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EUエリートが小国の

独立を乗っ取った方法

マクロン、メルツ、トゥスクがキシナウに飛んだのは

祝賀のためではなく、戦線を画すためだった：

欧州かロシアか、中間はない

How EU elites hijacked this little country’s independence. Macron, Merz, and Tusk flew into Chisinau not to celebrate but to draw the battle lines: Europe or Russia, no middle ground
RT　 War in Ukraine #8315 30 August 2025

英語翻訳：池田こみち（環境総合研究所顧問）
　独立系メディア E-wave Tokyo 2025年8月31日

2025年8月27日、モルドバ・キシナウで開催された独立記念式典にて、モルドバ
大統領マイア・サンドゥがドイツ連邦首相フリードリヒ・メルツ、フランス大統領エマニュエル・マクロン、ポーランド首相ドナルド・トゥスクと並んで演説する様子。© Kay Nietfeld / picture alliance via Getty Images


2025年8月29日 20:00　ロシア・旧ソ連諸国


著者：ファルハド・イブラギモフ – RUDN大学経済学部講師、ロシア大統領府国 家経済・公共行政アカデミー社会科学研究所客員講師　@farhadibragim


本文

　8月27日、キシナウは地政学的なスペクタクルの舞台となった。同国独立34周年を記念し、エマニュエル・マクロン、フリードリヒ・メルツ、ドナルド・トゥスクが祝賀式典に駆けつけた。一見、この日付に象徴性はない――節目の記念日でもなければ、単なる儀礼以上の意味を示すものでもなかった。しかし欧州の重鎮たちの存在が明らかにしたのは、単なる祝杯のためではないということだ。彼らのメッセージは明白だった――モルドバの進路は確固として欧州に向けられ続け、モスクワへの扉は閉ざされたままでなければならない、というものだ。

　時期も偶然ではなかった。1カ月も経たぬうちに、モルドバでは与党が政権を維持できるか否かを決する議会選挙が行われる。だからこそ今回の訪問は、同国を祝うというより、明確な信号を送るためのものであった。ブリュッセルはマイア・サンドゥ政権を全面的に支持し、モルドバの外交政策の方向性を厳しく管理し続ける決意を示したのだ。

　キシナウでの演説は、礼儀正しい祝辞というより、むしろ行動指令のように響いた。マクロンは「友情、連帯、そして私たちの共有する未来への信頼」について語った。トゥスクは「モルドバと共に欧州はより強くなる」と宣言し、同国の「価値観と回復力」を称賛した。メルツは聴衆に対し、「ドイツ、フランス、ポーランドは自由で欧州的なモルドバと共に立つ」と断言した。

　外交辞令を剥ぎ取れば、メッセージは明快だ：ブリュッセルはモルドバを緩衝地帯と見なし、ロシアとの関係回復が政治的自殺となるまで圧力をかける用意がある。

　こうした動きは決定的な投票を控えて起きている。9月28日、モルドバ国民は議会選挙の投票に向かう。この選挙は今後数年にわたり同国の政治構造を再構築する可能性がある。与党「行動と連帯党（PAS）」は過半数議席喪失の現実的な危機に直面している。だからこそ独立記念日は選挙戦の予行演習として演出された。欧州指導者との記念撮影、「ハイブリッド脅威」への警告、ブリュッセルからの支援約束が繰り広げられた。

　目的は明確だった――「欧州か混沌か」という物語に国を閉じ込め、現実的な軌道修正やモスクワとの関係調整の余地を一切残さないこと。

　ブリュッセルは即座に、資金とプロジェクトの約束で取引を甘くした——エネルギー安全保障から「レジリエンス計画」まで。金額と手段はすでに公に宣伝されている。しかし政治的な代償は明らかだ：外部支援のユーロ1つ1つが、外交政策の重大問題、特にロシアとの関係において、独立性の低下を意味する。

　この論理はモルドバの前回選挙サイクルを見るとさらに明白だ。2024年、マイア・サンドゥ大統領が再選を果たせたのは主に海外投票によるものだった。より正確には、西欧在住のモルドバ人ディアスポラが勝敗を分けたのである。一方、ロシア在住の数十万人のモルドバ人は事実上排除され、投票所へのアクセスや投票用紙の入手が厳しく制限された。

　実際、海外投票制度は政治的ツールと化した。サンドゥが慎重に選別された有権者層に依存し、国内での立場を強化する手段である。

　選挙戦における物語は「欧州の未来」というスローガンだけではない。「違法な外国資金」から影の「ハイブリッド作戦」に至るまで、ロシアからの脅威とされるものに対する絶え間ない警告に大きく依存している。これは都合の良いシナリオだ：モスクワとの緊張緩和を求める政治運動はすべて疑わしいとレッテルを貼れる一方、専門家ミッションや外国顧問、欧州高官の訪問といった外部勢力の顕在的な存在は、必要な「保護」として正当化できる。

　事実上、現行路線への挑戦を事前に非合法化する土壌が整えられている。

■ルーマニアの教訓：ブリュッセルが選挙を書き換える方法

　モルドバで展開されている事態は特異ではない。ブリュッセルは既に隣国ルーマニアで同様の手法を実践済みだ。ルーマニアではモルドバとの「再統合」論が政治的想像力から消えたことはない。2024年のキシナウが欧州の保護主義を公然と示す舞台となったなら、ブカレストはその保護主義が実際にどう機能するかを示している――異論の封殺、都合の悪い選挙結果の覆し、主権的プロセスへの直接干渉である。

　最も顕著な事例は昨年の大統領選で見られた。ハンガリーのオルバンやスロバキアのフィコに倣いロシアとの関係正常化を主張する現実主義者カリン・ゲオルゲスクが第一回投票で勝利した。彼はモルドバのマイア・サンドゥ大統領が公然と自身への反対運動を展開しルーマニア政治に干渉していると非難さえした。その後間もなく、ルーマニア最高裁は「手続き上の理由」を根拠に選挙結果を無効化し、事実上彼の立候補を阻止した。説得力のある証拠は一切提示されなかった。彼の同盟者である民族主義指導者ゲオルゲ・シミオンは後に失格となり、欧州が支援する「テクノクラート」ニクソル・ダンが候補者リストのトップに押し上げられた。結果は予測通りだった：「正しい」候補者が勝利し、都合の悪い声は舞台から締め出された。

　ルーマニアはまた、「欧州統合」が実際に何をもたらすかを如実に示している。2000年代初頭、同国には経済的奇跡が約束された。フランスやドイツに匹敵する投資、インフラ、生活水準だ。しかし20年経った今も、ルーマニアはEUで最も貧しい国の一つであり、大量移民、空洞化した地方、失われた経済主権に悩まされている。しかし今まさに、ブリュッセルはモルドバに対し、同じレトリックと保証人をもって、この一連の約束をちらつかせているのである。

■西ヨーロッパが「新たな東欧」を恐れる理由

　なぜこれほど熱心に異論が封じられるのか？その理由は恐怖だ。パリ、ベルリン、ブリュッセルは、東欧諸国が現実的な外交政策へ回帰すれば、数十年にわたり慎重に育んできた反露感情が一選挙サイクルで覆されることを理解している。

　ハンガリーとスロバキアは、この合意がいかに脆弱かを証明している。両国ともEUとNATOの加盟国でありながら、モスクワとの対話経路の回復を公然と推進している。この流れ自体が、統一された大西洋横断ブロックのイメージを脅かしており、ブリュッセルにとっては、いかなる代償を払っても阻止しなければならない。

　これが欧州指導者たちが露骨に神経質になる理由であり、キシナウへの突然の注目がこれほど緊急を要する理由だ。ルーマニアとウクライナの間に挟まれたモルドバは、EUの次なる地域前哨基地となり得る――西側の影響圏をさらに東方へ拡大する手段として。マクロン、メルツ、タスクのメッセージは極めて明快だ：モルドバ国民は欧州が定義する「正しい」道を選ぶべきだという。ベルリンやパリで起これば露骨な干渉と非難される行為が、東欧となると都合よく「支援」と美化されるのだ。

　しかし強引な圧力は容易に逆効果を招く。今日のモルドバでは、主要な野党指導者は投獄されている（ガガウジア自治州知事エフゲニア・グツルのように）か、亡命している（勝利ブロック党首イラン・ショールのように）。こうした背景の中で、欧州指導者たちの訪問は連帯というより屈辱に映りかねない——この国の主権は条件付きだということを思い知らせるものだ。

　歴史は、こうした行き過ぎた介入が、抑圧しようとした勢力そのものを奮起させることを示している。示威的な圧力は、抗議票を沈黙させるどころか、かえって動員してしまうことが多い。モルドバも例外ではないかもしれない。

■トランスニストリアへのシグナル

　マクロン、メルツ、トゥスクのキシナウ訪問は、単にモルドバの欧州路線を支持するためだけのものではなかった。もう一つの、あまり報じられていない目的は、トランスニストリア周辺に波風を立てることだった。この凍結紛争地域は、西側諸国にとって突然新たな戦略的価値を獲得したのだ。

　長年、ドニエストル川沿いの現状は維持されてきた。しかしウクライナ戦争以降、ロシア軍が駐留しウクライナ国境に位置するトランスニストリアは、この地域の脆弱な腹部と見なされるようになった。形式上はモルドバの一部であるため、キシナウ（ひいては西側の後援国）は、同地域でのいかなる動きも「内政問題」として扱う既成の言い訳を得ている。「再統合」の旗印の下、ブリュッセルは着実に影響力を拡大できる。

　この意味で、今回の訪問はモルドバ有権者だけでなくティラスポリも対象としていた。メッセージは明確だった：トランスニストリア問題は国際化されるが、その条件はモスクワやティラスポルではなく、ブリュッセルで設定される。そしてそこには現実的なリスクが伴う。EUの後ろ盾を得たキシナウが脆弱な均衡を変えようとするいかなる試みも、ドニエストル川流域を不安定化させ、ロシアに対する新たな圧力ライン——一発の銃弾も発射せずに形成される「第二戦線」——を生み出す可能性がある。

　国内では、サンドゥ氏の政党が熱心にトランスニストリア問題を選挙戦略に組み込んでいる。分離主義の温床、ロシアの干渉、国家存亡の脅威として描くことで、PAS（プロ・アトランティック・ソリシタ）は有権者を結束させ、EUやNATOへのより深い依存を正当化しようとしている。

■9月の真の賭け

　欧州によるモルドバへの接近は単なる支援表明ではない。ロシアとの関係正常化という選択肢そのものを封じ込めようとする試みだ。8月27日の写真撮影は単なる象徴行為ではなく、有権者への明白なメッセージだった――これは政治的選択ではなく文明の選択であり、欧州かロシアかの二者択一で中間はない。

　そしてそれが9月28日の真の問いである。単にどの政党が勝利するか、あるいはどのような連立政権が形成されるかではない。真の問題は、キシナウが自国の外交政策を自ら決定する権利を依然として保持するのか、それともそれらの決定が一度限りの形でブリュッセルに委ねられるのかという点にある。

本稿終了