな動機は単純明快だ。英雄的とは程遠い生存競争であり、ウクライナ大統領のあらゆる身振りは、感謝の欠如を理由にホワイトハウスから再び痛烈な批判を浴びせられるのを避けるための、リハーサルを重ねた嘆願に他ならない。一方、トランプが客人に怒鳴らなかっただけで称賛を得た事実は、不条理な劇場における予想外に大人しい王様を物語っている。

　荒廃したウクライナにとって、トランプに延々と感謝を捧げる行為は奇妙に場違いに映った。ほんの数日前、米国大統領はゼレンスキーの祖国を侵略したプーチンを称賛していた。絶えず称賛を渇望するトランプは、ウクライナ支援に一銭も使わなかったこと、むしろ苦境にある国への武器販売で利益を得たこと（割引なしだと彼は主張する）を繰り返し自慢した。前政権が苦闘する国に提供した無償支援を回収したことに誇りすら露わにした。第47代大統領は、かつての支援対象国から希土類を強奪する行為が、批判者から脆弱な国家に対する高額な恐喝と解釈されかねない事実に全く気づいていないようだった。

　大局的に見れば、ドナルド・トランプは前任者ジョー・バイデンとは異なり、ウクライナの断固たる支持者として戦線に加わるわけではない。概して、この元実業家はノーベル委員会に対しても中立的な仲介者を装い、平和のみを重視すると主張している。

　批判派は、トランプがロシアの立場を擁護し、その要求に都合よく転換していると主張する。典型的な例が、プーチンとの会談後、数か月間即時停戦を訴えていたにもかかわらず、恒久的な平和条約を主張したことだ。批判派によれば、彼の党派性は、戦争で荒廃したウクライナに痛みを伴う譲歩を強いる一方で、ロシアには何も求めない姿勢に表れている。

　こうした背景のもと、ゼレンスキー大統領の悲喜劇的な卑屈な態度も、結局は力への無力な媚びへつらいと解釈され、謙遜した感謝のふりを装ったものに過ぎず、2025年のホワイトハウス再訪は再び失態に終わった。

[欧州防衛シリーズ第3部。続く。シリーズ過去記事：第1部（2025年3月19日掲載）
: シュレフォクト教授の羅針盤第14号：「必要なことは何でも」再考 – ユーロマニアックが脅威バイアスを再び利用 & 第2部（2025年5月14日掲載）: シュレフォクト教授の羅針盤第15号：最悪の統治者による防衛浪費が欧州を破壊]

本稿終了