米国情報機関は自らのウクライナ 政策を明らかにして信用失墜 敵を阻止するために偽情報を使用することは、あることだが、 自国の国民や政策立案者に広めるのは、また別の話だ。 US intel community killed its own credibility by revealing its Ukraine policies Using disinformation to thwart an enemy is one thing. Spreading it to your own public and policymakers is another RT War in Ukraine - #600 April 9 2022 翻訳:青山貞一(東京都市大学名誉教授) 独立系メディア E-wave Tokyo 2022年4月19日 |
写真:諜報機関のイメージ写真 © Getty Images / Milan_Jovic <執筆者>スコット・リッター スコット・リッターは元米海兵隊情報将校で、「SCORPION KING: America's Suicidal Embrace of Nuclear Weapons from FDR to Trump(サソリの王者:アメリカにおける核兵器の自滅的な受容、FDRからトランプまで)」の著者である。INF条約を実施する査察官としてソ連に派遣され、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍の幕僚を務め、1991年から1998年までイラクで国連の首席武器査察官を務める。現在、国際安全保障、軍事、ロシア、中東、軍備管理、核不拡散に関する記 事を執筆している。Twitter: @RealScottRitter 本文 米国の情報機関は、真実を追求する誠実さがその中核的価値であると長い間主張してきた。1992年3月、当時中央情報局(CIA)長官を務めていたロバート・ゲイツは、CIAの分析部門に対して、政治的に利用されたインテリジェンスの問題を訴えた。 ゲイツは、「ボーン・コックラン(注:アイルランド系アメリカ人の政治家で、ウィンストン・チャーチルを指導した弁舌の達人)が、1895年にウィンストン・チャーチルに対して、『人々が本当に聞きたいことは真実である-それは刺激的なことだ-単純な真実を語れ』と書いている。その20年後、チャーチル自身がこう書いている。『真実は議論の余地のないものである。真実とは、我々が判断できる限りにおいて、我々(つまりCIA)の仕事の全てである。」と。 さらにゲイツ氏は、「真実を追求することが、組織として、専門家として、個人として、我々(CIA)のすべてであるため、その探求が汚される可能性、あるいはその認識さえも、長い間そうしてきたように、そして、そうであるべきだから、我々を深く悩ます。」と指摘した。 ゲイツ氏の言う「汚点」とは、諜報活動の政治化(政治利用すること)のことである。ゲイツ氏はこの汚点を定義する際、「証拠に関係なく、好みの考え方を優先するために、分析や判断を意図的に歪めることを含む」と指摘した。 最近、NBCニュースに対して、米国政府が同盟国や一般市民と共有するために、ロシアの計画を先回りして妨害し、「モスクワのプロパガンダを弱め、ロシアが世界の戦争の捉え方を規定するのを防ぐ」ために情報の機密指定を解除していることを匿名の情報源が認めたが、表面的には、30年前にゲイツが展開した政治問題化する(politicize)こという落とし穴を回避しているようにみえる。 (しかし)結局のところ、この匿名の当局者によれば、この公開のプロセスは、「情報の質を検証し、情報源と方法を保護するための国家安全保障会議と情報コミュニティによる厳格な審査プロセスに支えられているのだ」という。さらに、「この2つの要件が満たされていると確信できる場合にのみ、情報の公開を承認している」とも述べている。 ■そうもいかない。 同じNBCニュースの報道によれば 「複数の米政府高官は、情報の正確性に対する信頼が高くない場合でも、米国が情報を武器として使用してきたことを認めた。時には、信頼性の低い情報を使用することもある。」と述べている。NBCニュースの言葉を借りれば、「確固たるものではない」情報を使う目的は、ロシアのプーチン大統領の「バランスを崩す」ことによって、ロシアの行動を抑止することだったのだ。 情報機関が「揺るぎない真実」にこだわるのは、ここまでだ。 ウクライナが広範で有能な情報戦能力を保持していることはよく知られている。ウクライナ情報局の第72情報・心理作戦センター(PSO)などの部隊は、ウクライナで進行中のロシアの特別軍事作戦を否定しながら、ウクライナの強さと決意を認識させるような高度なプロパガンダキャンペーンを行ってきた。実際、第72次PSOはロシアにとって脅威であり、ロシア軍は紛争初期にその本部を破壊することを決定した。 さらに、2014年2月のウクライナ「マイダン革命」以降、米国の情報機関がウクライナの情報機関や治安当局と綿密な接触を開始し維持してきたことが報告されており、その関係は8年の間に範囲と規模を拡大する一方であったという。論理的に考えれば、ロシアを標的とした情報活動は共同して関心を持つべき分野であり、2022年2月24日に現在のロシアとウクライナの紛争が始まった後、米国はこの取り組みにおいてウクライナを支援することになるだろう。 機密解除された情報をウクライナに提供し、それを再構成して反ロシアのプロパガンダとして流布させることは、まさに諜報情報の合法的な使用といえるだろう。さらに、秘密の政治活動に関する特定の条件下では、米国の情報機関は、指定された敵の活動を弱体化させるために作られた偽のシナリオに生命と信憑性を与えるために、作られた情報を使用することができる。しかし、そのような条件下では、情報の出所が米国であってはならず、最も重要なことは、この情報が米国の政策立案者に誤った情報を与えるような形で流布されてはならない、ということである。 しかし、米国が標準以下の(すなわち、虚偽で誤解を招く可能性のある)情報を公開しているのは、国内外の一般消費者に受け入れられ、信じられるような世論を形成し、それによってロシアの指導者に真の政治的圧力をかけるためだと、無名の米国国家安全保障当局者が認めたことは、通常の秘密情報戦の戒律から大きく逸脱するものだ。実際、これは1992年にロバート・ゲイツが警告した、証拠とは無関係に目的を達成するために分析や判断を意図的に歪めることの完璧な例である。 ゲイツは「我々の分析の絶対的な信憑性/信頼性は、中央情報局の基本的価値観の中で最も重要なものである。政策立案者、議会、そして米国民は、私たちの見解が正しいか間違っているかにかかわらず、米国が直面する脅威と機会を説明するための最善かつ最も客観的な努力を表していることを知らなければならない。私たちの評価は、世界のどこでも入手できる最高品質の、そして最も誠実な情報分析の産物であることを知らなけれならない。」と述べている。 ■もはや、そうではない。 ゲイツは、真実を守るためにチャーチルの言葉を引用していた。チャーチルは、「戦時下において、真実は非常に貴重であるため、常に嘘のボディガードを付けるべきである」という有名な言葉を残している。この発言によって、チャーチルは、真実は非常に貴重なものであり、敵の手に落ちないように、欺瞞と策略によって守られなければならないという事実を強調したのである。 アメリカの情報機関は今日、この論理を曲解し、実際の真実という概念を排除する一方で、真実を守るためではなく、むしろ嘘そのものを広めるために、真実を模倣する「嘘のボディガード」を登用してしまったのである。 2003年に政治的に利用された情報を使ってイラク戦争の根拠を作り上げて以来、アメリカの情報機関は薄氷を踏むような思いで歩んできた。今、米国情報機関が、ロシアに対する米国と世界の世論を形成するために、虚偽で誤解を招くかもしれないと知りながら、標準以下の情報を公表していることが明らかになり、米国の信頼性の根幹に杭を打ちこまなければならない。少なくとも米国民と世界社会は、再度、米国の情報の主張を額面通りに受け取ることができるかどうかを自問することになる。 |