農薬取締法改正案に関する質問事項


参議院農林水産委員 参議院議 中村敦夫

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農林水産省国会連絡室御中

 いつも大変お世話になっております。
 参議院農林水産委員会における「農薬取締法改正案」審議に関連して、以下の質問事項に対し、12月6目(金)17:00までに、書面にてご回答をお願いいたします。

参議院農林水産委員中村敦夫
参議院議員会館632号室(内線5632)
TEL:03-3508-8632 FAX:03-5512-2632
担当:田中

農薬取締法改正案に関する質問事項

1.農薬取締法では、販売業者、防除業者は都道府県への届出制度となっている。だが、販売業者は農薬の譲受数量と譲渡数量を記載し、3年間保管となっているが、行政官によって検査をうけることはめったにない。販売、防除業は薬剤自体や法規制を良く知った資格のあるものが購入者に説明して販売、許可をうけた有資格者しか防除業を営業できないとする制度が必要である。したがって、販売、防除業は有資格者の許可制にすべきではないか。

2.農薬取締法では、農家や一般の使用者に対する法規制はなきに等しい。都道府県が「農薬管理指導士」農薬業界や農業団体が「緑の安全管理士」、「防除指導員」、「農薬安全コンサルタント」などの認定制度を設けて指導者づくりを行っているが、法の裏づけのない制度が無登録農薬事件を防止しえなかったことからいえば、きちんと法律で免許資格制度をつくり、自動車の運転免許のように講習をうけ、試験に合格しなければ農薬使用を認めない、違反をすれば免許停止になるような制度が必要である。したがって、農薬使用者(農家、一般)をライセンス(免許・資格)制度にすべきではないか。

3.これまで農水省は非農耕地用除草剤も農薬登録をとるよう行政指導を実施するのみで効果はあがっていない。法律に非農耕地用農薬も農耕地用農薬に準ずるとの一文をいれればすむことである。したがって、非農耕地用農薬に農薬取締法適用すべきではないか。

4.農住接近のせいで、農耕地からの農薬飛散による健康被害の訴えが増大している。農薬空中散布や地上散布ともに問題。有機栽培圃場への農薬飛散防止のために緩衝地帯設置が必要である。したがって、生活環境での農薬散布規制をすべきではないか。

5.散布された農薬を人が空気を通じて取り込む量は作物の残留農薬摂取より多いのに住宅近くでの農薬使用についてなんら規制がないのは不備である。したがって、行政による公園、街路樹の農薬散布、農家が生活環境周辺で行う農薬散布、個人の庭などの農薬散布も規制すべきではないか。

6.農薬の空容器は廃掃法による産業廃棄物として処理されるが、残農薬については農水省はその実態をみようとせず、農薬を余分に買うな、残さず使い切れと指導するのみ。
農家が使用しきれなかった農薬を抱え込んでいることが農業現場で大きな問題となっている。法律では販売禁止になった農薬について、製造業者や販売業者などに使用者から回収するようにとの努力規定の条文があるのみ。廃・残農薬、期限切れ農薬、登録失効農薬の回収を義務付けたうえ、廃農薬の回収・処理制度を設けることが必要である。したがって、残農薬などの廃棄の適正化と回収を義務付けるべきではないか。

7.改正案では、製造・加工及び輸入をするもの、さらに使用するものに対する規制はあるが、過去に製造した農薬、過去に購入した農薬を保管・保有していることに対する規定はない。薬害エイズの場合にもあったように、在庫一掃するまでは使うというようなことが起こる可能性がある。したがって、保有保管の禁止と罰則を明記すべきではないか。また、回収の義務づけや回収したものの処理あるいは管理に関する規定も必要ではないか。

8.改正案中「使用基準の遵守義務化」とは、安全使用基準と適用外使用を含むのか。

9.改正案中「無登録農薬の輸入の禁止」とは、個人輸入も含むのか。

10.農薬の製造から使用までの履歴を把握するトレサビリティシステムを導入すべきではないか。

11.改正案中「特定農薬」について、牛乳や食酢などの「食品」を農薬という概念に入れる必要性はまったくない。間題は、薬効・薬害試験や毒性・残留性試験などのデータ提出の不要な「特定農薬」が、農薬資材審議会でいかなる判定基準で選ばれるかである。農薬資材審議会が「特定農薬」について、判断を下す判定基準(ガイドラインなど)を示されたい。

12.農薬について、主成分だけでなく、希釈や刺激緩和のために使用している添加剤についても、成分と含有割合を明記させるべきはないか。

13.改正案中で、従来の「作物残留性」と「土壌残留性」の標記を削除し、すべて「水質汚濁性農薬」と改めているが、なぜか。

14.無登録農薬(登録抹消されたものを含む)は数百種類あるはずである。これらについてどのように対応するのか、一斉に規制をかけるのか。

以上



以下は農林水産省国会連絡室から中村敦夫参議院議員への回答です。
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1.販売、防除業は有資格者の許可制にすべきではないか。

 農薬の販売業者は、農薬を購入して販売するものであり、これを一般的禁止の状態に置くまでの必要はないと考え、事前届出制としたところである。 防除業者については、今回の改正により防除業者に限らず使用者すべてについて、改正法第12条により使用規制を課すこととし、さらに罰則を強化するなど従来より規制を強化したところである。

2.農薬使用者(農家、一般)をライセンス(免許・資格)制度にすべきではないか。

 我が国では、農薬使用者について大規模農家から家庭菜園まで、その規模や目的が様々であるため、一律にライセンス制を導入することは困難と考えている。
 農薬の適正使用については、改正法第12条により罰則を伴う規制措置を設けたところである。

3.非農耕地用農薬に農薬取締法を適用すべきではないか。

 農薬取締法上の「農薬」は農作物等の防除に用いられるものであり、非農耕地用除草剤であっても農作物等に使用された場合には無登録農薬の使用として農薬取締法違反となる。駐車場等の非農耕地用除草剤の製造・輸入・販売については、農業生産と直接の関わりはないため、農薬取続法で規制することは困難である。

4.生活環境での農薬散布規制をすべきではないか。

 改正法第12条で定められる「使用する者が遵守すべき基準」の中で必要な措置を講ずることとしている。

5.行政による公園、街路樹の農薬散布、農家が生活環境周辺で行う農薬散布、個人の庭などの農薬散布も規制すべきではないか。

 今般の改正で、農薬を使用する者は、個人、業者を問わず一律に規制を課すこととしており、御指摘の者の行為も法の規制対象となる。

6.残農薬などの廃棄の適正化と回収を義務付けるべきではないか。

 農薬の回収命令については、その対象とする範囲等について法制面での慎重な検討が必要であり、次期通常国会に向けて検討することとしている。

7.過去に製造、購入した農薬の保有保管の禁止と罰則を明記すべきではないか。また、回収の義務づけや回収したものの処理あるいは管理に関する規定も必要ではないか。

 今回の改正により、従来の販売規制に加え、輸入段階、製造段階及び使用段階の規制を新設し、さらには罰則の引き上げを行ったところである。
 他法令において「所持」を規制しているのは、覚せい剤、麻薬、拳銃等その物自体の危険性が相当高いものに限定されており、農薬取締法の目的「農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保」に照らせば、使用規制とは別にこれらの物と同様の所持規制を設ける必要があるとは考えていない。

8.改正案中「使用基準の遵守義務化」とは、安全使用基準と適用外使用を含むのか。

(答)改正案の「使用基準」とは、農薬の適正使用のために守るべき基準のことであり、適用農作物以外の農作物への使用の禁止も含まれているが、具体的な規定ぶりは現在検討中である。

9.改正案中「無登録農薬の禁止」とは、個人輸入も含むのか。

 個人輸入も含まれる。

10.農薬の製造から使用までの履歴を把握するトレサビリテイーシステムを導入すべきではないか。

 農薬の使用について、その規模や目的が様々であり、一律に記帳を義務づけることは困難と考えるため、@記帳を求める者の範囲、Aその実効性の確保策等について、さらに検討を深めたい。

11.農業資材審議会が「特定農薬」について、判断を下す判定基準(ガイドライン)を示されたい。

 特定農薬は、法律上「原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬」として位置付けられており、農業資材審議会農薬分科会の意見を聴いて決定することとなる。

12.農薬について、主成分だけでなく、希釈や刺激緩和のために使用している添加剤についても、成分と含有割合を明記させるべきではないか。

 主成分だけでなく製剤に含まれている主成分以外の主要な成分についても、ラベルに記載されている。

13.改正案中で、従来の「作物残留性」と「土壌残留性」の表記を削除し、すべて「水質汚濁性農薬」と改めているが、なぜか。

 「作物残留性農薬」及び「土壌残留性農薬」を含めた全ての農薬について、改正法第12条により使用基準を設けることとしたため、これらのカテゴリーを削除した。 なお、「水質残留性農薬」については、使用する地域における総量規制を行うことを目的とするものであり、改正法第12条で定められる農薬の使用基準だけでは十分な措置とはいえないことから、従来の規制を維持したものである。

14.無登録農薬(登録抹消されたものを含む)は数百種類あるはずである。これらについてどのように対応するのか。一斉に規制をかけるのか。

 今回の改正により登録を受けていない農薬の使用は禁止される。今回摘発したもの以外の無登録農薬について情報があれば、すみやかに立入検査等の取締りを行うこととしている。