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米国が台湾への武器売却を拒否しているのは
「非対称防衛の定義から外れているから」
と報道される

US Refusing Weapons Sales to Taiwan ‘Outside
Their Definition of Asymmetric Defense’, Reports Say
 
Sputnik International 2022-05-20

翻訳:池田こみち Komichi Ikeda(環境総合研究所顧問)
独立系メディア E-wave Tokyo 2021年5月27日 


英国空軍51飛行隊の兵士が訓練中に、対戦車ミサイル「ジャベリン」を発射する。
© SAC Lee Goddard/Ministry of Defense

 ※注)非対称戦争(ひたいしょうせんそう、英語: asymmetric
  war)とは、戦争の形態のひとつで、両交戦者間の軍事力、
  あるいは戦略または戦術が大幅に異なる戦争。 その交戦
  様態が、正規軍同士ではない戦闘である点を特徴とし、相
  手と同じ戦術では勝利が困難な交戦集団が、相手にとって
  予想も対抗も困難な別の手段によって戦闘をしかけることで
  戦われる。一般にはテロやゲリラ戦という言葉で認識される
  場合が多い。このため、交戦集団の量的な意味での単なる
  戦力差、組織体力の大小強弱に着目した概念では必ずしも
  ない。大国の正規軍の歩兵小隊が携行する火器の成形炸薬
  弾でゲリラ組織その他の戦車部隊と戦う場合も、戦術として
  は非対称戦である。(以下略) Wikipdia


リード文

 アメリカの国防指導者たちは、ウクライナと台湾を比較するのは間違いだと警告しているが、実際には、2月にロシアの特殊作戦がウクライナで始まって以来、ワシントンは台北に対して、ウクライナへの支援をモデルとした非対称戦争政策を採用するように圧力をかけているのである。

本文

 台湾のビジネスリーダーによれば、アメリカは最近、台湾が中国の侵攻を跳ね返すためには有効とは思えない兵器を購入するよう、何度か要請してきたが、これを拒否したという。

 決定的な政策転換は、3月の米国務副長官補(政治軍事局地域安全保障担当)のミラ・レスニック氏と米台経済協議会(USTBC)のメンバーとの会合で行われた。

 USTBC は17日火曜日のニュースリリースで、「バイデン政権は、彼らの定義する『非対称』防衛以外の台湾への武器売却プログラムをもはや支持しないと述べた」と述べている。「さらに、すでに購入した兵器の台湾への引き渡しを迅速に行うためのプロセスの改善方法についての提案も求めていた。」

 拒否された兵器には、MH-60Rシーホーク潜水艦ハンターヘリコプター、E-2Dホークアイ高度早期警戒機、M109パラディン自走砲などがある。


E-2Cホークアイ
© US Navy/Jason T. Poplin

 その代わり、米国は台湾軍に対し、肩から発射するスティンガー対空ミサイルやジャベリン対戦車ミサイルなどの小型で機動性の高いシステムや、海軍機雷、沿岸発射型対艦ミサイルなどのスタンドオフ兵器に注力するよう求めているとされる。また、台北に対し、予備役の訓練を強化し、予備役と軍の協力を強化し、住民を迅速に動員できる民間の防衛力を構築するよう求めている。

 プリンストン大学のアーロン・フリードバーグ教授(政治・国際問題)は、「我々は過去にやったことがない方法で、実際、やりたくない方法で、彼らに圧力をかけている。MH-60ヘリコプターの台湾の要求を断るということは、この件に関して我々は本当に真剣に取り組んでいるということだ。」と、ポリティコ紙に語った。

 3月の国務省のUSTBCブリーフィングの数日前、戦略・計画・能力担当のマーラ・カーリン国防次官補は、上院外交委員会で、台湾に対するペンタゴンの助言は、ロシアの高度な空軍と装甲部隊を相殺するために、西側の供給による携帯型システムが投入されているウクライナのようになることを意味している。」と語った。

 「ウクライナの状況は、台湾が非対称的な能力を構築し、国民を準備させ、中国が主権を侵害することを選択した場合に可能な限りやっかいな戦いになるようにするために、できる限りのことをする必要があるということについて、彼らにとって非常に価値のあるケーススタディだと思う。」とカーリン氏は議員にそう
語った。

 国防情報局のトップであるスコット・ベリエ中将も同様に、今月初め、米中両国は「ウクライナ紛争から非常に興味深い教訓を学ぶことができる」と示唆した。

 しかし、カーリンの上司であるロイド・オースティン米国防長官は、このような「直接比較」をすることに注意を促し、4月に議員に対して、ロシアのウクライナでの特殊作戦と中国の台湾侵攻は「全く異なるシナリオ、異なる舞台である」と述べている。

 北京も同様の発言をし、ウクライナは国際的に主権国家として認められているが、台湾は中国の一部であることは地球上のほぼすべての国、ちなみにアメリカも含めて、が一致していることを指摘した。


台湾北部・桃園市での就役式を前にAH-64Eアパッチ攻撃ヘリコプターの前に立つパイロットたち(2018年7月17日火曜日)。
© AP Photo / Chiang Ying-ying

■戦略的なあいまいさ

 台湾の政府は、1912年に最後の皇帝が退位した後、かつて中国全土を支配していた中華民国政府の残骸である。しかし、その政府は内戦で大陸に対する支配力を失い、1949年に勝利した共産主義勢力が北京に中華人民共和国を樹立した。それ以来、米国が支配する一部の小国を除き、中国の正統な政府としての承認を台北から北京に切り替えたのである。

 米国は1979年の政権交代後も台湾を非公式に支援し、トランプ政権初期に発表された戦略文書では、台湾自治領は米国が現在最大の敵国と見なす中国の重要な棘とされている。並行して、2016年には台湾で独立志向の新政権が誕生し、ワシントンと台北はさらに接近した。

 北京は、台湾と大陸の統一は歴史的必然であると主張するが、それを武力で達成するかどうかについては曖昧である。同様に米国も、台湾が攻撃された場合、それを防衛するかどうかという「戦略的あいまいさ」を貫いてきた。

 ルパート・ハモンド・チャンバーズUSTBC会長にとって、この曖昧さは、台湾が非対称戦の準備に移行するという最近の主張と相まって、「新たな脆弱性を生み出し、台湾の自己保証と実用的防衛に甚大な損害を与える」恐れがあるという。

 「もしバイデン政権が台湾への具体的な武器売却を指示するつもりなら、USTBCとしては、米国の政策を厳格な戦略的曖昧さから、少なくとも、いつ、どこで米国が介入し、新しい政策によって生じたニーズのギャップを埋める意思があるかを明確にすることに変更することを検討する必要があると提言する。」とハモンド=チェンバースは付言した。

 「そうすれば、台湾は、必要であれば米国がそのギャップを埋めてくれるということを明確に期待しながら、より狭い範囲の防衛能力に焦点を当てることができるようになるだろう。」と指摘した。