伊藤貫: ソ連崩壊の歴史をゴルバチョフ、 エリツィン政権のもとで経験した、 プーチン大統領の歴史観が どのようなもので、それが今日 のウクライナ侵攻にどう 結びついているのか 伊藤貫 【伊藤貫の真剣な雑談】 第5回「米露関係破綻の原因は何か?」 Ch.桜 War in Ukraine -#519 April 13 2022 トランススクリプト:池田こみち(E-wave Tokyo共同代表 独立系メディア E-wave Tokyo 2022年4月13日) |
■ソ連崩壊の歴史をゴルバチョフ、エリツィン政権のもとで経験したプーチン大統領の歴史観がどのようなもので、それが今日のウクライナ侵攻にどう結びついていくのかについて、重要な動画での解説があったのでその部分を紹介する。 なお、伊藤貫氏は東大経済学部卒、在学中は、西部邁の指導を受ける。卒業後、現在まで34年間、米国ワシントンDCで外交防衛関連のコンサルタントで活躍。 本文 クリントン政権から始めますが、クリントン政権がロシアに対して何をやったかというと、クリントン政権はロシアにダメージを与えるために三つの政策を実行したんです。アメリカの都合のいいように、もしくは、アメリカとロシアのイスラエル系の金融業者に都合のいいように、ロシアの国有財産を民営化させた。 これはもちろん大失敗だったわけですが、これによってロシアのGTPが数年間で45%も低下して、それで国民の4割は窮乏状態に追い詰められた。それで国民の平均年齢が一挙に10歳以上縮まったほど、ロシアにとってはもう大惨事だったんですね。 クリントン政権は2番目に何やったかというと、クリントン政権の前のブッシュのお父さんの政権で国務長官とか安全保障補佐官とか、それから米軍を代表してNATOの最高司令官をやっていたアメリカの軍人が、十数回にわたってNATOを東側に拡大しないとブッシュ(父)の政権は約束したんけれどもクリントン政権は、あっさりその前の政権の約束をチャラにしてNATOの東方への拡大を始めた。 三つ目がユーゴスラビアのセルビアとコソボへの軍事侵攻だ。国際法違反で少なくても国連決議の承諾を得ていない一方的な軍事介入をして、過去少なくても200年間ロシアのかなり強固な同盟国であったセルビアを叩きのめして結局ロシアがあのバルカン半島で影響力を行使できないようにするという軍事介入を行った。 最初からクリントン政権は、こういうふうにロシアにダメージを与えるつもりで政策を始めて、それが次のブッシュ政権オバマ政権になるともっともっと悪くなっていったということがある。 クリントン政権のロシア経済の改革についてちょっと説明します。 エリツィン時代にアメリカがやらせたロシアの国有財産の民営化、いわゆるロシア経済の自由化っていうのは、最初から一握りのアメリカとロシアの金融業者とかビジネスマン、ほとんどはイスラエル国籍を持つ二重国籍者なんですけれども、そういう人たちとアメリカのウォール ストリートの金融業者と、それからハーバードのイスラエルと強いつながりを持つ経済学者が参加して、それで ロシアの経済改革を進めた訳です。で結果はもちろん皆さんご存知だようにごく一部の人だけが巨万の富を得てオリガーキー(オリガルヒ)と呼ばれる人たち(財閥)になって、この人たちがエリツィン政権を実質的に支配していた。 「圧倒的に多数のロシア国民は貧乏になるばかりだった。」とこのことについてブレジンスキー(ジミー・カーターの安全保障補佐官だった)が2007年に「セカンド・チャンス」という本を書いている。どういうふうに描写してるかっていうとクリントン政権時代、大量のアメリカの金融業者やコンサルタントがロシアの自称改革派とぐるになって急速な国有財産の民営化を進めた。 「これによってごく少数の者が巨万の富を得たということで、これは明らかに腐敗した罪であって、アメリカ政府がロシア人に約束した ロシアに新しいデモクラシーをつくるという約束は単なる悪趣味なジョークに過ぎないことがわかった」とブレジンスキーは書いている。 同じ1990年代にあのアメリカの 国務省の外交官としてモスクワに駐在していたドン・ジェンセンっていう外交官は回想録でエリツィンの経済政策が非常に腐敗したものであることをアメリカは知りつつ毎年巨額の経済援助を与えてこの腐敗した経済をますまず悪化させた、と指摘している。 その結果、普通のロシア人が彼のことをどう思うかというと、普通のロシア人は「アメリカが押しつけてきた民主体制と自由経済っていうのは単なる犯罪行為である」と、要するにアメリカは単に犯罪者が金儲けできるように押し付けてきただけだというふうに信じ込むようになったんです。 具体的に1990年代にはIMFそれから、日本も多分出していると思うんですけど西欧諸国とIMFから日本円にすると15兆円ぐらいのローンと補助金(経済援助)が ロシアに送られたが、その一方で急速な民営化(国有資産の民営化)によって巨額の富を得たロシアのオリガーキーは1400億ドルから2000円億ドル(15兆円 から22兆円ぐらい)の資本を国外に持ち出した。持ち出したのは、ほとんどがスイスとイスラエルを通じて持ち出したわけです。 それで、当時のアメリカの国務省と財務省の官僚によれば財務省・国務省・CIAのロシアの専門家・担当官は、ホワイトハウスに対して、「エリツィン政権に対する経済政策は犯罪行為である、これをやめさせてほしい、アメリカ政府はこのような犯罪行為をやめさせてほしい」という報告書を多数送ったが、オルブライト国務長官、ルービン財務長官、その次のサマーズ財務長官は、これらの報告をすべて握りつぶしたといいます。偶然の一致かどうかは分からないけれどもオルブライトもルービンも前ゴールドマンサックスの会長ですね。また、サマーズは、ハーバードの学長だったんですけれどもそれと 同時にウォールストリートでヘッジファンド の経営にも参加していた人物です。 偶然かうかは別として、オルブライトともルービンもサマーズもユダヤ人で、偶然かどうかは別として ロシアで巨額の富を得た人たちも少なくても8割はユダヤ人で少なくともイスラエルのパスポートを持つユダヤ人であって彼らは儲けたお金をイスラエルに流し込んでいた。これは事実なんですね。 僕は別にここで陰謀もあったとは言いませんけれども 偶然かどうかあの頃の腐敗した犯罪的な民営化政策にアメリカ側で参加してた人、ロシア側で参加してた人の大部分はユダヤ人だったわけです。 説明しますとあのマーシャル・ゴールドマンいうアメリカのウェルズリー大学のロシア専門家がいるんですけれども この人はユダヤ人なんです。けれども非常に正直でロシアで巨額の富を得たあのオリガーキーと呼ばれる人たちは、ほとんどがユダヤ人でり、この結果ごく普通のロシア人はユダ人を憎むようになったと、マーシャル・ゴールドまあはそういうふうに書いています。 このエリツィン時代にオリガーキーとしてエリツィンを操ってたのはベレゾフスキーとかグシンスキー、ホドルコフスキー、フリードマンそれからアブラモビッチ、とこういうイスラエル国籍を持つロシア人だったんですけれども、彼らに関してプーチンがエリツィン政権の首相になる前にエリチン政権で首相を務めていたプリマコフがこれらのオリガーキーがエリツィン政権を実際には運営していると、だからエリツィン政権の政策を決めてたのはエリツィン大統領ではなくて、こういうイスラエルの国籍を持つロシアのオリガーキーであったと指摘していま す。 (中略) 2014年(マイダン)のクーデータを起こさせたのはアメリカ政府であるから今年になって戦争が始まったのまったく不思議なことではない。こういう政策をやっている時にあのアメリカ政府は国際政治におけるバランス・オブ・パワーを維持するということは何も考えてない。 ロシアをこういうふうに不必要に敵に回すことが国際政治全体のバランス・オブ・パワーにどういう影響を与えるかについて、アメリカ政府を運営している官僚とか政治家は考えてない。 ちょっと古い話になりますけど、あの19世紀の外交政策をみるとき、ヨーロッパ外交政策の二人の巨人がいます。ビスマルク(19世紀後半)とメッテルニッヒ(19世紀前半)なんですが、この二人が一番重視したのがロシア政策なんですね。要するにヨーロッパ諸国とロシアの関係を安定させないと欧州の外交はだり立たないって言うんで、彼らの記録を僕が読んでると、二人とも対ロ政策に一番神経質になっているわけです。それぐらいロシアっていうのは厄介な国なんです。 二人ともメッテルニヒもビスマルクもロシアが好きなわけではないんです。だけどとにかくロシアがいったん暴れだしてヨーロッパに対して攻撃的な態度を取るともう欧州の外交は決して安定しないと。二人ともそれを確信してまして、ロシアを不必要に攻撃的な態度を取らせるような境遇に追い込まないようにとっても苦労してたわけです。 ビスマルクの場合は特にすごくてドイツにはロシア嫌いな人が多くてドイツの国民の圧倒的多数はロシアを叩きのめしてやりたいと思ってたけどね。ビスマルクがドイツ帝国の宰相をやっていたときに、ビスマルクが口癖のように言ってたのが、「あのロシアと戦争すればドイツはか勝てるかもしれないとだけどロシアと戦争してドイツがロシアを叩きのめして、例えばロシアの領土を奪ったりロシアから賠償金を取りたってするととんでもないことになる。要するにロシア人っていうのはものすごくしぶとくて、ものすごく忍耐強くてしかも復讐心も強い。 なのでロシアと戦争して叩きのめして彼らの領土をとって賠償金を奪ってそれでいいってもんじゃない。」と。「そういうことすると後々ますますドイツ外交が危険な争いに 巻き込まれることになる。」と。要するにビスマルクの態度はたとえロシアと戦争してたとえ勝ったとしても、勝ったあとにロシア人がどういう復習をしてくるか分かったもんじゃない、でロシア人を打ち負かして彼らに屈辱を与えると必ず数十年後に必ず復讐してくると、だからあんな連中と戦争して勝たない方がいい、とビスマルクは言ってたんですね。 だから僕はビスマルクはすごく偉いと思うんですけれども なんで偉いかって言うとロシアと戦争すると負けるかもしれないからロシアと戦争しちゃいけないって言ってたんじゃなくて ロシアと戦争して勝ってもろくでもないことになるから、あんな連中と戦争しない方がいいと、要するに、ロシアと戦争しない方がいいというのが彼の考えたわけですね。 キッシンジャーもね そうなんですよロシアが好きなわけじゃないんですけれどもとにかくがあのロシアを叩きのめすとろくでもないことになると。 次にちょっとエピソード的に話は変わるんですけど、プーチンがどういう人間かって言うんで、日本のマスコミもそうだと思いますし欧米のマスコミのそうなるだと思うんですけれどももうプーチンが悪党だからこういうことになったというふうな解説が多いんですね。 だけどプーチンの行動っていうのは過去300年間のロシア外交の視点から見るともごく普通なんですよ。彼はロシア人としてごく普通の外交をやってますね。要するにね、その前の二人、ゴルバチョフとそれからエリツィン、この二人が非常におかしなことをやってたわけです。 要するにエリチンとゴルバチョフが異常なわけです。ロシア人として。プーチンの外交政策というのは、普通なんですよ。典型的なロシア人の外交やってるわけです。だからプーチンっていうのはまだ人気がすごく高いですよね。今、戦争してるから高いんじゃなくて最近20年間プーチンの支持率見ていると高いときで80%で低い時で60%ぐらいなんですね。 それはなんでかって言うと、別にプーチンがすごく成功してるっていうより、彼の内政、国内政治と外交政策が非常に伝統的なあのロシアの政策を実行しているから彼は人気が高いわけです。 ここにこういう本があるんですけれども、『First Person』という200頁くらいの本なんですけれども、プーチンがたった一人でインタビュアーの前で24時間しゃべったという(もちろん何日かかけて)、プーチンの自叙伝なんですが、その中で何言っているかといいますと、彼に言わせるとプーチンはなんて考えているかと言うと、彼は自分のことを、"I have historical mission"(歴史的な任務を負っている)と、自分には歴史的な任務があるからからこれをやってるんだと。 でそれは何かと言うとロシアが要するに、ゴルバチョフ政権とエリツィン政権のふたつで、ロシアがガタガタになっちゃったわけです。でこれ以上ロシアが崩壊して、脱落していくのを食い止めると、これが私の歴史的なミッションであると。 要するにそれでゴルバチョフとかエリツィン時代のロシアの行動を続ければロシアという国はなくなってしまうだろうと。そこで私はそのロシアが消滅するのを食い止めたくてやっている、と。もしこのままエリツィン時代とかゴルバチョフ時代のようなことをやっていっていると、ロシアは第二のユーゴスラビアになってしまうと。 皆さんご存知のようにユーゴスラビアという国はもともと冷戦時代はあったけど国務省もCIAもうそういうふうに、ロシアをユーゴスラビアみたいにバラバラにしたいんですね。プーチンはそれがわかってるからこのままだとロシアは第二のユーゴスラビアになってしまうと、我々ロシアの地理的な領土だけではなく我々の精神的なポジション、要するに精神的な在り方をもう一度ロシア人としての精神的な態度、精神的な価値を回復する必要がある、と。ロシアに関して言えば、過去400年間ロシアという国は、常に中央集権国家であったと、しかもエリツィンに言わせればスーパー・セントラライズド・ステイ(Super Centralized State=超中央集権国家)であったと。確かにロシアが皇帝もしくは独裁者が支配する国でなかった時代っていうのは、17世紀の初めの10数年と、それから1917年とそれからエリツィン時代のあの偽物政権の時代ですね。これらの結局全部で20数年しかなかったわけです。この20数年以外は過去400年のロシアの歴史でロシアっていうのは常に独裁者がいるか、そうでなければ皇帝とか国王がいてひとり人が統治すると国だったということです。 欧米のマスコミはプーチンが一人で全部牛耳っているのはおかしい言いますけれども、過去400年間のロシアの歴史を見るとむしろ複数の人が政治なり統治を担当するっていう方がおかしくて一人の人間が全部やるっていうのがごく普通であると。プーチン自身もロシアは常にSuper Centralized Stateであったと、だからそういう超中央集権国家でやるしかないと、そういうふうなことをやらないとロシアは治らないというふうに彼は言ってます。 要するに、プーチンが自分の独裁体制を正当化したいからこういう風に言ってるんだろうというふうに反応なさるかもしれないんですけれども、例えばキッシンジャーにしてもケナンにしてもハンティントンにしても、ロシア嫌いのハーバードのリチャード・パイプスにしてもプーチンの言ってることは正しいと指摘しています。 要するにロシアっていう国は独裁者が出てこないと、もしくは一人のオーソリティタリアンリーダーですね、一人の権威主義的なリーダーが出てこないとロシアっていうのはUngovernable=統治できない国であるというふうに言っています。 (後略) |