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ポンペオが台湾の停電に
関与しているのは酸鼻な皮肉

It’s acid irony that Pompeo is implicated
by Taiwan island’s outage:

Global Times 社説 4 March, 2022


翻訳:青山貞一(東京都市大学名誉教授)
独立系メディア E-wave Tokyo 2022年3月4日

台湾の写真。アンスプラッシュ

 台湾では1日午前、事前の予告なしに全土で停電が発生し、数百万人の住民の水道が停止、高速鉄道がストップ、病院での停電、エレベーターに人が閉じ込められるなどの深刻な事態が発生した。

 2日前、蔡英文総統は財界関係者と会談し、安定した電力供給が維持されることを保証したばかりである。台湾では週明けから3回目の停電が発生している。島内の一部のネットユーザーが、民進党は「嘘で発電している」と民進党の権威を揶揄したのも無理はない。

 2016年に蔡英文が就任して以来、台湾は島中で5回の深刻な停電に見舞われている。大小さまざまな停電は数え切れないほどだ。

 しかし、今回の停電は、民進党当局がここ数日、マイク・ポンペオを「ワシントンからの賓客」として太鼓と銅鑼で迎えるのに忙しく、特に「悪い」タイミングでの停電となった。

 史上最悪の国務長官」を口説くために、蔡英文は知恵を絞り、特別な栄誉を与える式典を準備し、それをインターネットでライブ配信することを計画したのである。

 彼女はSNSで授賞式の機運を盛り上げようとしたが、予期せぬ停電でネットユーザーの怒りに投稿が圧倒され、生中継を中止せざるを得なくなった。ポンペオも停電による交通機関の混乱に巻き込まれた。

 この場面の皮肉は、とりわけ酸鼻を極める。

 ※注)酸鼻を極める
  心を大きく痛めること、または、痛ましい状態
   のこと、を指す意味で用いられる表現。


 民進党の権威は、島の人々の生活の発展を長い間見過ごしてきた。それどころか、「外交」や「防衛」に多くの資源を費やし、米国の反中勢力を当てにして、いわゆる西側の民主主義陣営に絞り込もうとしてきたのである。

 しかし、その実現のための一歩を踏み出す前に、生活問題で躓いてしまっている。これはほとんど必然的なことである。世界の舞台で、民進党の権威はかなり頻繁に「民意」を盾にして、自分たちの分離主義的な主張を擁護してきた。

 だが、木曜日に起きたことは、蔡英文の歓迎ポストの下で表明された憤りと非難が台湾の真の民意であることをはっきりと示している。

 台湾の一人当たりGDPは3万ドルを超えたが、島民の実情はこの数字が体現しているはずのものとは全く異なっている。台湾は水、電力、土地、労働力、人材の不足が深刻で、インフラの老朽化による高速鉄道の故障や重大な火災事故、社会福祉の巨額赤字、物価の急上昇などに島民は悩まされてきた。

 今や、基本的な生活資材さえ不足しがちで、卵やトイレットペーパーがパニック買いの対象になりかねない。一方、上海は人口が台湾とほぼ同規模で、一人当たりのGDPが2万5千ドルである。上海は台湾より若干低いものの、これまで台湾が繰り返してきたような物資の不足、停電、断水が上海を襲うことは想像に難くない。

 台湾の生活保障はボロボロのテントのように、雨風が意のままに駆け抜けていく。根本的な理由は、民進党当局がこの問題を深刻に受け止めていないからだ。過去30年、40年の間に蓄積された台湾人の貯蓄を必死で切り崩している。

 民進党政権の今年の予算では、「国防予算」が「経済支出」の2倍になっている。民進党当局が勝ち取ろうとしているいわゆる国際友好は、台湾に多大な犠牲を強いている。

 その結果、台湾の人々は必要な日用品を手に入れることができず、ラクトパミンを含む米国産豚肉、福島原発事故に関連した日本食品、リトアニアのエバミルクを受け入れることを余儀なくされた。

 一方、民進党当局は「台湾独立」関連の話題を頻繁に操作し、中国大陸の底力を徐々に挑戦し、台湾を一歩一歩「火薬庫」の縁に追いやっている。島内では不安感が高まっている。

 だから、島で大規模な停電が起こるたびに、SNSで多くの台湾人がまず反応するのは、「PLAが攻めてくる」ということだ。これは民進党当局が台湾人に真実を隠し、長期にわたって洗脳してきた結果である。

 しかし、それは民進党当局を不安にさせることもある。台湾のインフラは脆弱である。それでも民進党幹部は「本土と最後まで戦え」と騒ぎ立てるが、自分たちが「戦い」を呼びかける立場にはないことを完璧に知っているのである。

 民衆の生活問題が深刻化すればするほど、この政治的な策略はますます役に立たなくなるだろう。この日の停電の中、台湾では「防衛力には電力の安定供給も含まれる」という声も聞かれた。これほどの停電で、(民進党当局が)どうしてまだ他人と戦う夢を見ているのか」と。

 民進党政権は、政治を操るのが得意だ。世界の舞台で存在感を示すために「塔」を建てたいのだろう。しかし、民進党政権はその「塔」の土台の泥と砂を使っている。その土台が完全に空洞化したとき、すべてが転がり落ちるので、本土はそっと息を吹きかける必要さえないのである。