平成15年3月25日

衆議院環境委員会参考人意見公述配布資料

  環境保全の基本施策に関する件(大気汚染による健康影響問題) 

青山 貞一
環境総合研究所所長
環境行政改革フォーラム代表幹事


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 平成15年3月25日、衆議院環境委員会の環境保全の基本施策に関する件(大気汚染による健康影響問題)審議に関連し青山貞一が参考人として陳述しました。以下はその公述要旨です。

(1)大都市における自動車排ガス排出の割合について

 東京特別区部の場合、窒素酸化物排出(NOx)は、自動車が約7割、また浮遊粒子状物質(SPM)も自動車系が約8割(但し自然系を除外)となっている。

  出典:東京都資料(平成4年度、平成14年度)、環境庁大気保全局、自動車NOx法資料(平成9年3月)

 一方、公害健康被害補償予防法では、従来より固定発生源が8割負担、移動発生源が2割負担となっており、この割合は昭和48年のいおう酸化物排出量と窒素酸化物排出量の合計の比によって決められている。

 今回の改正では移動発生源分(大部分が自動車)に自動車重量税収からの引当措置を5年間延長(平成19年度まで)することとしているが、単なる延長措置でなく、とくに東京などの大都市にあっては、自動車排ガス(NOx、SPM)の寄与が圧倒的に大きいと言う汚染の実態を踏まえた補償制度を構築すべきである。

(2)複数道路の沿道距離と大気汚染濃度について(添付資料1参照)

 1本の道路沿道での汚染濃度だけでなく、複数の道路からの汚染の影響をどう考慮するかが重要である。 環境総合研究所の試算では複数の道路から累積的な影響を受ける場合には、沿道から遠くても1本の幹線道路の沿道(たとえば50m以内)より高濃度となる可能性もある。

(3)東京特別区部における「面的汚染」について(添付資料2参照

 東京特別区(23区部)のように幹線道路が密集している地域では、(2)の状況が連たんしていることから面的汚染の状況を呈している。したがって、東京区部などでは幹線沿道直近だけでなく、離れた地域に居住した場合でも年平均レベルで高濃度汚染の暴露となる可能性もある。大気汚染裁判では幹線道路沿道50m以内に対し損害賠償措置が講じられることが多いが、50m以遠にあっても高濃度汚染が存在しうることに配慮しなければならい。

(4)未認定患者の医療費・医薬品費の負担の公平性について
 
 昭和63年3月の地域指定解除による新規認定打ち切りの問題については、再指定・新たな救済措置などの改善措置がなくなった。しかし、その後発症した気管支喘息等の呼吸器疾患患者は日常的、救急時をとわず医療費・医薬品の費用負担がかかる。この負担は4月からさらに社会保険の自己負担率の引き上げとともに増加することになる。このように認定患者と未認定患者とでは個人的な経済負担に著しい差が生ずる。

(5)実態に即した補償のあり方について

 昭和63年3月の地域指定解除による新規認定打ち切り後、再指定・新らたな救済措置などの改善措置はない。昭和48年の固定(公共・事業所)と移動(自動車等)の発生源の排出量比率で負担割合を固定していることと合わせて、実態として自動車排ガスによる窒素酸化物および浮遊粒子状物質大気汚染の増加に対応した健康被害につき国は一切救済を行わない、という立場に立ちつづけている。

 しかし、一方で自動車NOx法を改定して自動車NOxSPM法とし、自動車排ガス汚染対策を現に行っており、参考資料に掲載されているように、国でも再指定もしくは新たな救済制度の必要性が議論され、さらに各種大気汚染裁判においてきわめて部分的ではあるものの救済措置が講じられているにも関わらず、補償を打ち切っていることは不合理であると言わざるを得ない。


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