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イズベスチヤが軍作業を紹介
ドンバスでの
「イスカンダル・ミサイル」複合体
によるドローン撃墜の実際

(システムの詳細解説付)

«Известия» показали работу ракетчиков
с комплексами «Искандер» в Донбассе

Izvestia War
in Ukraine- #1017 June 16 2022

ロシア語翻訳・青山貞一(東京都市大学名誉教授)
独立系メディア E-wave Tokyo 2022年6月16日


ロシア軍のイスカンダル・ミサイル
自走式ランチャー9P78-1OTRK9K720 Iskander-Mと9M723K5ミサイル(9P78-1 TEL of 9K720 Iskander-M SRBMシステムと9M723K5ミサイル)
Source:Wikimedia Commons  CC 表示-継承 4.0, リンクによる


本文

 指揮統制センターのトランシーバーは1分も沈黙しない。時計は勤務中です。昼夜を問わず作業が行われ、24時間体制でターゲットの座標を受信している。

 イズベスチアの特派員であるキリール・オルコフは、6月16日(木)にイスカンダルミサイル施設の作業を見学することができた。

 「ターゲットエリアにはドローンが飛んでいて、ターゲットに命中したかどうかを監視している。目標に命中しなかったり、完全に命中しなかった場合は、2発目のミサイル攻撃を行う」と砲台長のニコライは動作原理を説明する。

 ターゲットが複数ある場合は、ペアでの打ち上げもあります。このような場合、ミサイルはあらかじめ設定された軌道を飛ぶだけではありません。搭載された制御システムにより、発射の瞬間からターゲットに衝突するまでの最適なルートを探し出すことが可能である。

 衝撃の精度は最大1mである。

 超電導イスカンダル・ミサイル複合体は、その設備と使用方法の多様性の点で、世界でも類を見ないものである。

 このイスカンダル・ミサイル複合体は、数分で行軍から射撃位置まで持ってこられる。

 重さ数トンの弾道ミサイルや巡航ミサイルを搭載している。いずれも超操縦性に優れ、対空防御網に探知されない。スポット攻撃は、民間人から離れた場所で、専らウクライナ人戦闘員の拠点や軍事設備に対して行われる。

 以下はイスカンダル・ミサイル複合体がトレーラーで運び込まれ、設置後、宇軍のドローンを実際に撃ち落すまでの動画のスクリーンショット。


動画のスクリーンショット。出典 イズベスチア


動画のスクリーンショット。出典 イズベスチア

写真:IZVESTIA 2022年6月16日 05:00 ロシア陸軍 ドンバス・ミサイル部隊


動画のスクリーンショット。出典 イズベスチア


動画のスクリーンショット。出典 イズベスチア


動画のスクリーンショット。出典 イズベスチア

 ミサイルの位置はカモフラージュネットの下に隠されている。視覚的に隠れるだけでなく、レーダーパルスを抑制する特殊な化学溶液を染み込ませている。

 家では軍人が親族を待っている。その一人、ニコライは、軍人は心配だが、すべてが無駄ではないと信じていると言う。

 「週に一度は電話をして、話をしています。みんな元気です。もちろん、心配はしている。お母さん、おばあちゃんが「早く、早く」って言うんです。早く終わって、家に帰りたい」とミコラさんは言う。

 前日には、イズベスチヤ紙のヤロスラフ・ボガト記者が、地対空ミサイルシステム「Osa-AKM」の仕組みを実演してみせた。ロシア軍人がドンバス解放のための特別軍事作戦で積極的に使用している。この複合機は、ドローンを含む空からの偵察、目標座標の迅速な決定、撃退に有効です。


 ロシアは、プーチン大統領が2月24日に発表したドンバスを守るための特別作戦を継続しています。その数日前、ウクライナ軍による砲撃で現地の状況は大きく悪化していた。ドネツク、ルハンスク両人民共和国当局は、住民のロシア連邦への避難を発表し、モスクワにも支援を求めた。2月21日、ロシアのプーチン大統領は、DNRとLNRの独立を承認する法令に署名した。

 以下は2022年6月15日に露軍が破壊した宇軍の武器数(右側の数字)。
 中央の数字が累積数、右側の数字が2022年6月15日。
 一番下の行が、撃ち落した敵のドローン数。この日は6機を撃ち落している。



出典:ロシア軍報道官報告、イズベスチア



露軍、イスカンデル・ミサイルの詳細

 出典:Wikipedia



 9K720「イスカンデル」(ロシア語:9К720 "Искандер)はロシア製の弾道ミサイル(SRBM)。固体燃料推進で、車両に搭載される移動式の戦域弾道ミサイル複合体である。北大西洋条約機構(NATO)の用いたNATOコードネームでは、“SS-26 Stone(「石」の意)”と呼ばれる。「イスカンデル」とは古代マケドニアの英雄アレクサンドロス大王の異称である。

概要

 「イスカンデル」は戦域レベルの紛争用に設計された戦術ミサイルシステムである[3]。ポイントやエリアの標的、例えば敵火力兵器、防空・対ミサイル防衛兵器、司令所や通信ノード、密集地帯の軍隊などに合わせて通常弾頭を使い分けることで、活動中の軍部隊・標的の両方を破壊することにより敵軍の戦闘遂行能力を弱体化させる。

 このシステムは敵の活動妨害環境の中でも高い確率で任務を遂行することができ、ミサイルの発射準備中や飛行中でもほとんど故障しない。

 ミサイル飛行経路の計算と入力は、発射装置が自動で行う。システム搭載車両は移動可能で、耐用年数の延長や操作の容易さも相まって、高いレベルの戦術的作戦能力および戦略的機動性を有している。

 「イスカンデル」にはクラスター爆弾弾頭、燃料気化爆弾弾頭、威力増大型弾頭、バンカーバスター用の地中貫通弾頭、対レーダー作戦用の電磁パルス弾頭など、いくつかの異なるタイプの通常弾頭が用意されている[4][1]。

 製造露企業であるロステック会長セルゲイ・チェメゾフは、国内仕様には核弾頭搭載能力が備わることを明言している[5]。

開発と配備の経緯

 ソ連では、1960年代に大量配備した戦域弾道ミサイル複合9K72「エリブルース」の代替として1980年代初頭より 9K714「オカー」を配備していた。

 これが1987年のINF条約により制限対象となったため、条約に抵触しない別の代替ミサイルが必要となった。1989年にはより射程の短い9K79-1「トーチカU」が実用化されたが、9K714を代替するためには長射程の非核弾頭型ミサイルが必要であった。

 新しい戦域弾道ミサイル複合は9K720と名付けられ、9K79や9K714の開発で知られるコロムナ機械製作設計局(KBM)によって開発が主導された。

 ミサイル発射装置はヴォルゴグラードの中央設計局「チターン」、自動誘導装置はモスクワの自動化技術・水理学中央科学研究所が受け持った。開発条件としては、特に核弾頭を搭載できないようにすること、その分命中精度を高めること、自動誘導装置を改良することなどが挙げられた。

 ミサイルの開発はソビエト連邦の崩壊を経ても継続され、1996年には「イスカンデル」ミサイル[6]の最初の発射がロシアのテレビで放送された。

 西側では1999年にこのシステムがロシア軍で運用段階に入ったと見ていたが、後に時期尚早だったことがわかった[1]。

 2004年9月、ロシア国防省高官らの会合で当時のプーチン大統領に2005年度の防衛予算の草案が報告され、セルゲイ・イワノフ国防相は新しい戦術ミサイルシステム「イスカンデル」の状態テストの完了について発言。

 
2005年にこのシステムの大量生産に入り、年度末頃にはこの兵器を備えた部隊ができているだろうと話した[1]。

 2005年3月、ロシア防衛産業の情報筋はインテルファクスAVNに既存の「イスカンデルE」戦術ミサイルシステムに基づいた500 - 600kmの範囲への新しいミサイルの開発が可能であると話した。しかしながら、彼はそれには「最大で5、6年かかるかもしれない」と話した[1]。

 2006年には「イスカンデルM」戦域弾道ミサイル複合の量産が開始された。「イスカンデルM」は「イスカンデル」のロシア連邦軍向けの派生型で、最大500 kmの射程と480 kgの弾頭を持っている[1]。

 2007年には新しいミサイルシステム(発射装置も)であるR-500「イスカンデルK」[7]巡航ミサイルの発射試験が行われた[8]。

 2008年11月、ロシアのメドヴェージェフ大統領は大統領就任後初となる年次教書演説で、NATOミサイル防衛システムを中和するために、もし必要なら、ロシアはNATO加盟国であるリトアニアとポーランドの間にあるロシア最西端の飛地カリーニングラード州に「イスカンデル」複合を配備するだろうと述べた[9]。

 リトアニア政府は、少なくとも軍事演習時にはイスカンデルがカリーニングラードに持ち込まれており、最大射程が700kmに延伸された改良型はドイツのベルリン付近まで攻撃可能との見解を公表している[10]。

構成

 「イスカンデル」の使用するミサイルは、前任の9K714の使用する9M714ミサイルよりも優れている。

 「イスカンデルM」システムは2つの固体推進燃料単段式誘導ミサイル、モデル9M723K1を備えている。各々は全飛行経路中ずっと制御されていて、分離しないタイプの弾頭を備えている。発射台輸送車両に備えられた各々のミサイルは独自に、ものの数秒の間に標的を狙うことができる。「イスカンデル」発射砲座の機動性はミサイル発射の妨害を困難にする[4]。

 ミサイル運搬車輛には、ベラルーシの国営企業ミンスク・ホイール・トラクター工場製のMZKT-7930と、ロシア・ブリャンスク自動車工場製のBAZ-6909が使用できる。これらの車輛は、従来の9K79や9K714が各車輛ごとに1発のミサイルしか搭載できなかったのに対し、2 発のミサイルを搭載できるようになっている。

 「イスカンデル」は精度、射程距離、信頼性(敵の防衛を回避する能力)を獲得している。

 それは優秀な戦闘機や防空に直面し、空軍の爆撃や巡航ミサイルの発射任務があまり期待できない時に精密爆撃の代替手段をなしている。

 衛星や航空機だけではなく、従来の諜報センター、または発射を指示する兵士も標的を見つけることができる。コンピュータースキャンされた航空写真から見つけることもできる。標的の移動に合わせて飛行中のミサイルの狙いを修正することもできる[4]。

 「イスカンデルM」(Eではない)は光学式誘導弾頭で、AWACSやUAVからの暗号化された無線通信によっても制御できる。電子光学誘導システムは自律追尾能を与える。ミサイルに内蔵されたコンピューターは標的の画像を受信し、標的に自動的に照準を合わせて追尾し、超音速で標的に向かって降下する。
 
 飛行中、ミサイルは弾道ミサイルより低い軌道を取り、飛行最終段階には回避行動を行い、ミサイル防衛システムをかいくぐるため囮を放出する。このミサイルは決して大気圏を離れることはなく、比較的平坦な軌道を取る。


イスカンデルM

ロシア軍向け。射程距離:400km(INF条約違反である500km以上に伸ばせるだけの潜在能力を有する)[11][12]

イスカンデルE
 輸出向けで、ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)に合わせて設計された。射程距離:280km以下

使用国

現在
ロシア 2006年にロシア軍に採用された。ロシアは2016年までに少なくとも5部隊の「イスカンデルM」ミサイル複合部隊を備える計画をしている[1]。

将来
ベラルーシ 初期のレポートでは、ベラルーシは中央ヨーロッパで提案されたNATOミサイル防衛に対抗するため、ロシア防衛兵器として「イスカンデルE」部隊を購入することを計画していた[13][14]。

後にベラルーシはアメリカミサイル防衛計画に対抗するため、国境内へのミサイルシステムの配置についてロシアと協議していることについて否定したが[15]、それにもかかわらずベラルーシのルカシェンコ大統領は「ベラルーシ共和国軍のために兵器の購入を計画している」と発言した[16]。
 
シリア バッシャール・アル=アサド大統領はロシアの新聞に、スカッドミサイルより優れたターゲッティング能力を持っているロシアの「イスカンデル」弾道ミサイルの輸入取引を再開したいと話した。ロシアはシリアへの兵器販売を検討すると発言したが、その要求に同意するまでには至らなかった[17]。

 ロシア国営兵器貿易企業ロソボロンエクスポルト社のNikolai Dimidyuk取締役によると、アラブ首長国連邦、マレーシア、インドが「イスカンデルE」の保有に強い関心を持っているという[18]。また彼は、ロシアがアルジェリア、クウェート、シンガポール、ベトナム、大韓民国に「イスカンデルE」を輸出しようとするだろうとも付け加えた[19]。

 また朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が2018年2月8日の軍事パレードで公開した新型短距離弾道ミサイルについて、38ノースは「イスカンデルを土台に開発された」と分析している[20]。

 専門家や韓国軍によれば、2019年5月4日、同月9日、7月25日、8月6日に発射されたミサイルとみられる飛翔体は、イスカンデルをもとにしているとも[21][22][23]飛行特性が似ているともされる[24]。