米国の思惑どおりに
最終的にアフガン戦争では、誰が一番利益を得たのでしょうか?結論を言ってしまえば、結果的にすべてアメリカの思惑通りになったと言えるでしょう。
暫定行政機構の議長には、米石油メジャーのユノカル社最高顧問のカルザイ氏が就任し、パイプライン敷設計画も再び大きく動き出しました。五月二十九日、カルザイ議長は、パイプライン敷設の調印式に臨むためにパキスタン入りしたのです(五月三十日付・毎日新聞)。
ブッシュ大統領は、湾岸戦争で父親がしたように、対テロ戦争のもとアフガンや中央アジアの莫大な石油天然ガスの権益をしっかりと手にしたというわけです。
ブッシュ政権とエネルギー産業
ブッシュ戦略の「背景」を考える上で無視できないのが、ブッシュ大統領の経歴です。
ジョージ・W・ブッシュは、ハーバード大学経営大学院を卒業した三年後の一九七八年、石油堀削会社、アルブスト・エネルギー社を設立しています。その会社に、オサマ・ビンラディンの長兄であるサレム・ビンラディンが約七万ドルを投資したとされています。それ以来、ブッシュとエネルギー産業、そしてビンラディン一族との間には、「深い因縁」があったことにあります。
また、ブッシュ政権とエネルギー産業との関連を調べてみると、その利権的な性格がはっきりと見えてきます。チェイニー副大統領は、十万人の社員を擁する石油関連企業、ハリバートン社のCEOを歴任しています。ライス安全保障担当大統領補佐官も石油関連産業に関与しています。
真実を明らかにして
これらのような事実を重ね合わせてみるならば、アメリカが「テロ根絶」の名の下に、圧倒的な軍事力を背景にして中央アジアや中東の石油、天然ガスを支配し、経済的にも利権を分配するという側面が浮かび上がってきます。
人口では世界人口の四%程度にすぎないアメリカは現在、世界のエネルギーの約四分の一を消費しています。一方で、軍事費は世界の総軍事費のなんと四割近くを支出しているのです。
ブッシュ政権になって、エネルギーと軍事をめぐる動向はこれまでになく露骨なものになっています。
ブッシュ大統領は現在、「対大量破壊兵器」を口実に、イラクに対する先制攻撃に踏み込む構えを見せています。これにも、アメリカの言う事を聞かない産油国イラクに、武力でアメリカの傀儡政権をうちたててエネルギー権益を拡大するという意図が隠されていると私は思います。
冷戦構造が崩壊し唯一の超大国となったアメリカの暴走を止めることは、究めて難しくなっています。しかし、これに対する批判の声や慎重論も広がりつつあります。ドイツのシュレーダー首相は、アメリカのイラク攻撃には「金も兵も出さない」と表明しました。また、アメリカ国内でも元国務長官のキッシンジャーや、父ブッシュ元大統領の安全保障担当補佐官だったスコウクロフトが相次いでイラクを先制攻撃すべきではないと発言しています。
日本政府ははっきりNOを!
日本の政府首脳は、まだ是か非かの立場を表明していません。アメリカが日本に対して協力を求めてくるのは明らかです。その時に小泉首相は何と答えるのでしょうか?ドイツと同じように日本がはっきりとNOと言えば、大きな抑止力になるでしょう。
日本でもアメリカでも、最終的に政府を動かすのは国民です。しかし、戦争が起きるときには、いつも真実が隠されます。真実を明らかにして、多くの人々に知らせていくことが重要だと思います。