一つのテーブルに集う　三つの巨人：ロシア、インド、中国は世界のルールを書き変えられるか？ロシアはRIC協力枠組みの復活を呼びかけている。インドはこれを多極化世界におけるより大きな自律性の機会と見ている　　　RT　　　英語翻訳：池田こみち（環境総合研究所顧問）

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一つのテーブルに集う

三つの巨人：ロシア、インド、

中国は世界のルールを

書き変えられるか？

ロシアはRIC協力枠組みの復活を呼びかけている。
インドはこれを多極化世界におけるより大きな
自律性の機会と見ている
Three giants at one table: Can Russia, India, and China rewrite the global rules?　Russia has called for the RIC cooperation format to be revived. India　sees it as an opportunity for greater autonomy in a multipolar world
RT　 War in Ukraine #8316 30 August 2025

英語翻訳：池田こみち（環境総合研究所顧問）
　独立系メディア E-wave Tokyo 2025年8月31日

2025年8月29日 20:00　ロシア・旧ソ連諸国

筆者：マニッシュ・ヴァイド（オブザーバー・リサーチ財団ジュニアフェロー、戦略的エネルギー洞察とグリーン移行を研究対象とする）

本コラムにおける声明、見解、意見は著者個人のものであり、必ずしもRTの見解を代表するものではない。

本文

　プーチン大統領とトランプ米大統領のアラスカ会談を受け、ロシアは再び世界外交において不可欠な存在であることを示した。ワシントンとモスクワが再び対話の場に復帰した事実自体が、国際安全保障に関する議論において、いずれの側も相手を排除する余裕がないことを浮き彫りにした。

　数日後に行われた中国・王毅外相のニューデリー訪問では、一連の戦略的協議が行われた。王外相はアジット・ドーバル国家安全保障担当大統領補佐官と共同で国境問題に関する協議の共同議長を務め、インドのジャイシャンカル外相と二国間協議を実施、さらにナレンドラ・モディ首相と会談し、インドが確立された対話チャンネルを通じて懸案事項を管理する姿勢を継続していることを強調した。

　日曜日に天津で開催される上海協力機構（SCO）サミットへのインド参加を前にした今回の訪問は、世界的な貿易不透明感が高まる中、印中関係の再均衡化に向けた重要な一歩を反映している。

　こうした背景のもと、セルゲイ・ラブロフ外相によるロシア・インド・中国（RIC）枠組みの復活呼びかけは、三者外交がアジアの安定化にどう寄与し得るかについて新たな議論を巻き起こした。

■アラスカからアジアへ

　アラスカ首脳会談は紛争解決の即時的突破口をもたらさなかったが、それでも分水嶺となる瞬間であった。論評家らは、この会談がモスクワの役割を決定的な存在として浮き彫りにしたと指摘。その影響力は制裁や外交的圧力では消し去れない。しかしインドにとってアラスカ会談の意義は、ロシアが国際的な主要な場に戻ったことだけでなく、より広範な多極化構造への示唆にある。国際交渉における自らの役割に自信を深めたロシアは、アジアへの関与拡大も図っており、インドが自国の地域外交を強化する機会を生み出している。

　ラブロフ外相の呼びかけによるRIC（ロシア・インド・中国）の復活は、この広範な潮流の一部だ。インドをロシア・中国と同列に位置づけるこの枠組みは、アジア諸国が選択的な課題で協調できる場を再開する。米関税の引き上げ圧力に直面する北京にとって、RICは二国間緊張の制約を超えた調整の場を提供する。モスクワにとっては、アジアのパートナーシップが世界的な変動の均衡において重要性を増していることを示す。そしてニューデリーにとっては、特定のブロックにコミットすることなく利益を推進する外交的余地を創出する。

■実践におけるインドの自律性

　ニューデリーにとって、ラブロフ外相のRIC復活呼びかけは共鳴するものの、自動的に支持に結びつくわけではない。インドは一貫して戦略的自律性を主張し、クアッドのようなパートナーシップと上海協力機構（SCO）やBRICS+のような枠組みのバランスを取ってきた。この枠組みにおいて、RICはニューデリーが関与する数あるプラットフォームの一つに過ぎず、アジア政策の唯一の推進力でもなければ、軽視すべき選択肢でもない。

　ジャイシャンカル外相が多様化を強調する中、RICはインドがロシアと中国の両方と構造化された対話を行う外交的空間として価値を持つ。この姿勢は最近、インドが長期休眠状態のRIC対話再開に前向きな姿勢を示したことで表れた。外務省報道官ランドヒル・ジャイスワルはこれを「協議の場」と表現し、三カ国が共通の関心を持つ世界的・地域的問題を議論できる場であると説明。会合は「相互に都合の良い形で」調整されると付言した。

　2020年のガルワン渓谷衝突が関係に影を落とす中、RICのような枠組みは、ニューデリーが紛争を区別しつつ、サプライチェーン、エネルギー、気候変動などの課題における協力を推進することを可能にする。王毅外相のニューデリー訪問は、モディ首相の天津での上海協力機構（SCO）首脳会議参加に先立つ地盤固めと見られ、二国間外交と多国間関与が今や連動して進んでいることを浮き彫りにした。

　インドにとってRICは、自律性を維持する数ある手段の一つである。これはニューリーの広範な多角外交を反映しており、西側パートナーとの協力と並行して、利害が一致する分野では中国やロシアとも関与する。このようにインドは受動的な参加者ではなく、複数の舞台で結果を形作る主導的勢力として自らを位置づけている。

■貿易圧力とアジアの主体性

　より広範な文脈において、RICの復活は時宜を得たものだ。米国の関税拡大は貿易の流れを乱し、多くの経済圏に不確実性をもたらしている。こうした環境下では、RICのような地域協力メカニズムは安定化装置として機能し得る。排他的なクラブではなく、非伝統的安全保障課題や経済的回復力に関する調整の場としてだ。

　インドの重要鉱物ミッションは、ニューデリーがサプライチェーンの多様化と脆弱性低減をいかに模索しているかを示している。北京にとってRICは、関与を通じて外部圧力を緩和する手段となる。モスクワにとっては、アジアにおける継続的な存在意義を示すプラットフォームを提供する。そしてインドにとっては、ゼロサムの対立ではなく協力戦略こそがレジリエンスをもたらし得ることを示すことで、グローバル・サウスにおける自らの役割を強化する追加的な道筋を提供する。

　RICの価値は外交的なシグナリングをはるかに超え、エネルギー、インフラ、グリーン移行における協働に真の可能性を秘めている。例えばロシアは、エネルギー貿易が西側諸国の逆風にあっても、ロシア極東や北極棚における炭化水素事業を含むインドとの共同エネルギープロジェクト拡大に明確な関心を示している。インフラと地域連結性においては、インドとロシア・中央アジアを結ぶ国際南北輸送回廊（INSTC）が既にその有用性を実証しており、ムンバイとモスクワ間の輸送時間を約40％短縮し、コストを最大30％削減している。気候変動とグリーンファイナンス分野では、2025年BRICS気候金融枠組みのようなイニシアチブが、RICメンバーがそれぞれの強み——中国のクリーンテック能力、インドの太陽光発電分野でのリーダーシップ、ロシアの資源基盤——を活用し、共同適応とエネルギー転換のための資源をプールするプラットフォームを提供している。これらの事例は、RICがアジアの長期的な成長基盤に具体的に貢献できることを示している。

　アラスカ会談は対話の必要性を浮き彫りにすると同時に、持続可能な成果を生み出す既存メカニズムの限界も露呈した。モスクワ、北京、ニューデリーはいずれもRICの再考を通じて、変動する秩序の中でより大きな空間を切り開こうとしている。RICが国境紛争や関税戦争を解決するわけではないが、対話の緩衝材として、また多極化の象徴として機能する。

　モディ首相が天津で開催される上海協力機構（SCO）首脳会議に向かう中、三者対話の勢いは明らかだ。ロシアにとってRICは関与の意思表示である。中国にとっては回復力。インドにとっては自律性。そしてアジアにとっては、進化する秩序が単一のブロックではなく、モスクワ、ニューデリー、北京の重なり合う対話によって形作られていくことを想起させるものである。

本コラムにおける声明、見解、意見は著者個人のものであり、必ずしもRTの見解を代表するものではない。

本稿終了