月刊ファイブナイン誌 2002年1月号 坂本龍一さんと一緒に 「非戦」を緊急刊行! 青山貞一 |
坂本龍一さんと言えば、言わずと知れたアカデミー音楽賞をとった世界的音楽家だ。坂本さんは東京芸大大学院卒業後、仲間とYMO(イエローマジックオーケストラ)を組織。YMO解散後も電子楽器を駆使した新たな音楽分野にチャレンジしている。 ここ数年坂本さんは、地雷除去問題で関連するCD印税など5億円をポンと寄付するなどNPO活動に全力を投入している。その坂本さんが昨年春、わたくしが主唱するNPO/NGOのインターネットのメーリングリストに屋久島にいる友人の紹介で参加して来た。坂本さんとの情報交流をしているなかで、地雷除去だけでなく、先進国と発展途上国の貧富の差や環境問題にもすごく熱心なことが分かった。 そんななか、昨年9月11日、ニューヨーク市の世界トレードセンター(WTC)などへのテロリストによる航空機攻撃事件が起こった。坂本さんは年の過半をNYCですごしていることもあり、まじかで起こった大惨事に大きな衝撃を受けるとともに、NYCに在住する身ながら、敢えて「報復しないのが真の勇気」と言う論考を朝日新聞の「私の主張」に発表した。ブッシュ大統領が報復戦争を宣言した直後、この主張は国内外で大きな反響を呼んだ。もちろん賛同だけでなく、中傷めいた攻撃にも遭遇したようだ。 私は9月7日から15日に、お隣りの韓国の慶州で開催された国際ダイオキシン学会に参加しており、ホテルの衛星テレビでWTC事件を見た。帰国後、たまりにたまったメールを見ていたら、坂本さんがメーリングリストでテロ報復戦争に異議を唱え数名のメンバーと議論をしていることが分かった。 そこでわたくしも、「米国のテロ報復戦争の愚」と題する論考を書き投稿したところ、それが坂本さんの目にとまり、テロ報復戦争はけっして何の問題解決にはならないと言う内外の議論の輪が静かに広がっていった。 10月になり、坂本さんを監修者にして有志で「非戦」、英文名、「No War」と言う本を内外の音楽家、作家、研究者、ジャーナリストらに呼びかけ出版しようと言うことになった。約1ヶ月半の苦闘のすえ、内外50人を超える「非戦」へのアンソロジーが集まった。執筆依頼、著作権交渉は時差を超えての作業となった。 こうしてできあがった「非戦」には、坂本龍一、村上龍、中村哲、辺見庸、櫻井和寿、大貫妙子、佐野元春、星川淳、バーバラリー、マドンナ、オノヨーコ、ジョン・ゲラッシュなど内外の著名人はじめ、わたくしのような環境研究者の論考までが収録されることになった。しかもその印税の大部分はアフガン難民に寄付される。 ところで上記の編集作業のなかで、わたくしは坂本さんがチベットやシッキムにすごく関心を持っていることを知った。おそらくラストエンペラーに関与するなかでのことだと察している。そこでわたくしが持っている中国に併合される前のシッキム法王と14MhzのCWで交信したときのお宝QSLを添付ファイルで坂本さんに見せた。それがきっかけとなりアマチュア無線にも関心をもってくれるようになった。 結局、「非戦」は400頁にもなった。より多くのひとに読んでもらおうと、1500円の定価で幻冬舎より発売されている。皆さんもぜひ読んで欲しい。わたくしたちハムはとかく貧しい国の子供や地球環境の悪化、さらに大国のエゴで武力攻撃を受ける弱小国をとかく「DXCCの珍」としてしか見てない。しかし、米国市民同様、アフガニスタンにもパレスチナに住む子供にも生きる希望や未来があるはずだ。「非戦」は敢えてそれを世界に提起している。 なお、坂本龍一さんが9.11事件以降撮影した写真などは、次ののURLで見れる。http://www.sitesakamoto.com/ |